「木の真珠」ハードメープルを知る
2019.6.15
日本だけでもケヤキやトチ、ナラにタモ、サクラにカエデ、センにニレなど多くの家具材となる樹種が存在します。
そしてアメリカ・カナダにはアメリカンブラックチェリーにアメリカンブラックウォールナットをはじめ、ホワイトオーク・レッドオーク、そして今回取り上げる「ハードメープル」があります。
ヨーロッパに目を向けると、ビーチ・バーチ・エルムにオーク類と、実に様々な地域に渡り多くの家具材となる樹種が存在しています。
皆さんも家具やインテリアを調べる中で目にした樹種があったことでしょう。
今回はその中でも「ハードメープル」材の特性についてご紹介します。
ハードメープル材の特徴
学名:Acer saccharum
木理:精
気乾比重:0.70
科目:カエデ科・落葉広葉樹・散孔材
原産地はカナダ東部~アメリカ北東部にかけての五大湖周辺です。
カナダの国旗にその葉が描かれていることでも有名です。
中でも、太古から人々の暮らしに密接なかかわりを持っているのが、シュガーメープル、ブラックメープル、ロックメープルに代表される硬質なハードメープルです。
(ハードメープルよりも約25%材質が軟らかい、ソフトメープルもあります。)
家具蔵ではこの中でも「シュガーメープル」を使用しています。
私たちはメープルシロップを思い浮かべる事が多いですが、実は私たちに馴染みの深いモミジやカエデも大きなグループでは同じ仲間となっています。
日本のカエデは最も大きくなるイタヤカエデでも樹高は20メートルほど、ほとんどのカエデは15~20メートル以内となりますが、北米に自生するメープルは25~30メートルになる背の高いものが多くあります。
カナダでのメープル材の伐採はマイナス30度にもなる極寒の中で行われます。
春を迎えてしまうと、成長期に入ってしまう為に樹の中の樹液糖分の影響により、木肌が黄色くなってしまうからです。
この厳寒の中で伐りだされる事で、「木の真珠」にも例えられる白い木肌の材となるのです。
日本のイタヤカエデはメープルと比較すると少し赤味のある木肌が特徴です。
同じ仲間でも少し違ってくるところは人間と同じですね。
北米産のハードメープルは、厳しい寒さや雪の重みに耐えて成長するためダンスホールのフロア、ボウリング場のアプローチやピンなど、衝撃と摩擦に対する耐性が必要な場所に使われることでも知られています。
使用する中で明るい乳白色から独特の飴色に変化します。
表面は緻密な杢理のため、シルクや真珠に例えられます。
その光沢は、清潔感と透明感にあふれ、ギターやピアノ・バイオリンなどの楽器の背板などとしても使用されます。
木材としての卓越した性質に加えて、「木の真珠」と讃えられるほどの上品な木肌はどんな空間にも自然に溶け込みます。
ハードメープル材の杢目
ハードメープル材には2000本に1本程度の割合で、たいへん珍しい「鳥目杢」(ちょうがんもく・バーズアイ)と呼ばれる小鳥の目のように見える、渦巻状の斑点が表れることがあります。
この杢目が表れた材は非常に稀少価値の高い材として、通常の20~50倍という価格で取り引きされます。
この評価は世界の銘木にも匹敵する高級木材と言えるでしょう。
またシュガースポットという樹液の中の糖分が固まって出来た杢目も見られます。
この杢は、まさにハードメープル独特のものと言って良いでしょう。
「木の真珠」ハードメープル、その理由
ハードメープル材が「木の真珠」と呼ばれるほどに緻密な杢理を持つその理由は、水を運ぶ管=道管にあります。
例えば、ナラ材やタモ材、ホワイトアッシュ材などはハードメープル材と比較しますと表面の木肌に凹凸を感じます。
それは水を運ぶ道管と呼ばれる管が年輪に沿って環状に束になっており、それが手を触れると感じられるからです。
その様な材は「環孔材」(かんこうざい)と呼ばれます。
杢目もはっきりと表れるという特徴があります。
それに対し、ハードメープル材やチェリー材は道管が無差別に分布している為に杢目の表情も優しく、すべすべとした木肌になります。
この様な材は「散孔材」(さんこうざい)と呼ばれます。
面白い事に、実際に丸太の年輪が同心円状に現れる切断面をじっくりと見るとケヤキ等の道管が太い環孔材は道管の穴を目視で見る事が出来ます。
一概に木材と言っても、色味や杢目だけでなく、その細胞の成り立ちによってもそれぞれに個性が表れます。
そして同じハードメープル材でも、日なたに育てば節は少なくなります。
反対に日陰に育つと少しでも光を求め、節が多くなります。
それぞれの樹種としての特徴だけでなく、個体差も含め、自分が気に入った木を探す事はインテリアを決める重要な要素となります。
家具蔵各店及び一枚板ギャラリーには、今回紹介しましたハードメープル材、そしてその仲間のイタヤカエデ材のテーブル天板もご覧頂けます。
家具だけでなく木の専門の知識を持ったスタッフの話も聞けますので、一度足を運んでみて下さい。
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