チェリーと「サクラ」の違いを知る
2019.8.14
チェリー材とは
家具蔵ではチェリー材と言えば、「アメリカンブラックチェリー」材を使用しています。
おもな産地は、アメリカ東部全域(バージニア、ペンシルバニア、ウエストバージニア、ニューヨークの各州)の広大な地域に及びます。
北米大陸には現在、約30品種のサクラ類があると言われています。
その中でも特に家具材として絶大な人気を誇り、現代の最高の木材と言われているのが、このアメリカンブラックチェリーです。
アメリカンブラックチェリーは、日本のヤマザクラなどと同じくバラ科に属しています。
家具以外で有名な用途としては、アメリカンブラックチェリーならではの緻密ですべすべとした木理を生かし、最高のパイプ材として世界の愛好家から絶賛されています。
口当たりがそれほどにやわらかい証です。
他には木片を燻製の時にチップとして使うと、その素材の特性を生かしながら、まろやかな味に仕上げることができます。
木には直径1cm程の果実「アメリカンチェリー」が実り、赤から黒く熟し、食用となります。
私たちもスーパーマーケットなどでよく目にする機会があるはずです。
製材したての心材は淡い薄桃色をしていますが、年月の経過の中で紫外線の影響により、「赤く濃く」経年変化をします。
その劇的な変化から「使い込むほどに風合いを増す」という、無垢材ならではの特性を実感することができます。
そして自分で家具をアンティークに育てていくような面白みがあります。
元々が緻密で滑らかな木肌を持ち、磨くだけで美しい光沢を得ることができるうえ、水に強く、家具になった後の耐久性にも優れています。
アメリカンブラックチェリーは成長の過程や外部からの影響により、細胞に圧力がかかる事で「さざなみ紋」=(リップルマーク)と呼ばれる独特のきらきらとした濃淡の木理が表れることがあります。
アメリカンブラックチェリーの代替品として用いられることも多い、アルダー材では見ることのできないその美しい表情が多くの人を魅了し続けています。
そしてこのアメリカンブラックチェリーは、もともと幹の中に樹液を多く含んでいるため、生命力の強い木ほど、樹液の黒い斑点=「ピスフレック」が見られるのが特徴です。
また、当たり前の事ではありますが、同じアメリカンブラックチェリー材と言ってもひとつひとつ、すべて杢目は異なります。
しかし総じて、赤味があり華やかな杢理を持つ素材なのです。
サクラ材とは
家具蔵のサクラ材は主に「ヤマザクラ」や「ホンザクラ」と呼ばれる国産のサクラです。
私たちがお花見の頃に目にする「ソメイヨシノ」は江戸時代に染井桜と吉野桜を掛け合わせて人が生み出した園芸品種です。
余談ですが、ソメイヨシノはもともと1本の樹から接ぎ木・挿し木をして増やされた為、本州のソメイヨシノはすべてクローンと言われています。
そう考えると不思議な気持ちになりませんか?
そんなソメイヨシノのルーツを辿るとエドヒガン47%、オオシマザクラ37%、ヤマザクラ11%、その他5%であると言われます。
最後に出ている「ヤマザクラ」が家具材として「サクラ」と呼ばれるものです。
ちなみにオオシマザクラは桜餅の塩漬けの葉に使われる桜です。
また「サクラ」と名の付く材で「カバザクラ」という名称を聞いた事がある人も多いのではないでしょうか?
このカバザクラは、実は桜とは何も関係がありません。
実は「カバノキ」なのです。
カバノキは見た目がサクラ材に似ている為、そこから流通上、カバザクラと呼ばれる様になった経緯があります。
最近ではアフリカのボセという木がアメリカンブラックチェリーに似ている為に「アフリカンチェリー」と呼ばれる事と同じ様な現象です。
また日本では古くから、田植えの時期を開花で知らせる樹として大切にされて来ました。
日本の各地に「田植え桜」や「種まき桜」と呼ばれる木がある事からの、その歴史が偲ばれます。
そして日本では桜がぱっとさいてぱっと散る様から、諸行無常やものの哀れなど、日本ならではの精神性を表す樹としても根付いてきました。
また地方自治体や公共施設などのシンボルマークにもよく見られます。
材としてはアメリカンブラックチェリーの様にすべすべとした赤味のある木肌です。
しっかりと人の手で管理・植林されたアメリカンブラックチェリーと異なり、山の中から自然のままに伐りだされるサクラ材。
生産量もアメリカンブラックチェリーよりも少なく、大径木の丸太はなかなか出会う事はありません。
アメリカンブラックチェリー材よりも、大自然の中で成長するからでしょうか、杢目も個性の強いものが多く感じられます。
この様に、同じサクラの仲間であってもアメリカンブラックチェリー材とサクラ材は、アメリカと日本という国の違いはもちろんですが、その歴史や材としての使われ方も異なります。
そしてサクラと言っても、じつは異なる樹種だったりと、一言では言い表せない繋がりがあります。
しかし、その理由や歴史がわかると興味が湧いてきませんか?
ぜひ、表面的な色や杢目だけでなくその樹種の特徴なども含めて家具を見てみて下さいね。
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