奥深き「オーダーキッチン」の世界 ~その6~
2019.12.22
短期集中連載として無垢材オーダーキッチンのサンプルをご紹介する今回の企画。
今回は6回目です。
洋の東西を問わず、「食」をオーガナイズする場所はどんなときでも暮らしの中心でした。
火を起こすことが人類の進歩を加速度的に早め、集団の単位の中心には常に「火」がありました。
火を使い、食という生き物に欠かせない作業を行うのがキッチンであり(キッチンの語源は、古来語のcycene(クチーナ)、ラテン語のco-quina(火を使うところ)に由来します)、家族もまた集団であると考えるならその中心に火を使うキッチンがあるのは当然のことかもしれません。
火を使うことは火をおこすことと同義です。
それをいかに簡単にするかということは、そのまま中世から近代への住まいの歴史とも直結します。
また、そこから生まれる煙をいかに逃がすか、という点では縄文時代にまでそのアイディアを見ることが可能です。
キッチンの歴史はそのまま人類の歴史といっても過言ではありません。
そこで求められてきたのは「効率性」でした。
だからこそ、換気機能の進化や、IHヒーターをはじめとする加熱調理機の開発、水温の調節や様々な天板素材などが生まれてきたのです。
そして、その進化はまだまだ留まるところを知りませんが、十分すぎるほど便利にもなりました。
それは、ある程度の規格を満たしたシステムキッチンで問題なく毎日の料理が可能なように。
一方で、現代の人たちはキッチンに新たなものを求めています。
それはキッチンの「家具性」です。
アイランドやペニンシュラなどの、リビングダイニングと一体になったような対面型のキッチンが多くなってきた今、いわゆるキッチンが別部屋になっている「クローズド」のものや、昔の団地などで主流だった「キッチンは食堂的なスペースと一緒になっていて、家族や来客が集うリビングとは別の空間になっている(つまり、人にあまり見られない)」といった住まいは少なくなってきています。
家族皆が過ごす、もしくはゲストの目に触れることが多いキッチンであれば、使い勝手を求めながら他の家具と基調を合わせたものにしたい、インテリア性を持ったものとしたい、と考えるのはある意味当然のことです。
そして、その場所を自分もゲストも満足できるものにしたい、と考えたとき「オーダーキッチン」の選択肢が生まれます。
無垢材をはじめとした自然材が大きく注目され、自然派の住まいも多くなってきました。
自然材にはそれぞれ人工素材にはない風合いの良さと人体への効能があります。
無垢材にもそうした良さが大いにあり、無垢材家具を選ぶ人もたいへん多くなってきています。
であれば、それに合わせてキッチンも無垢材でつくろう、と考えるのはごく自然なこと。
今回はそんな無垢材家具の魅力のとりことなり、セカンドハウスの建築を実現した際に、空間の中心に据えるキッチンも無垢材で作った方のご紹介です。
そこで過ごす時間を特別なものにしてくれる、というまさにオーダーキッチンの理想を叶えたサンプルといえるでしょう。
我が家のオープンキッチンは海を見渡せる特等席
海外を飛び回る多忙なお仕事の傍ら、休日には船を操りクルージングを楽しむというH様のセカンドハウスは、広大な海が一望できる高台にあります。
大きなワンルームのLDKに置く無垢材キッチンは、非日常を演出する意味も込めてホテルのバーラウンジとレストランのオープンキッチンをミックスしたような、調理スペースとバーカウンターを繋げたデザインになりました。
通常このようなワークトップがフラットなアイランドキッチンは、ひとつの素材で製作される事が多く、今回のようにステンレスと無垢材のチェリーを「ハーフ&ハーフ」の状態できれいに合わせるデザインは製作側にとっても興味深い挑戦でした。
また、家具のような「脚付きキッチン」というコンセプトは最後までK様がこだわった部分。
近年、LDKがひとつの空間になり、キッチン部が露出することも多いため、「空間の中でキッチンだけが浮いてしまわないように」と考える方が増えています。
ステンレスの使い勝手の良さと無垢材のチェリーのもつ柔らかな質感。 異素材のミックスはそれぞれの素材の良さを更に引き立ててくれます。
ディテールに目を向けると、チェリーの無垢材の扉は木目が綺麗につながり、オーダー家具ならではの美しい仕上がりになっています。
無垢材は目で見て癒されるだけでなく、触れた時の手触りも格別です。 毎日使うものだからこそ、使い勝手はもちろんのこと、居心地の良さも大切なポイントかも知れません。
ステンレスシンク内のエッジの角度や扉の木目の通しかた、素材感までディテールにこだわりをお持ちのH様との共同作業で造り上げた無垢材オーダーキッチン。
「ここで暮れていく海原を眺めながら過ごす時間は、何物にも替えがたい最高のリラックスタイムです。月明かりに照らされた夜の海もまたいいですよ。」
と笑顔で仰るH様。寛げる自宅でありながら海辺のリゾートホテルのように大自然を味わえる、日常と非日常が入り混じった魅力的な無垢材キッチンスペースです。
この海と景色を眺めながらの朝食で1日をスタートできたら。
ただそれだけで良い日になりそうな、ワクワクした気持ちになれそうです。
夜は穏やかな海を見つめながら、ゆっくりと今日の出来事を語りながら過ごす。
無垢材の癒しがサポートする心地の良い時間で気持もクールダウンして、良い眠りに就けることでしょう。
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