奥深き「オーダーキッチン」の世界 ~その7~
2019.12.23
キッチン、という言葉から連想される設備としての機能は日々進化を遂げています。
家の新築やリフォーム、リノベーションに際し、我が家のキッチンをどうしようか、どんなメーカーにしようか、依頼先はどこに?と様々な選択肢が浮かぶと思います。
これまでに多く選択されてきたであろうものは、いわゆる「システムキッチン」と呼ばれるもの。
古くから住宅メーカーや工務店、マンションデベロッパーによる集合住宅に多く採用されてきた商品であり、高度に規格化・画一化されたキッチンのパーツを自由に組み合わせて、優れた最大公約数的解答としてのキッチンを実現できる便利なもの、と言えるでしょう。
その一方、日本人の暮らす家、住まいを彩るインテリアスタイルやアイテム、マテリアルなどの多様化により、既成のシステムキッチンでは実現が難しい、とされるインテリア的なキッチンが求められる案件も確実に増えました。
特に、キッチン本体を構成する材質自体の質感やデザインに繊細なこだわりを持って、自分のイメージを大切にし、「本当に納得のいくキッチン」を実現したいと考える人は、ここ数年で確実に増えてきたと言われています。
キッチンそのものに多くの視線が注がれるようになっています。
例えば、料理研究家は、これまでその料理だけが取り上げられましたが、今はその人がどんなキッチンで料理を作っているかも大きな関心を呼び、その特集が組まれたりもする時代です。
住宅雑誌、インテリア雑誌などでも、これまでは住まいの中で、単なる設備機器でしかなかったキッチンに焦点を当て、「こだわりを形にしたキッチン」をその着想段階から検討中のエピソードを交えて詳細に紹介する特集も多く目にするようになっています。
キッチンも家具のように、天然素材本来の質感と経年変化を楽しみながら、長く使い続けるという選択が、流行、トレンドとしてではなく、成熟した住宅文化として根付いてきた、と言えるかも知れません。
家具蔵でも、定評のある無垢材家具作りで培った素材の扱いと加工技術を木のキッチン作りにも生かして、「システムキッチン」では実現できない質感と自由な発想による木のオーダーキッチンをこれまでに多く製作してきました。
このシリーズ、奥深き「オーダーキッチンの世界」では、これまで様々な形で取り上げてきたケース・スタディを改めて振り返りながら、木のキッチンを実現された様々な方のプランを隠れたエピソードなども交えてご紹介していきたいと思います。
7回目は、若いご夫婦が念願の新築に際し、家具蔵のキッチンスタジオの木のキッチンに「ひと目惚れ」をされ、そこからインテリアを構築していくことで、キッチンと家具、空間全体が程よく調和した魅力的なLDKを実現された方のお話です。
「家具蔵がキッチンまで手掛けているとは知りませんでした」
遡ること十数前、偶然に通りかかった家具蔵 表参道店で、小さな時計をご購入されたのがご縁となり、家具蔵の事はご存じであった高橋様。
当時は家具蔵では木のキッチンの製作は行っておらず、家のご新築に際してもキッチンを家具蔵に依頼するイメージは全く無かった、と仰います。
そんな折、ちょうど家具蔵でも木のキッチン製作を本格的にスタートさせていく中で、表参道店にキッチンスタジオを設け木のキッチンのイメージを体感できるスペースができました。
そして、またも偶然そこに通りかかった高橋様…。
それが家具蔵のキッチンとの出会いでした。
ハウススタジオでひと目惚れした無垢材アイランドキッチンをベースに、すべてを自分仕様にカスタマイズ。食洗機のパネルも同素材のチェリーで製作。
そこで目にした木のキッチンをとても気に入って下さり、計画段階にあった家づくりの中心的なアイテムとして木のキッチンが採用されました。
「友だちと一緒にキッチンに立って、皆で料理が楽しめるような家にしたかった」
と語る高橋さんご夫婦。 外から見るとあまり間口は広くない土地ですが、想像以上に玄関は広々。
さらに2階へ上がると、そこにはオープンキッチンから広がる寛ぎのリビングダイニングが展開されています。
この家の設計・施工は、テラジマアーキテクツ。
設計を担当した池田大基さんは、テーマとして「人と人とのつながり」を意識したと話します。
この家の中心となったキッチンは、 ご夫婦が家具蔵のハウススタジオで惚れ込んだ「キッチンと家具が一体になった空間」というコンセプトが丁寧に具現化され、採用されています。
その思いを起点として、テラジマアーキテクツと家具蔵のコラボレーションが実現しました。
無垢材キッチンとともに、無垢材ダイニングテーブルや無垢材ソファ、無垢材テレビボード(TV台収納)のほか、 壁の一部に飾り棚として埋め込まれた板にも家具蔵の無垢材が使われています。
「まさに、思いが形になった家です」とご主人が語る通り、随所にデザインの妙があり、たくさんの思いが込められているのがわかる高橋邸。
本物の木の気持ち良さと太陽の光にあふれた家は、ご夫婦と愛犬クッキー、 ここに集まる友人たちにとっても最高に居心地の良い寛ぎの場所となっています。
高橋邸の大きな特徴は「くの字」に雁行した間取り。 これは空間の一端に立った時に「終わりが見えない」ことで、その奥に無限の拡がりを感じさせるという視覚的効果があります。キッチンからリビングまで見通せる空間はオープンキッチンならでは。
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