キッチン収納の変遷
2020.1.25
キッチンにはたくさんの収納が存在します。
キッチン本体の部分は引出しタイプが主流で、パントリーと呼ばれる食品庫などを設け、非常食や食品のストックまで豊富に収納できるご家庭も増えています。
時代を重ねるごとに、キッチンの機能は進化しています。
ワークトップの素材や機器の機能はもちろんのこと、収納についても格段に使いやすくなっています。
今回は、そのキッチン収納についてシステムキッチンができるはるか昔までさかのぼってみたいと思います。
キッチン収納の始まりは茶室にあり
江戸時代よりはるか昔も食事という行為は行われていたわけで、その際にも食器は使われていました。
ただ、今の暮らしに比べたら圧倒的にその種類は少なかったため、それを収納するのにはいわゆる『箱』があれば事足る量でした。
日本で古くから使われている収納家具と言えば、『櫃(ひつ)』という箱がその原型です。
食器に限らず、米は米櫃、お茶道具は茶櫃、ご飯は飯櫃というように専用の箱がありました。
これらの『櫃』は昭和に入っても使われていた、言ってみればロングセラーの収納家具です。
そこから派生して衣類や寝具は『長持』と呼ばれる大型の箱、その他の生活道具などは『つづら』や『行李』といった様々な大きさの箱にしまって保管されていました。
そして今も日本で使われる木製の収納家具の原型は『箪笥』と呼ばれるもので、それが庶民の生活にも登場するのは江戸時代になってからと言われています。
それくらい生活の中で必要なものが少なかった、というのがその理由です。
江戸時代になると茶道が発展し、食器棚の原型である『水屋箪笥』が登場してきます。
『水屋』とは本来茶室の隅にある茶器などを洗って仕舞っておくスペースのことを指しますが、いつしかそこで使われる茶道具を収納するための箪笥が『水屋』と呼ばれるようになりました。
その産地は京都や近江のものが有名で、大きいものになると幅は9尺(約27センチ程)、そのほか6尺・4尺・3尺などの幅があり、高さは1間(約180センチほど)のものが多かったようです。
また、その中に入れるものは食器だけでなく、当時は冷蔵庫などもなかったため、食品も入れられるようになっていました。
引き違いの扉は風通しが良くなるように、鏡板の部分にスノコや金網等をつけた造りのものでした。
さらにはその裏に寒冷紗と呼ばれる麻や綿を平織りしたものを張ったり、後期にはガラスがはめ込まれたりと風通しだけでなく、ネズミなどが侵入するのを防止する機能も考えられてきました。
箪笥に使われる木材についてはケヤキやヒノキが多く、仕上げも拭き漆や紅殻塗りにしたり、袋戸棚や引き違いの扉のバリエーションを加えたり。
取手金物や装飾金物にも凝ったりとそれぞれの箪笥職人がこだわって丁寧に仕上げられたものが多くありました。
戦後からのキッチンの発展
そこから時代は進んで、キッチン自体が大幅に今の形に近づくのは戦後になります。
それまでのキッチンは『つくばい式』と呼ばれる土間に屈んで使う水場があり、竈(かまど)についても土間に設置されたものや、囲炉裏で調理をするなど今の様に立ったまま家事ができる環境ではありませんでした。
そして戦後の都市部の住宅再建の為、量産型の公共住宅が供給されるようになり建築と合わせて設備などにも『モジュール』という考え方が浸透していく中で、流し台が作られるようになり立ったままの作業が可能となっていきます。
さらに昭和49年には優良住宅部品認定制度が発足し、システムキッチンの前身であるセクショナルキッチン(BL流し台)と呼ばれるものが登場します。
公営住宅向けのキッチンとして誕生したこのキッチンは、システムキッチンとは違い「流し台・ガス台・調理台・吊戸棚などそれぞれ独立しているものを組み合わせる」というスタイルです。
システムキッチンとの比較で分かりやすいのはクックトップ(ガスコンロ)で、セクショナルキッチンは置き型のテーブルコンロ、システムキッチンはビルトインコンロとなっています。
そして、ユニットと呼ばれる収納部分に大きな違いがあります。
システムキッチンは現在では引出し収納が主流となっていますが、セクショナルキッチンは基本的には開き扉収納で、調理台の一部に引出し収納が設けてあるスタイルがオーソドックスです。
今でも公営住宅や築年数が経っているマンションなどでは見かけることもありますが、その数は減ってきています。
現在、そしてこれから
ここまでは、時代をさかのぼってキッチンで使われる収納についてみてきましたが、時代背景やライフスタイルに応じてキッチン自体が大幅に使いやすくなり、それに伴って使うもの増えてきています。
今、キッチンをざっと見渡してもキッチン家電や食器そして食材・調味料なども含めると、とても多くのものに囲まれて暮らしていることに気づくと思います。
たとえ、これらを全部見える状態で収納しておくにも、『棚』や『箱』は必要となります。
人によっては「生活感を感じないようにすべて隠して収納したい」という方もいるはずです。
キッチンの相談、収納の相談など、お客様のライフスタイルを伺いながら打ち合わせを重ねるごとに、これからは『使う人の目的にフィットしたキッチン・収納』が必要だということに気づきます。
キッチンについて言えばシステムキッチンはもちろん、オーダーキッチン、カスタムキッチン、造作キッチンなど様々なカテゴリーが存在します。
収納についても使う場所や好みに応じて量産品を組み合わせたり、オーダーで特注したり、さらにはDIYで作ったりと様々なスタイルが考えられます。
どれが良いという決定打はなく、敢えて言うなら『自分に合うスタイル』が良いというのが答えです。
では自分に合ったスタイルとは?
今ではいろいろな雑誌やインターネットでも調べることが出来ますが、「イメージはあるけれども具体的に伝えられない」という方や、「これとこれを組み合わせて見たいけど客観的に見たら変だろうか?」と悩んでいる方は、一度プロに話してみる。
これが一番の近道かもしれません。
家具蔵では専門の知識を持ったスタッフが各店に常駐し、お客様それぞれに応じたご相談をお受けしております。
家具蔵各店にてお気軽にお声掛けください。
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