ダイニングテーブルはこう選ぶ その2
2019.12.25
「ダイニングテーブルはこう選ぶ その1」では、その入り口として、広くテーブル選び全般についてお伝えしました。
今回は「その2」と題して、家具蔵でも扱う「無垢材」のなかでもどういうものがよいのかという部分を、少し掘り下げてお伝えしていきたいと思います。
無垢材のメリットは
毎日心地よく過ごしたい。
愛着を持って永く使いたい。
無垢材の家具はその希望を叶えてくれる「暮らしのパートナー」となってくれる存在です。
そもそも無垢材とは、原木(丸太)から切り出したままの自然な状態の木材をさしたものです。
乾燥・加工に時間と手間がかかり、熟練の職人でないとその良さを生かし切ったものは生まれません。
耐久性はもちろんのこと、科学的にも居心地の良さに繋がる効果がたくさんあります。
一つは熱伝導率。
木は鉄の約330倍、コンクリートの約10倍の断熱・保温効果を持っています。
そのため人肌に馴染み、体感的に温もりを感じることができるのです。
二つ目は木目の濃淡や不規則な模様がもたらす「1/fゆらぎ」と呼ばれる動きのパターンです。
炎の動きなどと同じようにそのリズムは心に安らぎを与えてくれます。
更には木の表面の凹凸が太陽や照明の強い光を分散し、反射率50~60%に抑えて人の目にもっとも心地よいとされる明るさに変えてくれるのです。
そして3つ目は香りの効果。
無垢材に含まれる香り成分(主にテンペル類)は不安やストレスを和らげるだけでなく、アレルギーの原因となるダニやカビの繁殖を抑える働きがあります。
このほかにも、無垢材の多孔質構造が湿度を調節してくれる調質効果など、目に見えにくいところでも私たちの暮らしを快適に整えてくれています。
ただ、一言で「無垢材」と言っても、その樹木の違いや質の違いなどその幅は広くさまざまな無垢材テーブルがあります。
無着色で仕上げるか否か
無垢という言葉のとおり、本来であればその木の素材そのままであることが一番です。
ただ生活の道具であるテーブルとして使う場合には、汚れや水分から木を守ってあげる必要があります。
そこで、ウレタンやオイルなどで木を保護してあげるわけですが、その際に色を入れるか入れないかで仕上がりに差が出てきます。
家具蔵では「木目もデザイン」という考えで無垢材を原木で仕入れ、丸太から板にする製材の工程もその鋸の歯を入れる位置や角度までを指示して慎重に行います。
生地を裁断する二次元の世界とは違い三次元の原木を木口の年輪と樹皮に覆われた状態から想像する必要があり、板にした時に一番美しい木目がどのように出るかは、長年の経験がなければ判断できません。
そこまでこだわるのは、木目が育った歴史が作ったものであり、人工物には成せない自然のデザインだからです。
それを最大限に生かすため原木仕入れにこだわり、製品に仕立てる際にも木目を見極めて材料を切り出し、パーツとパーツの木目のつながりをイメージしながら繋ぎ、滑らかにつながるように削り出していきます。
ここまでの工程は目利きの職人でなければ叶わないもので、大量生産の決められたラインの中では決して作り出すことはできません。
それとは逆に、決められた寸法通りに材を切り出し、作られた順番通りに組みあがる製品の場合、その生産効率は確かに良いかもしれませんが、木目や色は不揃いとなりパーツごとの木目の流れもまちまちになってしまいます。
その結果、商品としてその均一化を図るため仕上げの工程で色を塗ることとなり、その木本来の色や木目というものがわからなくなってしまうのです。
更にはウォールナットやチェリーといった色素の濃い樹木は世界中を見ても少ないため、発色性がよく色素が浸透しやすい素材を濃い色の塗料で着色することでウォールナットやチェリーに似た色合いに仕上げているものもあります。
こうして仕上げたテーブルは、使ううちにやがて色が剥げ落ちてしまうばかりでなく、その木が持つ本来の木目というものが全く生かされなくなってしまうのです。
無着色で仕上げたテーブルの場合、当たり前ですが色が剥げるということがありません。
またそれだけではなく、木がもつ本来の色は使いこむほどに経年変化を重ね深みのある色合い・艶のある表情になっていきます。
これは素材のクオリティが高いからことできることです。
そして無着色で仕上げる中でも、お客様のご要望やさまざまな住空間に合うよう、お選びいただける樹の種類を常に増やし続けています。
ナラやタモ材をはじめ北米のアメリカンブラックウォールナットやアメリカンブラックチェリー、そのほか近年ではサペリやボセといったアフリカの樹木も取り扱うことで、色や木目さらには手触りまで様々なご要望にお応えできるようになってきました。
ただ、これだけの樹種を扱うのは簡単なことではありません。
樹種によってその含水量や乾燥に必要な期間も違えば、加工する際の刃物まで変わってきます。
異なる樹種を一定のクオリティで商品化するまでには、独自の研究を何度も重ねなければならず、多くの樹種を扱うほどその工程も増えていきます。
そこまでしても、樹種を増やし続けるのは木目を生かした無垢材の家具を、より多くのお客様に長くお使いいただきたいという職人の想いの現れなのです。
素材のグレードについて
無着色で仕上げるということは、それだけ素材のクオリティも高くなければなりません。
例えば、ダイヤモンドにも等級があり同じカラット数でもその価値が全く違うように、木にもグレードがあります。
そのグレードによっては、同じ樹種の木でも大きな価値の差が生まれます。
ダイヤモンドの場合、無色に近いほど高評価・高価格になります。
Dカラーというグレードが無色に近く最高評価となり、黄色味を帯びていくにしたがってD・F・G…と23段階もの区分けで厳しく鑑定されます。
それと同じように材の買い付けにあたっても色味や傷、大きさは一つのグレード基準となります。
木も人間と同じで持って生まれた色素、環境や土壌の成分、日当たりによってさまざまな色合いとなり、すべてが均一な材とは限りません。
色素の濃淡は決して欠点ではありませんが、家具を製作する上では色味が美しく揃った材で製作したものは調和のとれた家具に仕上がるのです。
ただ、上質な色味の揃った美しい材はとても少なく、大量に買付けすることはできません。
そこで、商品を大量に生産したい場合にはコストを抑えるためにも色味にバラつきのあるものを使い、色を塗って仕上げることで商品を均一に見せるということがおこります。
そうすれば、店舗で見たものと全く同じ色の商品が届くわけです。
均一化された家具が悪いというわけではありません。
ただ、無垢材の木目という部分を考えた場合にどうでしょうか?
無垢材=すべて一点モノの家具と考える方にとっては、それぞれの木が醸し出す色や木目が、それを見る人々にパワーを与える存在になってくれるはずです。
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