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トチと人の暮らしの関係を知る

2020.2.21

 

私たちの身の回りでは常に様々な樹木を見かけることができます。

森や林以外にも公園や学校、街路樹など周りを気にしながら歩いていると、都心でも木の存在を感じる事が可能です。

今回は絵本「モチモチの木」の題材ともなった、シルクの様な手触りで人気の高い「トチ」の木をご紹介します。

 

トチノキとは


東日本を中心に日本全国に北海道から四国、九州まで分布する日本原産の木です。

トチノキのトチは漢字で「栃」と書く様に栃木県の県木ともなっている木です。

元々肥沃な土壌を好むトチノキは、高樹齢な巨木が多いことでも有名で、土壌開拓の道しるべとして各地にはご神木となるトチも数多く存在します。

新緑の季節になると大きく手を広げたような葉を茂らせ、成木となるトチノキは初夏の頃に穂状の可憐な花を咲かせます。

落葉の高木でもあるトチノキは秋になると葉を紅葉させ、またでこぼことした実を付けるようになります。

この様に四季を感じさせてくれるトチは街路樹として好まれる木でもあります。

海外ではフランスのシャンゼリゼ通りの並木道が有名ですが、この並木道にそびえたつ木はマロニエという木で、このマロニエは「トチ」と近似種の「セイヨウトチノキ」の事。

コンコルド広場から凱旋門のあるシャルル・ドゴール広場までを結ぶ大通りの両側に、高木なマロニエがずらりと並ぶ風景は「世界で最も美しい通り」と言われる程の並木道となっています。

家具蔵銀座店も近くにある、銀座「マロニエ通り」は純粋なトチノキとベニバナトチノキが混在しており、セイヨウトチノキとは異なりますがクリーム色の花を咲かせるトチノキと紅色の花を咲かせるベニバナトチノキの2色のコントラストの花色は、本当の意味で街路樹に花を添えています。

 

古代の日本の暮らしとトチの関わり


今から約5000年前の日本最大級の縄文遺跡である青森県の三内丸山遺跡には、人々の暮らしに様々な木が関わっていたことを表す出土品が出ています。

オニグルミやクリ、コナラと並んでトチノキもその内の一つ。

トチに漆を使った漆器が発掘されるなど、多くのものに活用されていました。

トチと言えば前述の実が有名ですが、古代の人々もデンプンを多く含む栃の実は栄養が高く、保存食としても貴重な食糧源として主食利用をされてきました。

じつは栃の実はアクが強いため、そのまま食べることは難しい果実。

手間を掛けてアク抜きを行うことで、「栃餅」や「栃の実煎餅」など、今でも私たちの暮らしで見かけることができるものになるのです。

縄文時代の遺構にも、アク抜きに使われたとされる水路の跡や、沢山の殻が出土しています。

栃が実を付けること自体は都市や気候によっての違い=凶作が少ないこともあって、古代の人々はそうした特性を理解していたのかもしれません。

 

様々な活用をされるトチ


トチノキは「蜜蜂の木」と言われる程、養蜂家の人にとっても大切な樹木です。

糖度が77%以上と甘みが強く、色味の濃い芳香な香りを持つ「トチ蜜」は最高品質な蜂蜜となります。

他にも薬用としてトチが使われることがあります。

種子に含まれるサポニンという成分は洗剤として使用される他、湿布薬や胃薬などに用いられます。

また心臓病や血栓の融解、静脈瘤などにも効果があるとして現代医学においても血流を良くする働きの一助として用いられます。

アメリカのオハイオ州は州の愛称を「バックアイステイツ」と呼んでいます。

このバックアイは鹿の目の事なのですが、オハイオには多数自生するトチノキがあり、その栃の実を鹿の目に見立てて付いた愛称と言われています。

かつてネイティブアメリカンの人は食用としての栃の実と言うよりも、栃の実に含まれる微毒物を用いた漁労に用いていました。

現在も栃の実に見立て、ピーナッツバターのキャンディーをチョコレートでコーティングした「バックアイ・チョコレート」という伝統的な甘いお菓子があります。

 

材としてのトチ


トチノキの材面は何と言っても木肌の美しさがあります。

軽く加工性の良い素材の為、建築材や家具材、バイオリン等の楽器材としても用いられます。

不規則に育つ樹形からは材面に現れる、「縮緬杢」(ちりめんもく)、「波状杢」(はじょうもく)とも言われる「縮杢」が有名です。

これは自重により波状に縮みが起き、皺がよったように見える現象の事。

この「縮杢」は光の反射で立体的な紋様を浮かび上がらせ、見る人を引き付ける材となります。

木が成長する間にねじれながら育ったり、曲がった成長の仕方をした際に現れやすい杢の文様は、自然が作り出した美術の様なもの。

全てのトチの材に入るとは限らないため、材として杢のあるトチは高い価値を持ちます。

時に金色の様な輝きを持つ色素のトチや、真っ白に近い材面を見せるトチなど様々な個性がありますが、その個性こそが自然が作り出す唯一無二の存在を私たちにもたらしてくれます。

 

魅力的な表情を見せるトチノキは家具の中でもダイニングテーブルで使われます。

トチノキで作られたテーブルはともすれば和テイストになりがちな印象もありますが、色調の濃いウォールナット材とも相性が良く、印象のある空間作りを作り出すことができる、オールラウンドな素材です。

 

トチの一枚板テーブルの事例はこちら

家具蔵が扱うトチの情報はこちらから

 

 

 

 


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