ナラ材がつくる家族の団らんと癒しの暮らし
2020.2.28
ナラという木は日本人にとってとても馴染みのある木です。
どんぐりの成る木と言えば小さいお子様でも分かるかと思います。
実は家具作りにおいてもナラはとても重要な木で、家具蔵でも昔から根強い人気を誇る木なのです。
今回は私たち日本人にとって安心感があって落ち着くような空間となるナラ材家具の魅力をご紹介したいと思います。
ナラってどんな木?
クヌギ・ブナ等と共に「どんぐりのなる木」として親しまれているのがナラです。
主な原産地は日本、中国、ロシア、アメリカ等です。
ナラは放射組織という養分を中心から樹皮に通す組織がとても発達しているので、「最も進化した木」と言われています。
この発達した放射組織はナラの生命力の強さに直結しています。
例えば、山や森を歩いていると倒木した木や切り株から芽が出ているのを見たことがあると思います。
この芽が出ている木のほとんどはナラです。
実は元気なナラが倒れた木に根を伸ばし、発達した放射組織を用いて養分を送ってあげているのです。
皆で助け合いながら成長していくことが出来る木なので純林を形成し、森を作ることが出来ます。
また、ナラは落葉樹の為、冬になると多くの葉を落とします。
この落とした葉がやがて腐葉土となり、森の土壌を豊かにしていきます。
そして、この土壌のおかげで他の植物や樹木が生き生きと成長することが出来るだけでなく、雨水が濾過されて河川や海に流れ込むことで水を綺麗にしていきます。
ナラの存在は生態系に大きな好影響を与えているのです。
家具材としてのナラ
欧米では古くから家具材としてナラ材は重宝されてきました。
マホガニーが登場する1700年頃までヨーロッパでは家具を製作する上での主流材料でした。
特に1500~1600年頃を「オークの時代」と呼び、イギリスではチューダー様式、エリザベス様式、ジャコビアン様式という様々なスタイルの家具が生み出されました。
それでは日本におけるナラの位置付けはどうだったのでしょうか?
実は江戸時代から明治時代にかけてナラは薪や炭の材料として使われていました。
要するにナラの価値に気付いていなかったのです。
また、明治時代に「オーク」=「樫(かし)」と英和辞典を編纂する際に誤訳してしまったことも価値を見出せなかった要因でしょう。
当時から優良材としてヨーロッパやアメリカで人気のあったオーク材は落葉樹ですが、明治の中期にオーク材の引き合いが来た時に落葉する樫は無い(樫は常緑樹)、と日本側は断っていたといいます。
その後、北海道を開拓するにあたり、ナラ材を伐採し、破格の値段でヨーロッパに輸出していたところ、それまでにも定評のあったオーク材の中でも北海道産のナラが最高品質だとヨーロッパの職人の中で認められたことにより、今日の「ジャパニーズオーク」
というブランドが世界的に認められるきっかけとなったのです。
ナラの優れている特性として以下の4点があります。
1.加工性が良い
2.強度がある
3.安定している
4.木目が美しい
全て家具作りにおいて必要な要素です。
4点目の「木目が美しい」の例として、虎班(とらふ)、英名ではシルバーグレインという杢が出ることがあります。
ナラは養分を根から幹や枝葉全体に行き渡らせるための繊維構造(放射組織)がとても発達しています。
この繊維構造を柾目に挽くことで独特の美しい杢が生まれます。
そして虎斑は使い込むほどに渋い輝きを出し、味わい深くなっていきます。
これが何十年と愛用したくなるナラ材の家具の魅力の一つとなっています。
ただし、全てのナラ材に虎斑が表れるわけではなく、天然木で高樹齢の木でないと出てくることはありません。
そのため、存在するだけで価値があるとされ、世界的にも有名な建築家フランク・ロイド・ライトもこの虎斑に魅了されていたようです。
ナラの家具で癒しの空間をつくる
日本人は木の色と言われると、ナラのような白木の色を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
日本はヒノキのような針葉樹を始め、タモ、クリ、クスノキ、カエデといった広葉樹も白木の文化です。
例えば、ヒノキを使った寺社仏閣や家作り、タモを使った船や弓矢、クスノキを使用した仏像等、身の回りの物に昔から白木を活用してきました。
そのため、日本人は白木の空間にいるとホッとして心が安らぐのです。
また、食卓において白木を使うことは食材の色味や器の柄、色調をより一層美しくする効果もあります。
老舗の料亭や日本食のお店で白木のテーブルが多いのはこのような理由からかもしれません。
普段のお料理がより美味しく感じられるので、主婦の強い味方ですね。
白木の中でもナラ材は特に強度が強く、使い込んだ後の色味の変化が美しいと言われています。
その他にも助け合いながら森を作る生命力、環境や生態系を整えていく重要な役割を担う存在など様々な魅力を持つナラ材を住まいに取り入れて快適に過ごしていくのはいかがでしょうか。
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