奥深き「オーダーキッチン」の世界 ~その9~
2020.3.1
家の建築工事やリフォーム工事、リノベーション工事に際し、これまでのキッチンに対する不満を一掃するべく、新しいキッチンプランを考える時、皆さんはその依頼先としてどのような選択肢を思い浮かべるでしょうか。
一般的に、これまで多く選ばれてきた選択肢は、「システムキッチン」と呼ばれるものでした。
古くから住宅メーカーや工務店、マンションデベロッパーによる集合住宅に多く採用されてきた商品です。
長年の研究やユーザーの需要から導かれた解答とも言えるような、高度に規格化・画一化されたキッチンのパーツを組み合わせて、一定の制約の中である程度思い通りのキッチンを実現できる便利なもの、と言えます。
一方で、住空間を彩るインテリアスタイルやアイテム、マテリアルなどの多様化により、既成のシステムキッチンでは実現が難しい、とされるインテリア的なキッチンが求められるケースもあります。
特に、キッチン本体を構成するマテリアル自体の質感やデザインに繊細なこだわりを持ち、自分のイメージを大切にしながら、「本当に納得のいくキッチン」を実現したいと考える人たちが、ここ数年確実に増えてきたと言われています。
その流れを反映するように、住宅雑誌、インテリア雑誌などでも、これまでは住まいの中で、単なる設備機器でしかなかったキッチンに焦点を当て、「ライフスタイルを形にしたキッチン」を、その着想段階から検討中のエピソードを交えて詳細に紹介する特集も多く目にするようになっています。
近年、インテリア素材や建材の扱い方として、整った人工素材を短いサイクルで更新しながら使うよりも、天然素材本来の質感と経年変化を楽しみながら、長く使い続けるという選択が、ひとつのトレンドとしてではなく、成熟した家具文化として根付いてきました。
家具蔵でも、定評のある無垢材家具作りで培った素材の扱いと加工技術を木のキッチン作りにも生かして、「システムキッチン」では実現できない質感と自由な発想による木のオーダーキッチンをこれまでに多く製作してきました。
そしてこのシリーズ、奥深き「オーダーキッチンの世界」では、これまで様々な形で取り上げてきたケース・スタディを改めて振り返りながら、木のキッチンを実現されたこだわりのライフスタイルを持つ様々なお客様のキッチンプランを、プランニングの経緯や隠れたエピソードなども交えてご紹介していきたいと思います。
果たして家具ショップが製作するキッチンとはどのようなものでしょうか?
9回目は、都心のヴィンテージマンションを購入され、間取りを一新する中で既存の壁付けキッチンを活かしながら新しいキッチンプランと、それに繋がるダイニング・リビングを導きだしたご夫婦のお住まいの紹介です。
ヴィンテージマンションの良さを活かした都心のサロンのような場所として
香港在住のE様ご夫妻は、日本での拠点作りと将来の終の住まいとして、中古マンションの購入と同時にフルリノベーションを計画します。
細かく区切られた間取りは、仕切り壁を取り払い大きな空間を実現するとともに、既存のキッチン設備や床材、建具など多くの既製品から素材感デザイン上で「これはどうやっても合わない」というもの、「工夫をしながら合わせられそうなもの」、「取り敢えずこのままで良い」というものを取捨選択し、リフォーム会社に工事を依頼する準備を始めました。
そんな中で、リフォーム会社から提案されるものの多くは、名の通った建材メーカー、キッチンメーカーから既製品として販売されている部品や建具、床材やキッチンでした。
国際的なお仕事で忙しく、日本での滞在期間も限られるお二人にとって、パッケージになった既製品は簡単に手早く選択ができ、あとの細かいことはメーカーと工事会社に任せておくことが出来るというメリットがありました。
しかし外国人であるご主人と海外暮らしの長い奥様は、日本の建材・家具メーカーの
『“便利でキレイだけれども、本当に好きになることはできない“」ものを選び、その集積で住まいが作られていく』
ことに違和感を感じていたといいます。
「デザイナーや建築家にデザインや設計を依頼するわけではない私達にとっては、特別なオーダーをするアイデアも時間的余裕もありませんでした。」
と当時の葛藤を振り返っていました。
そんな中、以前から雑誌で見て気になっていた家具蔵を訪れた際に、無垢材キッチンや造り付けのオーダー収納、間取りの提案やトータルインテリアの監修まで行っている事を知ります。
ハウススタジオ(現在は一枚板ギャラリーに一部を改装)で見た無垢材アイランドカウンター、無垢材壁面収納のイメージが印象に残ったE様は自宅でも同じようなことができないか相談をすることに。
それを受けて家具蔵では、工事会社と打合せを重ね、家具の提案と併せて建築工事に関わる建具のデザインや枠の納まり、空間の色彩設計や照明計画なども手掛け、より完成度の高い空間を作り上げるサポートを行いました。
「香港の住まいは、仕事関係の少し改まったお客様も招く外交的なインテリアにしています。一方東京の住まいはどちらかというと家族や気の置けない友人のためのプライベートな空間にしたかったので…。ハウススタジオのインテリアは木や自然素材をセンスよくモダンに使ったもので、私達の好みにとても合っていました。だからオーダー家具の製作を依頼する事に不安はありませんでした。この会社ならきっといいものを作ってくれるはず、とデザインも全てお任せできたのです」
製作期間の関係で、無垢材家具の施工と搬入はリノベーション工事が終了した数ヶ月先という事になりましたが、工事会社との綿密なやりとりで下地調整や配線準備もしっかりと行われ、まるで始めから存在していたような自然さで空間にすっきりとおさまりました。
「友人たちも我が家のように寛いでくれる溜まり場になりました(笑)実家の母もこのマンションがすごく気に入った様子で、もっと早く知っていればウチもこんな風にしたかった!と残念がっています」
自分の「好き」と「使いやすさ」で構成された空間はそれだけで心地が良いもの。
プライベートな空間だからこそ、そこで使うもの・置くものはこだわりたいものです。
信頼のおけるスタッフ・ものづくりで生まれた、「好きが集まった空間」は今日も忙しい二人の束の間の休息の時間をやさしく包み込みます。
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