国産家具の産地を知る
2020.5.28
目次
昨今は環境問題による消費の見直しもあり、使い捨てや大量生産の消費から良いものを大切に扱い、長く使う消費へと戻りつつある風潮もあります。
国産家具は材の産地から歴史や人の流れと共に発展し、文化を継承しながら今に至っています。
材そのものを大切にし、コストの許す限り人の手で仕上げる。
そんな日本生まれの家具は、どこでどのようにして受け継がれてきたのかを今回はお伝えしていきます。
旭川家具 (北海道旭川市)
雪の多い北海道では、冬場は長く雪が積もる為、以前は木材の自然乾燥が困難であり家具の量産には適さないと言われていました。
全国の中でも乾燥の面で不便であったにも関わらず、家具作りの街となっていった背景には冬場の農業の変わりとなる産業が切実に必要だったからとも言われています。
明治時代に入り機械化が進み、国内の人工乾燥機の普及とともに積雪量が多く木材の自然乾燥が難しいと考えられていた旭川でも家具の生産が可能になります。
また、陸軍の移駐が札幌市から始まるタイミングで人口が増え、鉄道が通り、それに伴い住居や家具の需要が増えたことで、職人も多く移住してくることとなり旭川市は家具の街として発展していきます。
北海道の豊富で上質な無垢材の良さを活かしたつくりや、デザインの良い家具は国際的にも評価されています。
静岡家具 (静岡県中部)
静岡家具の歴史は古く、徳川三代将軍家光の時代、浅間神社造営の際に全国各地から漆工、大工、指物師、彫刻師が集められ造営後もそこに定住したことから始まったとされています。
特に当時は気候が漆工に適しており、漆器作りで培われた技術はやがて明治時代に入ると鏡台(ドレッサー)作りに活用され、その後猫足と鏡がついたドレッサーや茶箪笥を展開していきます。
現在もドレッサーやサイドボードなど収納家具を中心に発展しています。
飛騨家具 (岐阜県高山市)
「飛騨の匠」で知られるように、飛騨には古来より優れた建築技術とその職人たちが顕在していました。
その歴史は万葉の昔からの記述で確認することができ、約1300年も前から木造りの文化が受け継がれてきたことが窺い知れます。
当時優れた匠たちは都の街づくりのために派遣され、それは約500年以上に渡りました。
家具作りが本格的になったのは大正時代に入ってからで、豊富なブナ材を用いて試行錯誤を重ねながら、蒸して木を曲げる曲げ木椅子の生産に乗り出したのが始まりです。
主に脚ものと呼ばれるテーブルやチェアを得意とし、代表的なメーカーがいくつも誕生した現在に至っても採算の許す限り手仕事で家具作りを行う、全国でも有数の家具産地として発展しています。
府中家具 (広島県府中市)
江戸中期から家具作りが始まり、中国山地から伐り出された豊富な木材を使い、大正期には多くの職人達が働いていました。
昭和30年頃、他に先駆けて婚礼家具セットを開発し、収納家具の産地として全国に知られることになります。
また、コンクールで常に上位入賞を果たすなど技術レベルは高く、総じて高級品を製造しています。
現在では、リビング家具、キッチン、備付け家具、木製ドアなども生産し、総合インテリアを目指しています。
徳島家具(徳島県徳島市)
徳島家具が発展してきた背景は林産物が豊富な地域であったこと、城下町として栄えたことが挙げられます。
江戸時代、藩の重要な水軍基地で船を作るため集められた船大工たちが、廃藩置県後には培った技術を活かし建具、箪笥や日用雑貨作りを始めます。
明治の中頃は鏡台や針箱の産地として栄え、当時、「阿波鏡台」の名で大阪をはじめとして各地へ出荷され発展しました。
以降、 製品の改良や洋風のデザインが取り入れられるなど、現在では、ドレッサーを中心に各種の家具や木工品が生産されています。
大川家具 (福岡県大川市)
徳島家具同様、木材の確保に恵まれた環境に船大工が住み着き、家具や建具類を作り始めたのが起こりとされています。
家具の街として認知され始めたのは大川独特の衣装箪笥が作られるようになってからであり、現在は、あらゆる木製の家具を生産する総合的な家具産地として、量産家具を得意としています。
隣接の佐賀県諸富町へも産地の広がりをみせ、生産量はトップを誇ります。
茨城県常陸大宮市
茨城県北西部に位置し、面積の6割が森林・原野であり、市の東部は久慈川が流れる自然豊かな土地です。
家具蔵は1953年より家具作りをスタートさせました。
創設者である相田貞夫の生まれ故郷でもあるこの豊穣な土地に、木を乾燥させる十分な敷地を確保するために工場を移転させました。
元々はテーブルとチェア作りから始まった家具蔵のものづくりは、
「この無垢材テーブルとチェアを置いた空間に合う収納家具やソファが欲しい」
そんなお客様からの要望に応え、更にお持ちいただいた家具を長く使ってもらいたい、という想いを持って現在に至るまで無着色の無垢材で家具作りを続けて参りました。
現在ではチェアだけでも30種類以上のデザインを常備し、その方にあった心地よい現代の住まい作りのお役に立てるよう引き継がれてきた技術を磨き、新しい商品作りにもチャレンジし続けています。
世界的に機械化が進み、海外での大量生産ができるようになったことで人々の暮らしにはいつのまにか使い捨ての文化が浸透してしまいました。
しかし、国産家具メーカーは(追加)日本国内を見渡してもこんなに多くの産地で材を大切にし、少しでも長く使ってもらえるよう伝統的な技術に工夫を重ね、現在も進化を遂げています。
その技術やものづくりには海外からも高い評価を得ています。
私たちも、自分たちの暮らしに丁寧に作られた家具を取り入れることで、普段の生活や環境問題を見直すきっかけとしてみませんか?
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