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レンジフードの歴史

2020.7.19

一人暮らしの部屋のミニキッチンでも当たり前のようについているレンジフード、もしくは浴室やトイレの換気扇。

実はこれらの換気設備はそもそも日本の住宅には必要のない設備でした。

歴史でみる神社仏閣をはじめ、そもそも日本の住宅は高温多湿な夏の気候を基準に、木造で風通しが良い造りとすることが当たり前だったためです。

今のようにサッシではなく障子や襖で区分けされた木造柱構造の建築物は、壁仕上げも土の塗り壁、床も板張りもしくは畳と自然素材に囲まれたものでした。

現代は「住まいの質」について考えるとき、シックハウスについて考慮するのは当たり前ですが、昔の住まいは自然素材だったため、こうした問題がそもそも起こりませんでした。

では、いつごろから「換気設備」が日本で使われるようになってきたのでしょうか。

 

 

昭和30年代


そもそも換気を必要としていたのは、住宅ではなく工場や病院・映画館など大きな建物で、大正時代の頃には「排気扇」と呼ばれる換気設備が使用されていました。

そして戦後の高度経済成長期と呼ばれる昭和30年代から公団住宅や団地ブームに伴い、一般家庭の住宅環境は変わっていきます。

住宅の構造は木造からRC構造になり、同じ敷地に住まう人の密接度も高まるなか、気密性が高くなった住宅の中では調理中の煙・トイレの臭気などがこもるようになり、住宅を供給する側はこれまで工場などで用いられていた「排気扇」を「換気扇」という名称に変え、一般家庭に導入しはじめました。

こうして、キッチンやトイレを中心に局所的な機械換気がスタートしていきます。

ただ発売当初は高価格で当時の初任給と同じくらいの価格だったため、一般的に普及するまでには少し時間がかかりました。

換気扇の形状としては外壁に穴を空け直接排気するタイプで、(今でも見かける)扇風機の羽のようなプロペラファン型でした。

 

プロペラファンからシロッコファン


今でも見かけることがままあるプロペラファン型の換気扇はその形のとおり外壁に取り付けして空気を入れ替える「直接排気式」と呼ばれ、シンプルな構造のため取り付けが簡単だったり排気量が大きいのが特徴です。

反対に音がうるさかったり外の風の影響を受けやすいなどの問題があります。

お手入れについても、つくりがシンプルで掃除する場所はわかりやすいですが、こまめに掃除をしないと汚れがそのまま見えるという欠点も。

こうしたプロペラファンのデメリットを克服するため生まれたのがシロッコファンと呼ばれるタイプです。

現在ではこちらが支流ですが、「直接排気型」に対して「ダクト排気型」と呼ばれ、ファンが起こした気流をダクトと呼ばれる管を通して屋外へ排出するため、外壁に面していないところからの排気も可能となりました。

アイランドキッチンなど、現在のように壁に向かわないキッチンでも排気が可能になり、そのおかげでキッチンレイアウトに自由度をもたらしてくれました。

また、外気と接しないため、外部の風の影響を受けることが無く換気量が安定したり、クックトップの上にレンジフードが付くので、油煙を集める効果も壁付けのプロペラファンより格段に高くなったりと、価格は高価になりますがそれを上回る使い勝手の良さが魅力です。

 

ブーツ型からスリム型


システムキッチンが普及し多くの家に取り付けられるようになったレンジフード。

その形も時代と共に変化しています。

排気ファンを「フード」と呼ばれる囲いで覆ってニオイや油煙を効率的に集めるのがレンジフードの役割ですが、そのため機器の内部やフード本体には油が付くのが当たり前のこと。

内部まで油が回りにくいようにと金属のフィルターが付いているタイプというのが多かった平成時代は、更にそのフィルターを不織布のフィルターでカバーして、少しでもお掃除を簡単にする家庭が多くありました。

レンジフードにはその形に応じて様々な名前がありますが、ひと昔前は「ブーツ型」と呼ばれる大きなフードが印象的なものが一般的でした。

しかしこの10年くらいでキッチンは対面式が主流になり、LDKが一つの部屋となった空間のなかでレンジフードのデザインも、邪魔な存在からオシャレなインテリアの一部へと変わってきています。

煙を集める部分は薄いもので30ミリ程度とスタイリッシュな「スリム型」では、その形だけでなく汚れが目立つフィルターが内部の目立たない部分についている商品や、そもそもフィルターが付いていないものも多くなりました。

更には、その空間の意匠と合わせてシンプルに馴染むキューブ型やアンティークなインテリアに馴染むマントル型などそのデザインは進化を続けています。

 

このように時代の変化に合わせてキッチンだけてなく、キッチン機器も目覚ましい変化をしている現代。

その中でもレンジフードは「家の中で一番お手入れが億劫な場所」と言われています。

その状況を変えるべく、各メーカーからはタンクに水を入れて置くだけで自動的にお掃除をしてくれる商品や、そもそも汚れが付きにくい素材、水で流すだけで汚れが落ちるフィルターなど、私たちの暮らしを便利にしてくれる新しいモノがたくさん世に出ています。

キッチンリフォームの際はもちろんのこと、機器を交換するだけというときでも素敵なデザインや便利な機能を比べてみてはいかがでしょうか?

 

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