「ナラ」と「タモ」はどう違うか
2021.4.19
日本は世界有数の森林国です。
古来より私たちの暮らしは木と共にあり、時代とともに姿、かたちを変えながらも、現代に継承されています。
それは長い年月をかけて培われた先人からの大切な暮らしの文化です。
道具として、信仰の対象として、いつも日本人の暮らしの側にあった「木」という存在。
ケヤキ、トチ、クス、クリ…。
その中でも「ナラ」と「タモ」はいまや家具材などでもよく耳目にし、馴染みのある樹種として知られています。
知識が無いとその判別ができないこともある両者。
今回はその違いにフォーカスしていきます。
ナラという木
ナラ(楢)はいわゆる「ドングリ」の生る木といえば一番馴染みが良いでしょう。
ナラには「クヌギ」「カシワ」「ミズナラ」「コナラ」「アベマキ」などの仲間があり、それぞれの生るドングリの形状も異なるのが面白いところです。
英語名はオーク (oak)で、家具や建材の世界でも人気のある樹種といえます。
種類にもよりますが、樹高は大きなものでは35mに達し、環境が整っていれば最大寿命は1200年とも言われています。
秋になるとドングリをたわわに実らせるナラの周りには多くの動物が集まり、その大量の落ち葉の量が豊かな土壌を育むことから周囲には様々な植物が育ちます。
「森を作る木」「森の王様」という別称も納得です。
その用途も幅広く、家具や建築材といったところはもちろん、特に有名なのがウィスキーの酒樽です。
北米産、欧州産、日本産のどれを使用するかで味わいや香りも異なり、それがそれぞれの銘柄の特徴ともなっています。
ナラ材の特徴
ナラ主に日本・中国・ロシアが原産国です。
ナラはゆっくり大きく生長するので、細かい木目が特徴です。
なかでも最大の特徴であるのが「虎斑(とらふ)」と呼ばれる杢。
年輪の中心から放射状に入る放射組織の跡であり、木が水や養分を蓄えた跡でもあります。
虎の縞模様に似ているところから「虎斑」と呼ばれているのです。
この「虎斑」は他の木目とは光沢が異なり、銀色に輝いて見えるところから「銀杢」「シルバーグレイン」とも呼ばれています。
高樹齢のものを柾目に挽いたときに出るもので、帝国ホテルや自由学園を設計した世界的に有名な建築家であるフランク・ロイド・ライトもこの「虎斑」に魅了されていました。
日本国内で採れるナラは近代になって、特に欧米でその質を絶賛され「ジャパニーズオーク」として、今でも高い評価と価値を誇ります。
無着色で仕上げた際の穏やかな色合いと、独特の手触り感がもたらす素朴なナチュラル感。
使用するうちにほんのり色づいてきて味わいを増してくるナラ材は、空間を優しく穏やかに彩ってくれます。
タモという木
タモの主な原産国は日本・中国・ロシア。
タモと言えば野球のバットを思いつく人も多いでしょう。
あちらは「アオダモ」を使用しているのですが、一般にタモといえば、ヤチダモの事を指します。
ヤチ=谷地などの湿地や川岸の湿潤な土地に生えることが多く、その育つ環境から空に向かって高くまっすぐ生長するのが特徴です。
タモという木は様々な場面で特に日本の暮らしと関わってきました。
枝下も長く樹形もほぼ正円に近いので無駄なく使えること、その材は力を加えてもたわむ特性があり、折れにくい木材にもなること、加工もしやすいため、農工具や狩猟の道具としての定番でした。
土着の北方民族であるアイヌは船や家にも利用し、また、そのライフスタイルから信仰の対象のひとつともなっていました。
タモ材の特徴
タモ材は、その強度と弾力性、粘り強さを持ち合わせ、且つ加工性にも優れている一方で、その木目の美しさに定評がある素材です。
木の深い部分まで美しくはっきりと木目が流れているため、均質な表情の木材がまとまって確保できます。
ゆっくりと生長することで目幅が狭く、その細かい木目は「糸柾」と呼ばれる繊細な柾目を形成します。
「白木の女王」と呼ばれる所以です。
涼やかで清潔感を漂わせる木目はまさに「和モダン」を体現するにぴったりの材とも言えます。
灰色をまとった明るい木肌は、日を追うごとに色合いを少しずつ濃くしていき、時間の色を醸しだしていきます。
尚、北米産のホワイトアッシュや欧州産のトネリコの仲間でもありますが、その表情はまるで異なります。
特にホワイトアッシュは明瞭で大柄な木目が特徴的。
非常に存在感のある家具や建材が出来上がりますが、タモはどちらかといえば控えめで空間に合わせてくれるイメージで、そのあたりも日本的で面白いところです。
ナラとタモの違い
ナラはブナ科コナラ属、タモはモクセイ科トネリコ属で、ナラとタモはその素性は全く違う木です。
色調や木目は似ているので良く見ないと最初は見分けがつきにくいのですが、こうした知識を持つことでその違いが分かってきます。
同時に両者の相性は抜群です。
例えばタモのテーブルにナラのチェアを合わせる。
あるいはその逆。
自然の色味だからこそ、こうした異樹種のコーディネートも可能になります。
木の持つ個性を楽しめるのは、無垢材、無着色だからこその醍醐味です。
「百聞は一見にしかず」。
やはり実物を見て、触れてみることが大切です。
無垢材、無着色だから手に取るようにわかる木の生き様、厳しい自然に耐え育った木の歴史が刻まれた表情を是非、家具蔵の各店舗でご覧ください。
家具蔵のナラ材でつくった無垢材家具のある暮らしの事例はこちらから
家具蔵のタモ材でつくった無垢材家具のある暮らしの事例はこちらから
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