シリーズ~建築家によるこだわりの空間と無垢材家具の奥深き世界~ ③
2021.7.20
インテリア雑誌や住宅雑誌、建築設計事務所のHP。
居心地の良さそうな空間に、恐らく住まい手や設計者がこだわって選んだのであろう家具、とりわけ木の質感に溢れる無垢材家具が置かれている風景が目を引きます。
建築空間は、そこで人間が暮らす、またはある目的を持って過ごすことを目的にしてデザインされています。
配置される家具は「生活の道具」として建築空間と重要な係りを持ち、空間だけ、家具だけで存在する時よりもその魅力や本質をより強く現わします。
「シリーズ・建築家によるこだわりの空間と無垢材家具の奥深き世界」では、家具蔵の無垢材家具が置かれた建築家の設計によるこだわりの空間が、どのような考えの元に設計デザインされ、家具蔵の無垢材家具が選ばれることになったのか、納品後のリアルな暮らし、使っている模様を交えてお伝えする事を目的にしています。
家具蔵のホームページ上のコンテンツ「事例&お客様の声~建築家とのコラボレーション」の内容を元に、実際にスタッフが訪問取材に伺った際のエピソード、裏話などを交えてご紹介します。
前回は・・マンション リノベーションの可能性を拡げ、これからのデザイン・リノベーションの在り方、その指針にもなるような住まい をご紹介しました。
女性建築家の細やかな気配りが行き届いたデザインワークにより、空間の質自体が大きく変化する事になった、美しくシックな住まいの実例です。
そしてシリーズ第三回目の今回は…
建築家・鶴崎 智哉さん(鶴崎智也建築設計事務所)が手掛けられた新築一戸建て、堀川邸のご紹介です。
鶴崎さんは、建設会社勤務を経て独立、2001年に 鶴崎智也建築設計事務所を設立されました。
住宅、共同住宅の設計・監理、店舗設計などを幅広く手がけていらっしゃいます。
住まい手に寄り添いながら、最適な建築的造形、プランを探して端正な形に落とし込んでいく設計手法から生まれる、どこまでも自然体で心地よい建築は、建築ジャーナル『東京の建築家とつくる家』『LiVES』他、メディアにも多数掲載されています。
今回の物件は、大きな公園の脇に残る緑多き環境に接した高低差のある土地に計画された、小さなお子様達のいらっしゃる若いご夫婦が暮らす住まいです。
新築の設計を依頼されたのは施主のご主人とも旧知の仲であった鶴崎さんでした。
「家づくりに正解はありません。
ご家族それぞれの個性、家での時間の過ごし方=住まい方がそれを導き、決めるのかもしれません。
堀川さんの場合は、新しい家に置きたい家具が具体的に決まっていたのも大きなポイントでした。
家づくりの最中、それ以前にも熱心に家具屋さんをまわってイメージを広げていたようです。
その中で選ばれたのが、熟練の職人さんがつくる精緻な無垢材家具、家具蔵の製品でした。
それらの 家具と比べたら、大きな建築は仕事の精密さからしてまったくもって敵いません。
ただ、その家具を包み込む『器』として空間の質では負けないように気を配ったつもりです。
家具もそうですが、建築も細部が大事です。
本物のものづくりは、ちょっと触ったり、裏側を見るだけですぐにわかってしまいますからね。
この土地の豊かな自然をテーマに、「家具に見合う家をつくりたい」というご主人の熱い想いにも応えた建築になったと思います。」
設計当時を振り返って鶴崎智也さんはこう語ります。
実際に堀川邸を訪れた際、アプローチから見上げる家のファサードは各所のデザイン、バランス・プロポーションが熟考された結果であることが一目で判りました。
通りに対して小さく穿たれた木製サッシによる開口部が印象的です。
家の反対側は一層分近く高くなった自然豊かな環境となっていて、そちらの開口部は道路側とは異なり、木々の緑を室内でも思い切り感じられるような大きな開口となっています。
そこでも木製サッシが使われていて、その質感に思わずため息が漏れます。
そして床材は無垢のチーク材。
これほどまでに上質な天然素材を使用できる建築は多くはありません。
その事を鶴崎さんに尋ねると
「実はここまで実現出来たのは、施主の堀川さんのお蔭でもあるのです。
当然予算上で厳しい側面もあったのですが、堀川さんが様々な建材の安価な入手先を探してこられたり、何よりも最後まで諦めなかったその情熱の賜物だと思います」
とのこと。
家づくりにおける建築家と施主の理想的な関係、その最良のケースとも言えるかも知れません。
半地下のような玄関からリビングに向かう階段を登る高揚感。
同じ家の中でありながら離れの茶室のような絶妙の距離感を感じられる和室。
ホテルのバスルームのようにラグジュアリーな雰囲気に包まれた水回り。
大きな吹抜け空間に置かれたレトロな赤の薪ストーブ…。
この住まいの魅力は語り尽くせない程沢山あり、そのような住まいに家具蔵の無垢材家具が気持ちよさそうに配置されている様子は、言葉では現せないほどに幸せな光景でもありました。
北道路側から見た家のファサード。熟孔されたバランスで穿たれた小さな窓が「通風の確保」という機能性を超えて、建物全体のセンスの良さを表しています。
南側から見た外観。太陽の光と心地良い風、清々しい緑を受け止め、室内に招き入れるようなプランと開口部になっています。
玄関へのアプローチを兼ねた車庫の奥は書斎のドライエリアとして南からの光を取り込みます。
リビングは「モデルノシリーズ」を中心に。チーク材の床とチェリー材の家具が自然になじんでいます。
奥の和室との間に屋外デッキが入り込んだ形に。テーブルの向こうに渡り廊下的な空間が続きます。
手前の椅子は奥様の特等席とのこと。視線の先にはこの家づくりの間取りを考える上の拠り所となったモミジの大木があります。
無垢材をふんだんに使用した木組みによるテレビボード。複数の周辺機器もすっきりと収まります。
リビングに必要な収納を一手に引き受ける大容量のキャビネット。無垢材の質感が空間の雰囲気を左右する事が判ります。上部の鏡は実用の他、部屋を広く感じさせてくれる効果もあります。
車庫から入る奥まった玄関には「コートスタンド エミネント」を置いて。奥はドライエリアに面した書斎になっています。
吹き抜けの大空間の中でもソファ上部にはしっかりと天井を設け、守られたような落ち着きをつくっています。鶴崎さんの設計センスが光る細やかな配慮。
美しい天然石、水に強いチーク材を贅沢に使用した半地下のバスルーム。ここにもドライエリアがあるので光と風を感じる事ができます。
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