無垢材キッチン、素材はどう選ぶ?
2021.9.15
目次
人工のものと本物の木の違いは「素材の温度」
インテリア性やコーディネートのしやすさ、ナチュラル感、そしてその居心地の良さ。
こういった理由から、本来は設備であるキッチンにも内装や家具と同じように「木の質感」を求める人が増えています。
いわゆる「木の質感」とひと口に言っても、それを求めるアプローチや実際に選ぶ素材は様々です。
木目だけを求めるならプリントシートなどでも十分に事足りるかもしれません。
技術の向上により、雑誌やカタログで見る限りでは、その質感は本物の木と変わらないほど表情豊かに見えます。
ただ実際にそれを手で触れてみると、その質感は当然「本物の」木の質感とは異なります。
よく言われるのは「素材の温度」です。
シートや樹脂の熱伝導率と、本物の木、つまり無垢材のそれは大きく違います。
前者は、いわば手の熱を奪うような、ひんやりした手触りです。
本物の木に触れるとほのかな温かみを感じるのは、熱伝導率が低く、手の熱を奪わないためです。
「無垢材のキッチン」という選択肢
キッチンを新設する、あるいは既存のものと取り換えるのは新築やリノベーション、リフォームといった場合がほとんどです。
こういったケースでは他の打ち合せや決定事項も多岐にわたります。
なかなかキッチン「だけを」確認しに行くのは大変かもしれません。
しかし、確実に毎日のように使う場所であり、家族が集まる住まいの中心であるキッチンです。
より居心地が良いものにするためにも、時間と手間を掛ける価値があるのではないでしょうか?
今回は無垢材のキッチンについて、その素材の詳細についてお話をしていきます。
針葉樹と広葉樹
樹木の種類を大別するものとしては「針葉樹」と「広葉樹」があります。
無垢材のキッチン、と一括りにしたとしても、その木の種類によって色や木目もさることながら『強度』もまた異なります。
いわゆる「細い針のような葉が生える」のが針葉樹であり、よく知られているのはマツ・スギ・ヒノキなどです。
これらは柔らかく加工性が良いため、古くから木造建築の構造材などにも多く用いられてきました。
床材でもこれらを使用した無垢材にすることがあります。
その質感や触り心地はとても優しくて良いのですが、繊維構造が柔らかいのでキズが付きやすいというデメリットがあることは否めません。
そうしたことも承知したうえで、針葉樹材で作られたものを選ぶというのも一つの選択肢ですが、毎日の暮らしの中でキッチンという場所は大小の作業が行われる場所であり、今や家族全員が立ち入り、使用する場所です。
キズや傷みに細かく気を使っていられないのも現実といえます。
長く、且つ美しく使うことを考慮するのであれば、広葉樹材のものをお勧めします。
広葉樹材の特徴は
広葉樹材の特徴はその堅さ。
キズの付きにくさは勿論のこと、キッチンに付き物である金物の固定や繰り返しの摩擦に対しても強みを持ちます。
例えばキッチンの収納部分。
引出しにはレールが、扉には丁番が装備され、それを機能的に使うためにはビスなどの金物が必要です。
それらをしっかりと固定してくれるのも広葉樹材の特徴と言えます。
こうした機能面でのメリットのほか、意匠的な部分という意味でも広葉樹には魅力があります。
広葉樹は幅広い表情を楽しむことができます。
木の表面に着色を施さなくても、広葉樹であればウォールナットなどの色素が濃い樹種・ハードメープルなど明るい色調を持った樹種、あるいはチェリーのような華やかな赤みを持ったものなど、豊富な選択肢の中から選ぶことが可能です。
着色せずにインテリア性を高めることは長期の使用において差がつきます。
最初は綺麗に着色されたものでも、遅かれ早かれいずれは剥がれたり、あるいはキズが付いた場合、下地とのコントラストが悪目立ちすることとなります。
無着色の広葉樹であれば、自然な色合いを持ち、そのうえでキズが目立つことなく、むしろ風合いになってさえくれます。
人間が作り出したものとは異なる豊かなグラデーションや、使用するうちに発生する色合いの美しい変化は、長く使用することが大前提となる「台所」で普遍的な美しさを保つ要素となるのです。
樹種選びにセオリーはあるがルールはない
広葉樹、といっても日本でとれるもの、あるいは海外から入ってくるものも合わせると実にたくさんの種類があります。
では、その中でどれを選べば、あるいは何を基準に選べば良いのか。
結論から言ってしまえば、「色・木目・手触りを含めて本当に気に入ったもの」を選ぶのが正解です。
私たち家具蔵でもキッチンを含め、樹種と内装のコーディネートへのご質問は、ほぼ100%の割合で聞かれます。
曰く「フローリングがチェリーだからキッチンもチェリーにしないと」
「建具や他の家具に合わせて選ばないと」
という前提があるお話も多々伺います。
そういった基準はもちろん間違いではありませんし、統一感という意味では正解です。
ただ、ここで必ずお話しするのは「それはセオリーであってルールではない」ということ。
それよりも、好きな素材を選んで使う方が断然大切に使ってもらえる確率は高くなります。
また、無着色の無垢材であれば、様々な色素が複雑に入り組んで「その色」に見えています。
そのことで、どんなものを選んでもその場にスッと馴染んでくれます。
本物の木にはこうした懐の大きさもあり、コーディネートの多様性が広がるのです。
では実際にその「好き」を導くために、家具蔵の無垢材キッチンでも取り扱いのある樹種にはどのような特徴があるのかを見ていきましょう。
爽やかで清潔感のある空間を演出するハードメープル
ハードメープルは、別名「木の真珠」とも言われる、乳白色の木肌とツヤが魅力的な樹種です。
その別名通り、艶やかで滑らか、且つ光沢感もある木肌は清潔感と爽やかさを演出します。
明るい空間にしたい、あるいはお気に入りの絵やカーテンが映える空間にしたいという人にはお薦めです。
素朴なやさしいナチュラル感を求めるならナラ
ナラは海外では「オーク」とも呼ばれ、その方が耳馴染みがある人も多いかもしれません。
ドングリが生る木、というと親近感が湧いてきます。
メープルとは反対に、撫でるとかすかな凹凸を感じる木肌が素朴で、ナチュラルな雰囲気をより一層演出します。
虎斑(とらふ)という放射組織がところどころに入る独特の表情もまた個性的。
ナラ材の大きな魅力となっています。
合わせを選ばない無着色の無垢材の中でも特にその傾向も強く、明るくしたいけれど温かみのある空間にしたい、あるいは穏やかな表情の木目が好みという人にお薦めです。
華やかで温かみのあるチェリーは経年変化も魅力
チェリーはいわゆる桜の木。
滑らかな木肌、華やか且つ温かみのある色調と、その魅力には枚挙に暇がありませんが、その魅力の最たるものはズバリ使い込んだ人にしか味わうことのできない、色調のダイナミックな変化です。
無着色の木材はどんな樹種でも経年変化で色合いを変えていきます。
その中でもチェリーは劇的とも言えるほど変化の幅が広く、当初の淡い色合いが数年後には濃い赤褐色に変化します。
アンティーク家具と見紛う程の深い飴色の色合いは、空間を格調高く、華やかに、そして長く使ったものでも古さを感じさせずむしろ魅力とするような、そんな佇まいを誇ります。
コーディネート性の高さとモダンさならウォールナット
様々な色素がグラデーションのように入り混じった深い落ち着いた色合いと、力強い木目が特徴のウォールナット。
一般にウォールナットと聞くとその色合いは濃茶色が思い浮かびます。
ですが、実際はウォールナットの持つ色素はもっと繊細で複雑です。
その色調の濃淡やバランスは個体によっても大きく異なります。
それでいて、経年変化によって明るくなる色合いが木目の力強さをさらに際立たせることで、自然が生んだ意匠性をより明確に楽しむことができる樹種です。
モダンな家具との組み合わせや、和室にも合うようなコーディネート性の高さ、そして石や鉄といった木以外のマテリアルとの組み合わせにもハマる万能性を持っているのがウォールナットです。
繰り返しになりますが、キッチンは「毎日」「何回も」「長い間」使用するもの。
設備であることは耐久性を、今や家具と同等の存在でもありインテリアの重要な要素であることはコーディネート性を求められます。
そのどちらも兼ね備え、普遍的な美しさを保つ広葉樹の無垢材キッチン。
その中で本当に好き、と思える素材を選んで、毎日を居心地よく過ごせる空間を作って頂けたら、と家具蔵では考えます。
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