シリーズ~建築家によるこだわりの空間と無垢材家具の奥深き世界~ ⑨
2022.1.6
インテリア雑誌や住宅雑誌、建築設計事務所のHPなどを見ると、居心地の良さそうな空間に、恐らく住まい手や設計者がこだわって選んだのであろう家具、とりわけ木の質感に溢れる無垢材家具が置かれている風景が目を引きます。
建築空間は、そこで人間が暮らす、またはある目的を持って過ごすことを目的にしてデザインされているため、配置される家具は「生活の道具」として建築空間と重要な係りを持ち、空間だけ、家具だけで存在する時よりもその魅力や本質をより強く現わします。
「建築家によるこだわりの空間と無垢材家具の奥深き世界」では、家具蔵の無垢材家具が置かれた建築家の設計によるこだわりの空間が、どのような考えの元に設計デザインされ、家具蔵の無垢材家具が選ばれることになったのか、納品後のリアルな暮らし、使っている模様を交えてお伝えする事を目的に、家具蔵のホームページ上のコンテンツ「事例&お客様の声~建築家とのコラボレーション」の内容を元に、実際にスタッフが訪問取材に伺った際のエピソード、裏話などを交えてご紹介します。
前回は日本の建築史に大きな足跡を残した偉大な建築家、坂倉準三氏の設計事務所に長年在籍され、満を持して独立されたという輝かしい経歴を持つ、遠藤誠さんをご紹介しました。
「在るべくしてそこに在る建築」を探す、という地に足のついた設計思想を持ちながら素晴らしい建築を生み出し活躍されている遠藤さん。
優れた建築作品に共通する特徴ともいえるのですが、造りだすものに奇を衒った部分はなくシンプルに見えるのですが、明らかに普通では無い、凡庸ではない存在感を放つ個性がある。
そんな建築空間に家具蔵の無垢材家具は良く馴染んでいました。家具と建築の調和がとれた心地よい空間の実例に興味のある方はぜひご覧になってみてください。
そしてシリーズ第九回目の今回は、建築家・三宮 健司さん(ゆう設計アトリエ)が手掛けられた、新築一戸建て住宅 F邸のご紹介です。
三宮 健司さん(ゆう設計アトリエ)
九州大学工学部建築学科卒業、同大学大学院修士課程終了後、内井昭蔵建築設計事務所、ノエシス、杉浦英一建築設計事務所を経て独立。
2000年にゆう設計室を設立。
軽井沢に計画されたF邸の家づくりは、「森を見せるために部屋はすべて南向き」というところから始まりました。
誰もが息をのむのが、リビングダイニングに続く幅3メートルの大きな縁側。使っている柱は、この場所に立っていたカラマツの木だといいます。
1本1本声をかけながら伐採し、丁寧に乾燥させたもの。環境にも合う材をとり入れた粋な計らいです。
森に向かって勾配になった天井が、この景色をさらに特別なものにしていて
「こういう場所には、やはり無垢の木の家具を置きたいですよね」
とそのセレクトにも携わった三宮さんは語ります。
木々の間から朝陽が差し込み、刻々と表情を変える森の景色を楽しむ家は、まさにその目的を体現した形そのものになっているように見えました。
そして、三宮さんへのインタビューは意外にも風水学に関する内容から始まりました。
風水学は建築と深い関係性を持ち、科学的に理に適っているところもあると言われますが、建築への取り入れ方についてこのようなお話をして下さいました。
「風水学は家相ともまた違って、1人1人合うものが変わってきます。
私は風水を科学的に分析している研究所で数年間学んだのですが、実際にそれを極めようとすると、一生かかるようなボリュームがあるんです。
なので、それは自分の役目ではないと考え、建築の道を進みました。
ただ、技術も進歩した現代の家に見合う形で解釈する風水は自分の中で応用しながら適宜取り入れています。
建築家として、光や風をどう扱うかということは必ず考えますが、一方で、例えば部屋の中に柱が出ていたとして、そういう柱の角というのはどちらかというと鋭角に尖っていて、痛いイメージなのです。
慣れてしまうとあまり気が付かないのですが、実はそれはずっと意識下にある存在となってしまうことがあるのです。
極端な例かも知れませんが、もし天井から針が沢山ぶら下がっていたら、絶対に安全だと言われても、やっぱり嫌ですよね。
それと同じで、特に寝室など無防備に過ごす場所では、落ち着かなかったり、なぜかイライラしてしまったりする。
そういう角を少し丸くしてあげるだけでも、そこで過ごす人間の気持ちは随分違ってくるものなのです」
そして、お話は建築に使用される「素材」のことにも広がっていきました。
「床などもリラックスするならなるべくやわらかいほうがいいです。
床が固いと生活する中で筋肉が緊張して、それば内蔵の不調にまで影響してくることがあります。
いわゆるフローリングでも、鏡面塗装などだとやっぱり固いイメージです。
その点、家具もそうですが、本物の無垢の木は触れた瞬間にわかります。
人の体はものすごく敏感なセンサーですから、本物はわかるんですね。
特に家具は一見見た目が同じような突板(つきいた)のものと無垢材のものは、本来触れればすぐわかる違いがあると思います」
家づくりでも、家具選びでも、「本物を選ぶこと」の大切さを語っていただいた三宮さん。
人間の五感を大切にした心地よい住まい、空間づくりのスペシャリストとしてのご活躍が期待される建築家です。
光と風、自然を満喫しながら寛げるお気に入りのリビング。 薪ストーブの前には、「LDアームチェア デュオ」を置き、炎を眺めながらゆったりと過ごすことができると言います。
やさしい大谷石のタイルが印象的なキッチンカウンターの前には、特注で作ったメープル材の楕円テーブルと「Vチェア」を。
三宮さんが独立後に初めて手掛けたのは、曲線を描く天井や、ビビッドなブルーの壁などを配したモダンなデザインのお宅。ポストモダン建築のテイストがあり、今の時代でも新鮮な発見がある造形です。
三宮さんが推奨するのは“目的型”の家。この家に住んでどうなりたいかをイメージするところから設計が始まります。
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