一枚板の「耳」「白太」を活かすために必要なこととは?
2022.5.30
目次
一枚板天板が希少である理由
一枚板天板を使ってテーブルとする「一枚板テーブル」は無垢材から製作する無垢材テーブルのひとつであり、「本物の木のテーブル」と聞いた際には、この一枚板テーブルを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
木の育った痕跡や生き様が木目や形状にそのままデザインとして活かされるこのテーブルは、その存在感が空間を美しく演出します。
一枚板テーブルには希少なイメージがあり、それ自体は事実です。
そもそも一枚板テーブルとして十分な奥行を確保するには樹齢100年を超えるような高樹齢なものを確保する必要があります。
そのうえで通直(まっすぐの意)な形状のものであったり、割れや節などが無い(あるいは少ない)ものを探そうと思うと、その希少性はますます高まります。
「耳」は一枚板天板の大きな魅力のひとつ
一枚板天板を語るうえでその魅力は多々あります。
そのどれもが非常に重要な魅力でありますが、その優先度は人によっても異なるでしょう。
樹種なのか、木目なのか、色合いなのか、価格なのか。
サイズもまた欠かせない要素です。
しかし、一部の例外を除いて一枚板天板を選ぶ際の理由のなかでの、その多いものに「耳」の有無があります。
何故「耳」と呼ぶのか?その理由
「耳」と聞くと人の顔の両端にある聴覚器官、そしてよく聞くものとしては「食パンの耳」があります。
なぜ「パンの耳は耳と言うのだろう?」と思ったことは無いでしょうか。
じつは日本には昔から「端」のことを「耳」と言う文化があります。
パンが日本に伝わった際に「ここはパンの端だ」から「パンの耳だ」となったのです。
このことからわかるように、一枚板天板における両端の自然形状のことも「耳」と呼ぶのです。
一枚板天板の耳は熟練の技術の賜物
私ども家具蔵の店舗でもテーブルを検討している人から、この自然形状を活かした「耳」を見て「このようなテーブルが欲しい」と言われることが多々あります。
人の手では決してつくりえない自然だけが創り出すことのできる造形であり、おおらかに、あるいは不揃いに連なるカーブと凸凹が、見て・触って、癒しとデザイン性を演出しているのです。
木というのは少なからずまったくの直線ではありませんので、一枚板天板などを製作する場合には意図的にその部分を切り落とさないと耳自体は残ります。
しかし、この耳を美しく見せるためには熟練の技術が必要です。
木の皮を丁寧にそぎ落とし、虫害の有無も確認しながら造形として美しくなるように仕上げていきます。
何気なく見ている一枚板天板の「耳」は細心の注意を払った「技」の賜物なのです。
白太とは?
また、その耳部分に付随するものとして「白太(しらた)」があります。
樹皮の下にあたる部分で辺材とも呼ばれます。
木が成長をする為に根から水分や養分を吸い上げ、上方の枝葉に行き渡らせる役目を担う重要な部分です。
細胞としての動きも活発な部位で、木にとっても若々しい場所でもあります。
その色合いは心材と呼ばれる木の中身の部分よりも淡く、ウォールナットやチェリーなど心材に色が強く出るものの場合はそのコントラストが鮮やかに描かれます。
この白太の有無や大小が天板選びの材料となることもあります。
白太を残すのもまた難しい作業
この白太の部分を残すことは非常に難しい作業です。
まず、木そのものに由来する原因として、成長の過程で白太自体が殆ど残っていないものがあること。
そして、他にも耳や白太の偏在部分は樹液なども多く含まれることからやわらかく腐朽しやすく、いわゆる腐れなどを取り除く過程で無くなってしまうことがあること。
そして、栄養が多い部分であるが故に虫に喰われて残っていないことがあることが挙げられます。
材の乾燥中にも虫が新たに付いてしまうこともあり、そうした部分も丁寧に除去を行う必要があります。
こうした経緯を経たうえで改めて白太の部分や耳を見ると、それ自体が非常に希少なものであることがわかります。
耳付きの一枚板テーブルを使う喜び
こうした過程を経て出来上がった一枚板は、世界に一つしかないテーブルとして私たちにその魅力を存分に与えてくれます。
100年もの歴史が刻まれた一枚板は、職人が新たな息吹を加えることで私たちの暮らしの中で、新たな歴史を刻んでいく家具へと生まれ変わるのです。
家具蔵の店舗で一枚板テーブルを、もしくは自然形状の共木テーブルを見かけたら、側面の耳に注目してみてください。
そして、撫でてみてください。
きっと癒されます。
そのような癒しと共に代々受け継いでいく事も出来る一枚板には、時間の経過とともにさらなる価値も生まれていきます。
まさに自然の恵みを享受しながら、その美しさと共に暮らす喜びを送ることが出来るでしょう。
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