特別企画:家具蔵が提案する「木の家具のある暮らし」Part2
2022.12.30
樹種によるゾーニングで「場の空気」を創る
企業のトップを退いたのと同時に、終の住まいを購入された松田譲氏。
大企業の経営者としてこれまで様々な重要な局面で決断力を求められてきたがゆえの「本物」を知る人物でもあります。
今回、住まい全体のインテリア設計を託された家具蔵では、「樹種によるゾーニング」という手法で空間を演出することになりました。
住まいとそれを彩るインテリアが完成し、実際に暮らしてみての感想など、インタビューさせていただきました。
後半では松田様へのインタビュー内容をご紹介します。
自分にとって本当の心地よさとは何か
心底 リラックスできる空間―。
それが松田譲氏の新居への想いでした。
昨年、大手バイオ関連企業の社長を退任し、現在は相談役として携わっていらっしゃいます。
リビングでは家族や友人と過ごすほか、仕事のメールチェックやアイディアを練ることもあり、心地よい空間でこそ集中力が増すといいます。
松田氏は、 東京大学大学院で応用微生物学を学び、現在の会社に就職し研究者としての道を歩まれました。
転機がある日訪れます。
研究部門からいきなり本社勤務を命ぜられ常務に抜擢されます。
そしてほどなく社長に就任し、約10年に渡りトップとして企業を率いました。
在任中には大きな合併を成功させ、グローバル企業への道筋をつけた名経営者としてマスコミにもよく取り上げられています。
松田氏は、その朗らかな人柄が魅力でもありますが、その雰囲気を反映するかのような気持ちの良いお住まいに、現在は奥様と2人で暮らしていらっしゃいます。
家具の搬入が行われてからしばらく経った後、取材のためにお伺いすると、にこやかな笑顔で出迎えて下さいました。
松田氏と家具蔵の出会い
「触った瞬間 肌触りの良さに感激しました」 と、家具蔵吉祥寺店での家具蔵の無垢材家具との出会いを語ります。
これまでの住まいである古い一戸建てを出て、維持管理が楽で便利なマンション暮らしを始めようとしていたころでした。
戸建の別棟には義理のご両親が住んでいましたが、相次いで他界されたこともあり、心機一転、終の住まいを求めることになります。
両親のお世話をしながら、老後の暮らし方を考えさせられるきっかけとなりました。
物件探しを続けるうちに、希望に合う広さのマンションに出会えましたが、「体育館みたいなガランとした箱のような空間」に選択肢があり過ぎてなかなかインテリアプランがまとまらなかったといいます。
当初は、デベロッパー関連のデザイン会社に造り付けの家具を注文するつもりで見積もりを依頼しました。
そこはデザイン性も高く申し分なかったのですが、家具蔵に出会ったことで方針が転換します。
「無垢材の心地よさは合板材では再現できない、実際に暮らすということは肌触りや物の質感も大事」
だと考え方が変わったのでした。
ご出身である新潟の田舎で少年時代を過ごし、森の中をかけ回って自然のものに「触れた」原体験が、手から感じる本物の温もりを求めていたのでしょうか。
微生物学が専門の松田氏は自然材である木の持つ力を誰よりも感じたのかもしれません。
プライベートと仕事、どちらも心地よく過ごす空間
リラックスと集中、どちらにもインテリアは大きな役割を持つと言われます。
リビングの一角にはウォールナット材を美しく削り出したデスクとチェアが置かれ、松田氏の書斎として活躍しています。
価格も合板の造り付けの家具とは最終的なものはさほど変わりませんでした。
息子さんご家族とも適度な距離にあり、お孫さんが遊びに来るのを楽しんでいらっしゃいます。
こうして、ご夫妻にとってプライベートとお仕事、それぞれの時間をどこまでも心地よく過ごすため、欠かすことのできない大切な空間が完成することになりました。
白い壁に「デスク エミネント」と「チェア ヴィンテージ」のシルエットが映えます。
大きな空間のインテリアをまとめる手法として、居心地の良いコーナーをそれぞれにつくり、それを有機的に繋げていく、というものがあります。
ここではそこに、それぞれの木が持特性を生かしたゾーニングも意識しました。
左のTVボードと手前に続くコーナーがウォールナット材。
中央のソファスペースはハードメープル材。
右奥のダイニングはチェリー材、とそれぞれの樹種で構成されています。
各々の場所にシーンに相応しい木を選んだことで、より深い集中や寛ぎ、楽しさが得られるという考え方の表現です。それは、無着色の無垢材同士だからこそ成立するインテリア、とも言えますが、例えば私たちが実際の自然界を訪れて様々な樹種の群生に出会ったときに、森の風景や場所の雰囲気が一変するような感覚かも知れません。
現代のモダンなマンションにこそ求められる身近な自然観、新しい価値観といえるでしょう。
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