家具選びには「国民性」は出るのか? ~日本と外国の違いとは~
2023.3.29
国民性とは
各種報道をはじめ、よく話題に上る「国民性」という言葉。
人間社会というものに帰属する以上、周囲の環境が自身のものの考え方や行動を左右しますが、それを国という大きな単位で、そこに暮らす人たちの行動様式を(ある意味で)定義づけるものです。
時間や公共の場においての考え方の比較が有名であり、ポジティブな使われ方もあればネガティブな内容で語られることもあります。
人というものはそれぞれに個性があるので、あくまで一般論である「国民性」をそれぞれの個人に当てはめるのは危険でもありますが、大きな意味で「その傾向がある」という指標にはなり、その違いは非常に興味深いものがあります。
このブログページは家具やインテリアについてのものであり、国民性をテーマに据えるなら、家具やインテリアを媒介として話を進めなければなりません。
家具やインテリアに対する考え方で特徴的と言えるのは、その機能美を追求したもの作りに定評のあるドイツや、北欧デザインが今なお世界を席巻するデンマークをはじめとした北欧諸国が挙げられます。
ドイツの家具やインテリアに対する考え方
ドイツのもの作りにおける特徴は、どのような分野においても「機能美と合理性の追求」に終始します。
それが使いやすさや便利性を追求したテクノロジーの発展に寄与し、無駄な装飾を排除したミニマル性にも繋がります。
ドイツの有名な産業のひとつに自動車がありますが、これもまさしく先程挙げた特徴を体現しているものであり、家具やインテリアの世界においてはそれを追求した「バウハウス」はあまりにも有名です。
家具の代表的なブランドを見ても曲木技術で家具に革新をもたらした「トーネット」などは機能美と合理性を体現したものと言えるでしょう。
その家具やインテリアの選び方も、以前は大型且つ中世想起させる装飾が施されているのが特徴のものも多かったのですが、現在では直線や正円などシンプルな造形を用いながら機能性の高いものが人気です。
また、ドイツでは「自分で良いものを用意して好みに合わせて細工する」というDIY的な文化を持ちます。
ですがその根底にあるのは「丈夫で長持ちすること」であり、その辺りに質実剛健を求めるドイツの気風が見え隠れするのは面白いところです。
デンマークの「ヒュッゲ」という考え方
「デザイン大国」と呼ばれる北欧はデンマークの家具やインテリアの選び方はどうでしょうか。
現在も色あせることなく世界中で愛される優れたデザインが生まれ続ける背景には、住まいを「心から寛げる場所」として大事にする文化や環境、考え方があります。
日本よりずっと北に位置しているため、夏は天候が良ければ非常に快適な気候で昼の時間も長いのですが、冬になると曇りや雪、そして暗い夜が長い時間続きます。
この気候は、デンマークの住文化にも大きな影響を及ぼしています。
冬場は室内で過ごす時間も長いため、より快適な住空間を求めたことで機能的で美しい家具が数多くデザインされたと言われています。
彼の地のものの考え方を表すものとして「ヒュッゲ」というものがあります。
デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい時間」のことを意味し、その「ヒュッゲ」に則って集中して質の高い仕事をした後は残業などせず、空いた時間は家族や友人と家で食事をしたりゆっくり一緒に過ごすのです。
そしてそれを至上の時間としており、また、その時間をより豊かにする為に家具や食器、日用品のデザインにとことんこだわります。
ヒュッゲを大事にする=その時間が長くなる=その家具と付き合う時間も長くなることは長い期間が経っても飽きずに愛着がもてるものを選ぶ(もしくはそうしたものが多くなる)理由でもあります。
日本人の家具選びやインテリア選びの特徴は?
さて、翻って私たち日本人の家具選びやインテリア選びの特徴を見てみます。
歴史を振り返ってみると、そもそも日本の家には家具がほとんどありませんでした。
正確に言うと家具は建築に組み込まれていたものでした。
座るには畳の上、収納は押入れ、飾り棚は床の間など家具の無くても成立していた暮らしを送っていたのです。
終戦後を機に一気に日本の建築及び家具の洋風化が進んだ背景があります。
国民性というテーマに沿って日本人気質を表現するなら「模倣からの発展(の上手さ)」が挙げられるでしょう。
自動車しかり、他の産業しかり、先発の外国発信の産業を持ち前の緻密さ・器用さ・勤勉性で正確に模倣し、それをヒントにしながらオリジナルを超える、あるいは独自のものを作り上げていくことができる気質が日本人にはあります。
それは欧米のモダンデザインを踏まえながら日本のオリジナルデザインを生み出した「ジャパニーズ・モダン」の確立にも繋がり、それらは今も日本発信の名作家具として世界中で親しまれています。
また、外から来た良いものを抵抗なく受け入れ、さらに発展させることができるのは、例えば東京が世界でも一番といわれるほど各国の食事を高いレベルで楽しむことができることと無関係ではなく、インテリアにおいても北欧風・東南アジア風・北欧式・純和風といったテイストを日本古来の建築様式やもの作りと合わせて楽しむといった多様性にも繋がっています。
こうした日本人の家具選び・インテリア選びに変化が起きているとすれば「自分が良いと思った良いものをより長く使用する」という欧州的な考え方が浸透し始めていることでしょう。
大量生産から生まれる使い捨ての文化は日本に限らず、世界でも横行し、それは経済の発展や技術の発展に貢献しました。
そして、大手メディア発信の一方的な情報だけでなく、様々な情報をあらゆる角度から獲得できる時代ではそれを取捨選択するのはまさしく自分の感覚が基準であり、それを良しとする考え方も主流になってきています。
そこで目を向けるべきは、国内家具メーカーではないでしょうか。
日本には熟練の職人や優れたテクノロジーなど「良いもの」を作り上げる環境がふんだんにあり、国内メーカーはそのような環境を活かして素晴らしいインテリアを日々世に出し続けています。
私ども家具蔵も日本人による日本人のための家具づくりを、100年使用できるように製作しています。
単に「道具」としてだけではなく、そこに使う豊かさ、使う事で得られる幸せを大切にできるように。
家具蔵をきっかけにして「家具を選ぶ」という行為そのものに、楽しみや幸せを感じて頂けたら幸いです。
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