無垢材家具は樹種の堅さで選ぶべきか
2023.5.11
私ども家具蔵の店舗でお伺いする質問には多々ありますが、しばしばあるのが「この樹種は固いですか?」「この中で一番固いものはどれですか?」というものです。
突き詰めていくと「せっかく購入する大事な家具だから傷がつかない方が良い」「傷や傷みを気にせずに使用したい」という心理にたどり着くことも多くあります。
厳密にいえば木はどの樹種もそれぞれ固さは異なり、「〇〇より〇〇は固い」という回答はできますが、それを基準に家具選びを行うことは少々勿体ないことでもあるのです。
固い・柔らかいといった一部の要素に捉われずに無垢材家具選びを行っていくためのお話しです。
針葉樹材と広葉樹材の違い
「堅い木」「柔らかい木」という比較で言うなら針葉樹と広葉樹の話は欠かせません。
木には「針葉樹」と「広葉樹」という違いがあるのです。
「針葉樹」は「針のように細長い葉を持つ木」で、代表的なものはマツやスギなどがすぐに思い当たります。
「広葉樹」はわかりやすく言うと「平たくて幅の広い葉を持つ木」のことで、街中でよく見ることができるケヤキ、ポプラ、サクラ、ブナ、カシなどがそれにあたります。
針葉樹から採れる「針葉樹材」は「柔らかく軽量」であり、広葉樹から獲得できる「広葉樹材」は「堅く強度があり傷がつきにくい」という特徴があります。
そのことを裏付けるように、英語では針葉樹を「Softwood」、広葉樹を「Hardwood」と呼びます。
名前がその硬度に着目しているほど、両者の違いは明確です。
もちろん、その中には例外もありますが、その特徴を活かして昔から適材適所で材料として使われてきました。
建物の柱や梁など構造材に針葉樹が多いのは、軽くて加工がしやすいという特徴が建築に最適だからです。
逆に、硬くてキズが付きにくく強度があることから家具材には広葉樹が多く用いられます。
家具に向いている広葉樹材
無垢材で製作する椅子、つまり無垢材チェアを例にとってお話をしていきます。
無垢材チェアの製作に使用するなら広葉樹が断然有能です。
無垢材チェアは人の身体を支え、暮らしに必要な作業を支えるものとなりますが、そこに必要なのは「強度がある」ことであり「揺れに強い」ことです。
広葉樹は強度があるので重量のあるものを収める可能性のある収納家具や、長期に渡って使用することになるなかで傷などがつく可能性も高い(つまり傷がつきにくいものが良い)ダイニングテーブルにも向いています。
そして、中身の組織の密度の濃い広葉樹は揺れにも強いので、ソファーや椅子のフレームに最適です。
世界中の名作椅子の素材は広葉樹であることがほとんどです。
広葉樹である「ウォールナット」「チーク」「マホガニー」が「世界三大銘木」と呼ばれているのはその美しい色味や木目の表情、加工性や剛性も勿論ですが、そのような理由もあります。
広葉樹材は堅く傷がつきにくいが「傷が付かない」わけではない
無垢材家具を選ぶ際には広葉樹材で作られたものを選ぶ、ということはわかりましたが、ではその樹種ごとに堅さが少しずつ異なるとして、もっとも堅い木を選ぶことで傷やへこみといった傷みからは無縁の家具選びとなるのでしょうか?
答えは「NO」です。
あくまで広葉樹材は「傷が付きにくい」のが特徴ですが、「傷が付かない」ということではありません。
非常に堅い木とされている樹種、例えばハードメープル材やケヤキ材などでも、上から物を落としたらへこみが出ます。
また、鋭いものによって表面に傷が付くこともあります。
つまり「とても堅い」とされている樹種でも傷が付かない、ということはなく、仮にその程度に差はあっても堅さだけで家具選び・樹種選びを行うことは勿体ないという点のひとつはここにあります。
傷やへこみはメンテナンスで修復できる
無垢材家具は傷やへこみといった傷みについてはメンテナンスが可能です。
自身でサンドペーパーなどを当てて補修する方法から、購入先や専門業者に依頼をするなどその方法は仕上げ塗装などによってもまちまちですが、スクラッチによる傷・打痕によるへこみの類は一部の例外を除いて綺麗に修復できます。
また、シート状のものを表面に貼り合わせたようなものではなく、中身も同じ「木」であり、仮に傷が生じたとしても決してそれが嫌なものとして見えることはありません。
最初に傷が付いたときはやはりショックでしょうが、それすらもやがて味わいに感じるような風合いを併せ持つのが無垢材家具です。
お届けした家具を大事に使用してもらえる、ということは私ども家具蔵にとってもたいへんありがたいお話しです。
ですが、日々使うものであり傷を付けないようにとこわごわ使用するようなことや、神経質になってしまうよりもおおらかに使用してほしいと考えています。
何故なら、傷みも味わいになり、それは修復できるのですから。
それぞれ異なる個性を持った樹種を選ぶ楽しみを最優先に
また、せっかく様々な樹種を選ぶことができるのです。
メーカーによっても異なりますが、私ども家具蔵では常時8樹種、一枚板天板などを含めれば30を超える樹種をお選びいただけます。
それぞれに色合いや手触り、語るべき逸話があり、すべてが美しく経年変化しながら暮らしを彩ります。
自然の色合いを活かしたインテリアコーディネートが可能な中、堅さというのは数ある樹種を選ぶためのひとつの材料ではあっても、それだけで選ぶのはやはり「勿体ない」のです。
樹種の硬さは針葉樹と広葉樹で差があり、広葉樹の中でも違いはありますが、実際に使用する上での大きな差ありません。
無垢材家具は樹種の堅さよりも、材の持つ色合いそのままを楽しんだり、樹種によっての経年変化の違いを比較して選ぶと良いでしょう。
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