無垢材家具製作において原木仕入れがもたらすものとは?
2024.4.9
木材の仕入れには大きく分けて2種類がある
無垢材を用いた家具、つまり「無垢材家具」を製作する際の原材料の仕入れ方には違いがあります。
原材料となる木材を家具の製作者やメーカーが仕入れるにあたって「原木をそのまま仕入れて加工する」のと「あらかじめ製材された板材(半製品)を仕入れて加工する」という2種類が存在するのです。
原木はしばしば丸太とも呼ばれますが、その意味するものは同じです。
つまり、伐採して「枝打ち(枝葉を落とすこと)」を行ったいわば「木そのもの」の状態をそのまま仕入れするのが「原木仕入れ」です。
市場での買い付け、業者との直接の交渉などでほぼ無加工のものを仕入れ、製材から乾燥までを買い付けを行った側、つまり家具メーカーや製作者側が行って家具製作の材料とします。
一方で原木を一定のサイズに製材・乾燥させ、板状や角状に加工したものが半製品(フリッチ材)として流通し、それをメーカーなどが買い付けて家具製作を行うケースもあります。
割合で言えば、後者の「半製品となった材料を買い付ける」ケースが圧倒的に多く、「材木商」「材木業者」と呼ばれる人たちが存在する理由でもあります。
フリッチ材を使用する意味とは
木材の活用方法は家具だけではなく様々なものに使われます。
身近なところでは各種の紙も元は木であり、住関連で言えば家を建てる時に使う柱や梁などの構造材、あるいはフローリングやドアなどの建材にも木材は使用されています。
家具製作に限らず、効率の良い材料仕入れは利益を生み出すうえでは必須と言えます。
木を原料とした何かをいちから作るとして、原木を仕入れるということはその木を製材し、乾燥によって木の動きを安定させるなどの材料を加工する様々な過程が必要になることを意味します。
同時に原木はその内部がどうなっているのかを判断することが極めて難しいものです。
外観は美しくても内部に大きな空洞がある、大きく割れている、大半が腐っていて使用できないといったこともざらにありえます。
それを見極めるには相応の熟練度が必要であり、そのような人材がおいそれと見つかるわけではありません。
また、仕入れた材料が結果として使用できない部分が多いものと判明した場合、そのロスを考えるとすでに加工してあるものを仕入れることで、品質が安定したものを一定数確保できるという意味から効率的であると言えます、
原木仕入れを行う理由
では、何故家具などの製作において製作者側が原材料の仕入れまでも一括して行う「原木仕入れ」が存在し続けているのでしょうか。
それは半製品仕入れでは表現しきれない「木の良さ」を活かした物作りをすることが出来るからに他なりません。
私ども家具蔵では無垢材家具の原料となる原木を選ぶ際に、人任せにせず熟練の目利きが自ら木の産地にまで足を運びます。
ここまで徹底するのには、理由があります。
まず、その木が育つ環境を自らの五感で確かめることができることです。
土壌や地形、気候(風・雨・雪)の樹に与える影響なども感じることで、生育環境を把握しているのです。
さらに、現地にまで足を運ぶことで、人と人のつながりを大切にして、信頼関係を高めることで自身が把握していることと現地の人の蓄積された情報の両方で樹を知ることができるのです。
時には猛吹雪のなか、命懸けで雪深い場所に足を運んだとしても、毎回形の整った、立派な大きさを持った大径木に出会うことができるとは限りません。
家具蔵では長年の経験による目利きで、ごく僅かな大径木の中からさらに良質な原木を一本一本吟味し、家具蔵の品質に合う原木を選び出し仕入れています。
この原木仕入れが、家具蔵の無垢材テーブルや無垢材チェアをはじめとした家具製作を支える原点となっています。
家具になった姿を想像した製材
料理人は食材の仕入れの際には頭のなかに「この食材を使ってこんな料理が作りたい」というイメージができあがっていることでしょう。
そのイメージをもとに、魚のさばき方や野菜の仕込みの方法などが決まり、調理が始まります。
家具蔵の家具づくりでも、原木の姿を見て「これはこの家具に使うことができる」「このような家具が作りたい」というイマジネーションが沸き立つのです。
原木を「材」に生まれ変わらせる工程を製材と言いますが、木目の流れや形状、内部の状態を見極め、鋸を挽く位置や角度、厚みなどを一本一本、一枚一枚ごとに決めて指示を出し製材しています。
イマジネーションを働かせることで、見る人をくぎ付けにする木目や杢が現れるのです。
それが、見る人・使う人の心を打つ無垢材一枚板テーブルの美しさや、横一列に並んだ引出しの前板の木目が繋がる(木目通し)ことを生むのです。
「無垢材テーブルヴィンテージ」という存在
無垢材テーブルヴィンテージは、一本の原木から一枚の天板を作り上げる「共木」のテーブルです。
その中でも職人の高度な木取(きどり)技術を必要とする通称「ブックマッチ」という接ぎ方は、同じ原木から製材された上下2枚の板を、本を開くようにして接ぎ合せることです。
木目をシンメトリー(左右対称)で合わせることで、その表情をデザインの一つとして表現することができます。
ブックマッチの魅力は、均整のとれた美しさにあります。
無垢材ブックマッチテーブルにするには、1本の原木から2枚の幅広材が確保されなければ叶いません。
もし、製材された際に隣り合わせだったペアのどちらかに、少しでも問題点が見つかれば、その部分を避けた内側でテーブル用の天板として仕上げることになります。
ペアの条件が揃わなければ、作ることができないのがこの無垢材ブックマッチテーブルです。
無垢材テーブルヴィンテージの木取りは木合わせの繊細な感性や接ぎの技術など、高度な職人技が要求されるのです。
原木仕入れだからこそ可能な無垢材ブックマッチテーブルは、家具蔵各店で展示していますので、ご堪能ください
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