あえて「異なる樹種」でコーディネートする際のポイントは?
2024.8.2
目次
お引越しやご新築、リフォームや新生活など家具を検討されるタイミングは人それぞれでしょう。
家具を選ばれる際に、多くの方が気にされるポイントとして、サイズ感・レイアウト・色の使い方などがあります。
実際にこの部分を見誤ると、いわゆる「家具選びの失敗」に繋がります。
「空間づくり」、「コーディネート」は、「どのような空間にしたいか」が一番重要になってきます。
自身が居心地の良い空間とはどういったものか。
コンセプトが明確になればなるほど、家具選びは円滑に、そして楽しいものになります。
「どのような空間にするか」を考える上で、色調を主体にした空間全体の雰囲気が重要になります。
例えば、明るく開放的な空間なのか、落ち着いたモダンテイストの空間なのか、ファブリックやグリーンでアクセントをつける北欧テイストを主体とする空間なのか、を明確にすることです。
自然素材への回帰
自然素材にこだわった住宅やインテリアを選ぶ方も多くなってずいぶん経ちます。
もはやそれはトレンドではなく、定番的・主流的な考え方となっている感もあります。
環境に優しい・安心感がある、といった要素も合わせ、人が自然素材を求めるのは、いわば本能的なものかもしれません。
TVのCMでも、無垢材ウォールナットや無垢材チークなどをふんだんに取り入れた住宅が増えています。
自然素材の代表格でもある無垢材の魅力が、急速に認知されてきています。
その無垢材の魅力とはいったいどこにあるのでしょうか。
無垢材は美しく年齢を重ねてくれる
木材は時を経ることで、色味が変化します。
革の鞄や財布、畳の色が変化するように、自然素材の無垢材も時間の経過とともに色味が変化していきます。
“経年変化”、これが、無垢材を語るキーワードです。
では、どのように色味は変化するのでしょうか。
「どの木も濃くなるのではないか」と思われがちですが、木の種類によって色味の変化は様々です。
色が濃くなる材、反対に色あせていく材など色相、彩度、明度が変化します。
無垢材は長く付き合うことのできる素材だからこそ、経年変化後の色味も知っておきたいものです。
それでは、なぜ木の色味は変化するのでしょうか?
様々な要因により変色が生じますが、木材に色の変化をもたらす最も大きな要因は“光”です。
光はどんな状況でも完全には遮断することができないため、必ずその影響が現れてきます。
光にはさまざまな波長があり、特に紫外線の影響は強く、木材の成分の中で最も光に敏感なリグニンという成分は、紫外線などの光を吸収して、分解し変性していく過程で木材の色が変化します。
しかし自然の無垢素材は、色目を変えても不思議としっくり馴染みます。
樹種によっては、そのように床の色、家具の色、それぞれの素材を変えたほうが空間にメリハリが出て、お互いに引き立てあう役目をする場合があります。
ナラ材などの明るい色の床にウォールナットの家具を合わせれば空間が引き締まり落ち着いた雰囲気になりますし、
透明感のあるハードメープルやホワイトアッシュなどの家具を合わせて、ファブリックで鮮やかな色を取り入れれば、北欧風の雰囲気になります。
逆にウォールナットやチークなどの濃い色の床に、ナラやタモ、ホワイトアッシュなど明るい色目の家具を合わせることで軽快な印象のお部屋にすることもできます。
このように、無垢材は、経年変化することを頭に入れ、家具選びをしたいものです。
そして無垢材同士であれば、様々な組み合わせも可能になります。
それでは、ケーススタディを見ていきましょう。
ケーススタディ:異樹種のコーディネート その1
リビングのソファとコーヒーテーブルは、ハードメープル材。
淡い木色が明るい光に映え、正面の大きな窓から降り注ぐ外光を受け止め、さわやかな気分へと誘ってくれます。
黒い本革のクッションとのコントラストが印象的となっています。
奥にあるのは、チェリー材のダイニングテーブルと収納家具。
暖色系の木の風合いが場を華やかに演出し、人が集う場所にふさわしい構成となっています。
深い飴色に経変変化していく様を毎日楽しめるのもチェリー材ならでは。
同じ空間でありながら、ウォールナット・ナラ・チェリーがバランスよくコーディネートされた好例です。
ケーススタディ:異樹種のコーディネート その2
窓から差し込む陽光が床や家具の無垢材に反射して、木の空間をふわりと優しい空気を包んでいます。
温かみのあるチェリー材やチーク材を基調とした中で、ウォールナット材で製作したカウンターチェアとダイニングチェアのシャープなラインがインテリアに品格を与え、引き締まった印象をもたらしています。
天井に仕込まれた間接照明やボーダータイルの質感、ウィンドウトリートメントのシェードなどのすべてのバランスを意識してデザインされたキッチンは、建築と一体となって違和感なく溶け込んでいます。
ケーススタディ:異樹種のコーディネートその3
ソファはチェリー材、一枚板のテレビボードはウォールナット、隣接する場所にはチェリー材のサイドボード、手前に見えるのは、チーク材のローテーブル。
限られた空間の中で、3つの樹種がバランスよくレイアウトされています。
それぞれ素性の違う樹種にも関わらず、まとまった印象があります。
重要なことは、同じクオリティで製作されていること。
同じクオリティで製作されたものであれば、“作りの精度”の統一感が出ます。
木の表情は、豊かな木目により同じ色に見えても、よく見ると濃淡があります。
この色調の濃淡こそが、空間に木のグラデーションを生み、整った印象を与えてくれます。
そう、まるで木と木が談笑しているように調和してくれるのです。
自然が織りなす色彩は、どの素材でも受け止めるほどの度量が備わっています。
自然は共存共栄を行ってきました。
その営みに通じるのかもしれません。
森にみる樹々の共存共栄
森に足を運んでみると、森には一種類の樹や草花だけで構成なされているのではなく、実に多岐に渡る樹々や草花で構成されています。
様々な命が助け合いながら、“森”を形成しています。
同じように、住宅を森と考えると、一樹種だけでなく、たくさんの樹種に囲まれた暮らしも魅力です。
お好きな木をチョイスして住空間をつくることは、自然の恩恵を受け、理想の住空間の実現に繋がるのではないでしょうか。
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