葉のメカニズム
2017.11.27
私たち人類はその昔、生活するのに適した土地を求めて移住を繰り返し、世界中に生活圏を拡げてきた経緯があり、今また地球以外の星に移住する計画があることは多くの人が知るところです。
つまり、その時代や生き物としての特性を考慮しながら自分たちに合う土地を探してきた歴史があります。
しかし、植物は自らが生えている土地の環境が良くないからといって、歩いて別の土地に移ることは出来ません。
彼らは自分の置かれた土地で出来る最大限の努力をしながら、大きく成長していきます。
植物たちが自分たちの生きる土地で生き抜き、種を繋いでいくための工夫は本当にさまざまで複雑です。
今回はその工夫や秘密の中から「葉」を通してお話していきましょう。
葉のメカニズムと各部の名前
植物にとって成長に必要なものはなんでしょうか?
それは「豊かな土壌」「潤沢な水分」そして「充分な光」です。
特にこの「光」を多く吸収する為に、それぞれの植物は葉の形を工夫し、その付け方を工夫しています。
マツやスギなどのように細い形の葉をもったものはいわゆる「針葉樹」であり、それに対して広い葉のものは広葉樹といいます。
植物にとって光はいわゆる光合成を行うためだけではなく、その光を自分の置かれている環境を把握するのにも利用する意味でたいへん重要です。
太陽の光は現在の季節や時間などを判断する基準となり、開花や発芽のタイミングを計っています。
また、植物にとって、日光は食事であり栄養です。
葉を大きく伸ばすことは、たくさん栄養をとる=光合成をたくさん行うことであり、生命活動に必要なデンプン(栄養)と酸素(排出物)をつくる機会を増やします。
広葉樹の葉が薄く広くできているのは、太陽の光を効率よく吸収し、ガス交換することができるための適応といわれています。
葉には一定の寿命があり、時間が来ると枯れたり落葉したりして木から離れます。
葉は全体のなかで一番弱い部分でもあり、その形状もいろいろです。
分厚かったり、小さかったり、あるいは葉に水をためる仕組みを発達させるものもあります。
例えば乾燥地に生えるために、葉や茎に水を蓄える植物は「多肉植物」です。
また、サボテンのように、葉を棘にしてしまったものもあります。
他にも、葉が様々な形に変形して昆虫を捕らえる「食虫植物」もウツボカズラのように袋となったもの、ハエトリソウのように罠になったものなどが有名です。
葉にはたくさんの筋が入っているのが普通です。
これらはすべて「葉脈(ようみゃく)」と呼ばれるもの。
これは葉に見られる樹枝状、あるいは網目状の構造のことで、その内部には「維管束」が通っており、茎の維管束と連結して水や養分を供給し、デンプンなどの合成産物を運ぶ通路となっています。
葉は光合成の主要な場であり、たくさんの光を受けることが望ましいことはこれまでのお話でお分かり頂けていると思います。
(ただし、強すぎる光は光傷害を導くことがあります)
多数の葉に効率よく光が当たるように、植物は多様なパターンで葉を配置しています。
この配置を「葉の空間配置」と呼びます。
こうしていわゆる「葉っぱ」ひとつをとってもたくさんの構造の秘密があり、知らないことも多々あることがわかります。
葉序とは
その植物の生活を支える葉は、陸上に生息する植物(「陸上植物」)の葉は一定の規則性をもって茎に対して配列しており、この配列様式のことを「葉序(ようじょ)」といいます。
この葉序には「互生葉序」「対生葉序(ハコベ)」「輪生葉序(クガイソウ)」といった区別があり、茎に葉がどれだけつくのかで区別されます。
互生葉序のものは多くの場合、茎の周りにらせん状につくので、螺生といい、その葉序を螺生葉序といいます。
家具蔵で扱う木ではケヤキ・ナラ・クルミ・アサダなどがそれに属します。
対生葉序のものはタモ・メープル・ホワイトアッシュ。
輪生葉序はツツジやクチナシ、カラマツなどがあり、家具蔵で扱う樹種にはそれらは含まれていません。
単葉と複葉
葉には、単葉(一枚のみの葉身よりなる葉。最も普通な葉の形)と複葉(枝がさらに分かれ枝になり、その先に葉がつく)があり、単葉が枝から一枚ずつ葉がつくのに対して、複葉は枝(葉軸)がさらに分かれたように葉がつくのが特徴です。
複葉を構成しているひとつの枝のように見える部分が葉であり、末端の1枚の葉のように見える部分を小葉といいます。
複葉の出方によって「三出複葉」「奇数羽状複葉」「偶数羽状複葉」「掌状複葉」「鳥足状複葉」「2回偶数羽状複葉」「3回奇数羽状複葉」といった多岐に渡る種類があります。
小葉が対生になっていても、枝から分かれる葉軸が互生ならば、その樹木は互生です。
と、駆け足ではありますが「葉」についてのお話をご紹介しました。
普段何気なく見ている木の葉ですが、葉を見ただけで「この木は○○」と答えることが出来る人もたくさんいます。
身近にありながらとても中身が深い植物たち。
これからもそんな植物や木についてのお話をここでご紹介していきます。
関連リンク
https://www.kagura.co.jp/point/02.html
https://www.kagura.co.jp/point/03.html
参考文献
裳華房 熊沢正夫著 「植物器官学」
日本植物学会編 「植物学の百科事典」
鹿島出版会 小原二郎著書「木の文化」
草思社 西岡常一著書「木のいのち木のこころ」
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