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紅葉について

2017.10.30

秋も深まると、各地で紅葉の見頃が話題にのぼるようになります。

ひと口に紅葉と言っても、赤色だけでなく黄色に染まっている葉もあります。

このような色の違いや、そもそも何故葉が綺麗に色付くのか、知っているようでじつは知らないことも多いもの。

今回は日本の秋の風物詩である「紅葉」についてお話していきます。

 

紅葉1.jpg

 

紅葉(こうよう)と紅葉(もみじ)

紅葉(こうよう)とは、主に落葉広葉樹が落葉の前に葉の色を変える現象のことを言います。

日本における紅葉は、9月頃から北海道の大雪山を手始めに始まり、徐々に南下していきます。

紅葉の見頃の推移を桜前線と対比して「紅葉前線」と呼びますが、紅葉が始まってから南下が完了するまでは1か月ほど掛かり、見頃は開始後20?25日程度となります。

見頃の時期は例年、北海道と東北地方が10月、関東から九州では11月から12月初め頃までです。

 

紅葉(もみじ)とは、紅葉(こうよう)の中でひときわ紅色の目立つカエデの仲間を総称して言います。

これは広い意味での紅葉(もみじ)です。

更に、狭い意味でのいわゆる「モミジ」はカエデの中の特定のものを指します。

カエデの中でも葉の切れこみの深い赤ちゃんの手のようなイロハモミジの仲間は葉が大変美しく、好んで鑑賞されたところから人の手を広げた形の葉を代表して「モミジ」と呼ばれるようになったそうです。

 

紅葉(こうよう)のメカニズム

普段、葉が緑色に見えるのは内部にクロロフィルが含まれるためです。

冬になるにつれて日照時間が少なくなり、また気温も低くなることから光合成の効率が悪くなります。

そこで落葉樹は冬になると冬眠する動物のように休眠するのです。

この時に木にとって、葉は必要なくなるので葉を落とします。

落葉するプロセスとして、まずタンパク質の分解作用によりクロロフィルが少しずつ破壊され、それが枝に吸収されます。

同時に葉と枝の間に「離層」と呼ばれる壁をつくり、水や栄養の行き来を少しずつ遮断していきます。

この時クロロフィルが消失することで緑色が無くなり、イチョウのような葉っぱではだんだんと黄葉してゆきます。

この時、葉のなかにはまだクロロフィルが少なからず存在し、光合成を行っていますから、光合成によってつくられたグルコースという成分は枝に送ることができず、葉の中に蓄積されます。

細胞の液胞中ではこの過剰に蓄積されたグルコースが行き場を失い、様々な生合成の経路を経て、「アントシアニン」と呼ばれる赤い色素に合成されます。

残ったカロテノイドという成分である黄色と、合成されたアントシアニン量のさじ加減で葉全体が真紅-・橙・黄の間の色になります。

これが紅葉のメカニズムです。

 

紅葉2.jpg

 

紅葉と黄葉と褐葉

赤色に変わるのを「紅葉(こうよう)」、黄色に変わるのを「黄葉(こうよう、おうよう)」、褐色に変わるのを「褐葉(かつよう)」と呼びますが、これらを厳密に区別するのが困難な場合も多く、いずれも「紅葉」として扱われることが一般的です。

また、同じ種類の木でも、生育条件や個体差によって「この樹種は赤に変わる」というような決まりがあるわけではありません。

詳細なメカニズムは以下のとおりです。

紅葉・・・葉の赤色は色素「アントシアニン」に由来します。

アントシアニンは春から夏にかけての葉には存在せず、老化の過程で新たに作られます。

アントシアニンは光の害から植物の体を守る働きを持っているため、老化の過程にある葉の中ではクロロフィルやカロテノイドを分解する際に、葉を守るために働くと考えられています。

黄葉・・・葉の黄色は色素「カロテノイド」によるものです。

カロテノイド色素系のキサントフィル類は若葉の頃から葉に含まれていますが、春から夏にかけては葉緑素の影響により視認はできません。

秋に葉のクロロフィルが分解することにより、目につくようになります。

「カロテノイド色素」という成分も光による害から植物を守るために機能しています。

褐葉・・・黄葉と同じ原理を持ちますが、タンニン性の物質(主にカテコール系タンニン・クロロゲン酸)や、それが複雑に酸化重合したフロバフェンと総称される褐色物質の蓄積が目立つためとされています。

本来は紅葉するものが、アントシアニンの生成が少ない場合に褐葉になることがあるのです。

 

世界の中で日本の紅葉が最も美しいと言われる理由

紅葉と言うと、つい有名なカエデばかり思い浮かべてしまいますが、日本では実に様々な樹木が紅葉しているのをご存知でしょうか。

家具蔵で扱っている樹種だけでも「ケヤキ」「ナラ」「サクラ」「ニレ」「トチ」「クルミ」「タモ」などが有ります。

そもそも、紅葉する落葉広葉樹は主に温帯と呼ばれる地域に生育しているため、世界中どこに行っても紅葉が見られるわけではありません。

また、その落葉樹が多く存在している地域は、日本など東アジアの沿岸部やヨーロッパの一部、北アメリカの東部に限られてきますので、紅葉を「楽しむ」となると、更に地域は限られてきます。

その中でも特に落葉広葉樹の種類が多いのが日本です。

メープルの葉の国旗で有名なカナダで13種類、欧州でも13種類のところ、日本は26種類もの落葉広葉樹が生育しています。

外国の紅葉は樹木の種類が少ない分、色彩の豊富さに欠け、同じ紅葉でも樹木の種類が豊富な日本の紅葉の方が、きれいに見えると言われているのです。

かつて地球は長い歴史の中で何回も氷河期を繰り返し、大陸の落葉広葉樹は氷河によって死滅してしまい、種類を大きく減らしてしまいました。

ですが、日本列島には黒潮という暖流が流れてきていて、氷河期さえも木々は絶滅しなかったという背景があるのです。これが日本と言う狭い国土のなかでも色とりどりの紅葉を見せる落葉広葉樹が存在する理由なのです。

 

毎年毎年、私達を楽しませてくれる色彩豊かな紅葉。そのどれもが厳しい環境を耐え抜き、悠久の昔から存在してきたものだと知ることで、去年よりもずっと紅葉が綺麗に見えそうです。

是非今度の週末にでも、秋を探しに出掛けてみてはいかがでしょうか。

 

紅葉3.jpg

 

関連リンク

https://www.kagura.co.jp/kagu/materials/hard_maple.html

https://www.kagura.co.jp/kagu/materials/nara.html

https://www.kagura.co.jp/kagu/materials/keyaki.html

 

参考文献

鹿島出版会 小原二郎著書「木の文化」


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