針葉樹と広葉樹の違いを知る
2019.10.27
針葉樹と広葉樹は「葉のかたち」が違う
針葉樹と広葉樹の違いを一言で言い表せますか?
「知っていますよ!」
「葉っぱの形が針みたいに細いのが針葉樹で、平べったいのが広葉樹ですよね」
とすぐにお答えいただいたみなさん。
間違いではありませんが、大正解でもないのです。
「えっ?」と思われた方に質問です。
秋になって、神社の参道で銀杏を拾ったりした思い出はありますか?
あの銀杏を生み落とすイチョウは広葉樹でしょうか、針葉樹でしょうか?
答えは「針葉樹」なのです。
イチョウの葉を思い浮かべると、薄く平たいものですが、あの木は実は広葉樹ではないのです。
マツやスギ、ヒノキといった針葉樹を代表する樹種の葉はその名の通りの形状をしているのが分かります。
ですが、こうした例外もあり、葉の形は、針葉樹と広葉樹の特徴を現す一例であり、全てではないということなのです。
針葉樹と広葉樹の「樹」とは?
そもそも樹(木)とはなんだろう?というところから、紐解いていきましょう。
植物は「木部細胞」の発達度合いから分類すると「木本(もくほん)植物」と「草本(そうほん)植物」に大別できます。
このうち木本植物とは、茎において二次肥大成長によってたくさんの木部細胞を生産・蓄積して、その細胞壁が木化して強固になっていく植物のことで、いわゆる「樹(木)」です。
難しい専門用語を使ってしまいましたが、簡単に言うと年々成長によって幹が太くなるのが樹(木)なのです。
植物は、花を咲かす、花を持たないなどで分類する方法もあります。
体内に水分や栄養分の移動経路となる維管束を持っている植物を維管束植物と呼んでいて、そのような組織を持たない植物を区別しています。
維管束は、根から葉っぱへの水分輸送機能を担当する木部組織と、葉っぱから根への光合成物質などを輸送する機能を担当する師部(しぶ)組織からなっています。
木材として利用されるのは木部細胞ですので、木部組織の構成要素となっています。
まとめると、維管束植物に含まれる植物群の中に木本植物が含まれます。
裸子植物と被子植物
針葉樹と広葉樹を分類するのに維管束植物が関連します。
その維管束植物の中にはシダ植物と種子植物があります。
シダ植物はコケ植物と同じように胞子で繁殖を行い、種子植物と同じく維管束を持ちます。
先にお話ししたような二次肥大成長(幹が太くなる成長)が行われないので、多くが草本植物です。
となりますと、維管束植物で残った種子植物に針葉樹と広葉樹が含まれることになります。
種子植物には裸子植物と被子植物があります。
裸子植物は球果植物網、イチョウ網、グネツム網、ソテツ網の4つのグループに分類されています。
どれも二次肥大成長をする木本植物です。
しかし、木材として利用できるのは、球果植物網とイチョウ網だけで、球果植物網にスギ・マツ・トウヒなど、これらの樹は単幹性(根本から一本立ちする)の高木になるので、木材資源としても重要なものです。
通常、針葉樹として呼ばれるのは、球果植物網に属している植物を指していて、それらの樹々から得られた木材を針葉樹材と呼んでいます。
イチョウ網は1科1属1種だけで、構造が球果植物網に似ているので便宜的に針葉樹材として扱われているのです。
冒頭、じつはイチョウも針葉樹なのですよ!というところ、やはりイチョウは特別だったというのが、お分かりいただけたかと思います。
さて、続いて被子植物ですが、子葉が2枚あるモクレン網(双子葉植物)と子葉を1枚しかもたないユリ網(単子葉植物)の2つのグループに大きく分けることが出来ます。
ユリ網には約5万種を数えますが、多くは二次肥大成長をしない種です。
一方のモクレン網はユリ網の4倍にあたる約20万種の大きな植物群で、その中には草本植物も木本植物も混在しています。
広葉樹と呼ばれる樹木は、このモクレン網(双子葉植物)の中の木本植物のことを指しています。
広葉樹は種類が多く、そのそれぞれの樹に特徴があって、その特徴を活かした材として家具材や建築用材、楽器や船舶、食器やスキー板に野球のバット、生活道具などなど、活躍の場は私たちの身の回りにあふれています。
まとめると私たちが木材として主に活用しているのは、裸子植物門・球果植物網に属している植物から得られる針葉樹材と、被子植物門・モクレン網(双子葉植物)の中の木本植物から得られる広葉樹材となります。
適材適所
英語では針葉樹材をソフトウッド、広葉樹材をハードウッドと呼んでいて、葉の形は全く関係ありません。
その名前が表すように針葉樹は軽くて柔らかく、広葉樹は重く硬い素材という特徴があります。
もちろん、その中には例外がありますが、その特徴を活かして昔から適材適所で材料として使われてきました。
建物の柱や梁など構造材に針葉樹が多いのは、軽くて加工がしやすいという特徴が最適だからです。
逆に、硬くてキズが付きにくく強度があるので家具材には広葉樹が多く用いられます。
面白い例が住空間の床材です。
室内でも靴を履いて生活する欧米ではハードメープルなどキズの付きにくい硬い広葉樹が使われることが多く、素足で生活をする日本では床材に柔らかいスギなど針葉樹が使われることもありました。
家具蔵で使っている材
家具蔵で(一枚板などのワンオフ品以外で)基本的に扱う広葉樹8樹種は、全て硬くて丈夫な広葉樹です。
北米産のアメリカンブラックウォールナットやアメリカンブラックチェリー、アフリカからやってきたサペリ、国内でもみることのできるケヤキなど世界中の家具材における銘木を取り揃えています。
その基本8樹種の他にも、無垢材チェストモデルノの引出内部材には、調湿効果に優れたキリ材を使い、収納する衣類などを守る役割を果たしています。
また、ベッドフレームのスノコには40ミリの厚さを誇るシナ材を使って体重を支える強度がありながら調湿効果も発揮しています。
「あれ、家具蔵では針葉樹材は使ってないのかな?」
と思われた方も多いでしょう。
基本的に家具蔵の家具材は広葉樹材ですが、実は針葉樹材もあるところで活躍しているのです。
そこはどこかといいますと、タタミベットの畳の中に隠れていました。
タタミベッドモデルノに使われている畳の内部材には、ヒノキのチップが使われています。
冬の寒さが厳しい岐阜県東濃地区で育ったヒノキは、育つのに時間がかかります。
その分、丈夫で精油も多くなることで、調湿・断熱・防虫・森林浴効果を発揮して快適な睡眠をサポートしてくれます。
こうして、先人たちの知恵や教えを受け継ぎ、職人たちの研究と工夫によって、木の特性を最大限に発揮した家具づくりが、今も家具蔵では行っています。
そんな家具一つひとつ、色々な樹種を実際に手で触れてみるのはいかがでしょうか。
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