年輪に現れる木の生き様を知る
2020.4.23
年輪。
木にまつわる話をするとよく耳にする言葉ですね。
今回はこの「年輪」がそもそもどうやってできるのか、その過程をお話しします。
木の成長の仕方とは?
樹木が細胞を分裂させ、大きくなることに大きく関与している部分は樹皮と木部との境にある「形成層」です。
葉でつくられた養分は師部(しぶ)を通ってここに運ばれてきて、細胞を増えつづけさせる原動力になります。
細胞分裂が進むと形成層の外側には樹皮細胞を、内側には木部細胞を作ります。
つまり形成層は自分が増殖した内側の木部によって、外へ外へと押し出されながら、自分の外側にもまた樹皮細胞を増やして、生長を続けています。
その様子は例えばよく街中でも目にする、マツの幹をみるとよくわかります。
いわゆる大木・老木になると樹皮は厚く、亀甲形に割れています。
それは内側の木部が大きく生長するために、もはや昔のままでは小さすぎて、収まらずはち切れて、それが樹皮の割れ目になって現れているのです。
老松ほど亀甲形の割れ目が多いのはそのためです。
このように、木の幹は年輪の層を一層ずつ外側に積み重ねながら成長していきます。
因みに、そのとき、枝は当然その中に巻き込まれることになりますが、それが「節」と呼ばれる部分です。
木の幹はお菓子のバウムクーヘンのような層状の構造になっています。
そのため、幹を樹心と平行の断面でたち割ると、板の表面にはたけのこ状の木目があらわれます。
老木になると年輪の幅は狭くなり、幹の断面も正円ではなくなります。
それを平面の板として挽くため、板面には複雑な木目が現れます。
年輪が語る「木の歴史」
木にはその一本一本に固有の歴史があります。
それは、人間ひとりひとりが違った人生・歴史を持っているのと似ています。
また、木の生き様は年輪を調べれば、ある程度まで想像できると言われています。
例えば、有名な法隆寺の五重塔。
1934年から始まった修復で由緒正しい材がサンプルになることで、その年輪を調べれば、法隆寺の創建の年代を推定するうえでなんらかの資料が得られるのではないかと考えられました。
今では法隆寺が再建されたことを裏付けるいくつかの資料が出てきているので、それほど重要な意味はなくなりましたが、なにせ戦前の話。
当時は再建か非再建かが大きな関心の的だったので、この調査が行われたようです。
調査の結果、まず産地については、大杉谷のヒノキに近い材質のものであることが判明しました。
樹齢の計算方法とは
樹齢においては、円盤の年輪数は344ありました。
心柱の樹齢は、「“m”+344+“n”年」という計算式で求めます。
“m”はこの木が生えてから円盤の中心の第一番目の年輪に生長するまでに要した年数、“n”は削り落とされた外側の辺材部分の年輪数です。
“m”については「30?50年」という数字が出ました。
次に“n”については、50~60年と推定されました。
そのため、樹齢は(30?50)+344+(50?60)、すなわち「424~454年」という結論が得られました。
次は年輪の幅を観察し、心柱材の生長の経過を調べました。
年輪の幅から分かることは、最大生長の時期が、「“m”年付近および“m+100年“付近」と二つあること、さらにそのピークの直前に、いずれも連続して顕著な重年輪(一年に年輪が二つできたもの)が認められるということでした。
このことから導き出される結論はこの通りです。
「通常、“m”年から“m+100年”くらいまでの間は、生長が一番盛んであってよいはずの時期であるはずだ。
それが低下して谷間をえがいているというのは、なにか異常があったと考えられる。
おそらく“m+50” 年までは、この樹のまわりに大木が競合して立っていたが、その頃になって隣接木よりも背が伸びたために生長がよくなって、上昇カーブを描いた可能性が高い。
次に“m+100年”付近で急激な生長を示すのは、環境に変化があったためと考えられる。
しかし、この時期に重年輪があらわれていることから、陽当たりを遮っていた周囲の大木が、風倒かあるいはその他の原因によって、急激になくなったために生長が促進されたようだ。」
年輪を見ることでここまで木の生長過程と生きざまを知ることが出来るのです。
人間よりも遥か長い年月を生き抜いてきた木には様々なドラマがあり、年輪を見ることで、そのドラマを少しだけですが垣間見ることが出来ます。
家具蔵の無垢材テーブルや無垢材チェア、その他の家具も木端を見るといわゆる年輪の部分が露わになり、その板目や杢は本当に多種多様な表情を描いています。
身近にある木の家具や道具の年輪を見て木の生き様に思いを馳せる。
そのことでその「モノ」への愛着もより湧いてくるのではないでしょうか。
もし、木の成長の秘密や裏話がもっと知りたい方がいらしたら、是非家具蔵へお越しください。
きっと木の「深イイ話」を聞くことが出来るはずです。
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