木によって違う「漢字の成り立ち」
2018.3.27
我々日本人が日常に使う日本語。
日本語は漢字を駆使するものであり、その成り立ちにそれぞれ意味や逸話があることは皆さんご存知でしょう。
今回は家具蔵で定番として扱いのある木の漢字の成り立ちについてご紹介します。
家具蔵で扱う定番7種の漢字の成り立ち
■桜(サクラ)
語源は「咲く」という動詞から来ているようで、花が咲く木は多数ありますが、この木がサクラと言われるのは、それほど、日本人になじみの深い木という事なのでしょう。
桜は「櫻」の省略形です。
木へんと「嬰」を分けてみましょう。
「嬰」は(みどりご)、「生まれたばかりの赤ん坊」のことを意味し、「みどりご」「緑児・嬰児」、新芽や若葉のように生命力に溢れている若々しい児のことを差すようです。
生命力には満ち溢れていますが、小さく、大切に、多くの手を掛けてあげなければいけない存在です。
つまりは「守るべきもの」である、とすることからこのような表現になったようです。
「嬰」に「女」が付くのは、女性もまた大切にすべき存在であり、子供を産み、育てるからなのでしょう。
「貝」には宝や装飾品や財の意味があるようです。
縄文や弥生時代の遺跡を想像すればなんとなく納得できます。
赤ん坊は女性から生まれる財産である。
木へんと合わせて意味を考えれば「守るべき木」となるようです。
木材としても薄桃色から赤く濃い色合いに劇的に変化する、家具蔵でもたいへん人気の高い樹種です。
■胡桃(クルミ)
胡桃はお菓子やおつまみで食べることも多く、漢字で書くと胡の桃と書きます。
「胡」とは、中国北方にあった北狄(ほくてき)の国「胡国」のこと。
つまり胡国からやってきた桃のような植物という意味です。
同じように胡国から入って来たものに胡瓜(きゅうり)、胡椒(こしょう)、胡麻(ごま)などがあります。
「でも、クルミとモモの形って似ていたっけ?」
そう思った方はある意味正解です。
普段、私たちが目にする胡桃は、果肉の中にある硬殻です。
木から落ちたばかりの胡桃は緑の果肉をまとっていて、その胡桃の実は桃に似ています。
胡桃の硬殻を覆う青い果肉は、桃の果実に相当します。
胡桃の硬殻は、桃の芯にある硬い種に相当します。
実はクルミはモモとよく似た果実なのです。
クルミは家具蔵ではその一種、アメリカンブラックウォールナットが定番的な人気を誇るほか、オニグルミなどのテーブル天板もまた違った味わいがあります。
■楢(ナラ)
ブナ科の落葉高木。
木材は建材や家具などに、樹皮は染料に、果実(ドングリ)は食べ物にする、余すことなく使える非常に有用な樹種です。
家具蔵でもナチュラルな質感や雰囲気を空間に求める方や、その手触り感などに魅力を感じてこの木を選ぶ方も多くいらっしゃいます。
「叶う木、病が治る木、神が宿る木」とも言われています。
酋(シュウ)の部分はお酒を入れた器から、酒気が細く長く伸び出る様子をさします。
現在でもウィスキーを貯蔵する樽はナラ材が良いとされますが、これは多孔質である木材の中でナラ材がチロースという独自の成分を持ち、水漏れを防ぐためです。
科学的根拠の無い中でも最良の材を選んでいたという昔の人々の生活の知恵を垣間見ることのできるお話です。
■櫤(タモ)(※木へんに箭)
タモは、モクセイ科の広葉樹であり、主な原産国は日本・中国・ロシアです。
その直線状の細やかな木目の美しさが「糸柾」とも呼ばれ、涼やかで流れるような表情が人気を誇る一因です。
タモは、反発力が強い木材であり、力を加えてもたわむ特性があり、折れにくい木材でもあります。
この「たわむ」という語が変化してタモになったとする説もあります。
また、加工もしやすいため、家具だけでなくかつては野球のバットやボートのオールなど多くのスポーツ用品の材料や楽器としても使用されていました。
箭は矢という意味です。
タモの木は折れにくい性質から弓矢などにも使われていたようで、そこから、この漢字が成り立ったのだと考えられています。
■楓(カエデ)
家具蔵ではカエデの仲間であるハードメープルを定番として扱っており、真珠とも評される滑らかで光沢感のある木肌が、独特の爽やかさ・清潔感を感じさせてくれます。
漢字の楓は、かつてカツラと読まれていて別の植物をさす字でした。
元々、楓は中国原産の落葉高木フウを表す字で、これは現在、日本でカエデと呼ばれているものとは別の木です。
フウとカエデは葉が似ていてともに紅葉する樹なので、漢字が輸入された時に混同してしまったのです。
ですので、漢字の成り立ちは、中国のフウをあらわす成り立ちになりますが、風を媒介にして種子が飛ぶことから木に風と書くようになりました。
■欅(ケヤキ)
勇壮でホウキを逆さにしたような立ち姿と、材にした時の大きく鮮やかな木目の表情が特徴のケヤキ。
古語に「けやけし」という言葉があり、これは「普通とは異なる」「際立っている」「素晴らしい」という意味があります。
まさにこの「けやけし」表情のとりこになる方は家具蔵のお客様にも大勢いらっしゃるのですが、ケヤキは太古より日本建築や家屋はもちろん、国家的に重要な神社仏閣などの建築にも使用された、大変優れた建材です。
堅くて摩耗に強いので、家具・建具等にも重宝されました。
木目が美しく、磨き上げると見事な光沢を生じ、立ち木としても様々な色合いに紅葉することで秋の紅葉の時期には目の保養としても好まれた木です。
「擧」は「挙」の旧字です。
両手を揃えて頭上に持ち上げるという意味があります。両手をいっぱいに広く突き上げたような形に枝が伸びる木を示しています。
ちなみに、中国では欅と書いてクルミ科の全く異なる樹木を指します。
漢字の成り立ちを知ることで、家具の樹種選びがまた違った角度から楽しくなることもあります。
また、お使いの家具に今よりもっと愛着が持てるかも知れません。
家具蔵各店には家具はもちろん、木に対する様々な知識を持ったスタッフが多数在籍しています。
もしも家具選びで迷ったら、是非家具蔵にお越しください。
参考文献
日東書院本社 岡部 誠「木の名前―由来がわかる花木・庭木・街路樹445種」
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