世界の銘木を知る「ウォールナット」編
2022.1.17
世界に数万ともいわれる樹木の数々。
そのなかでも「銘木」と呼ばれ、世界的に高い評価を受ける樹種があります。
今回はそのなかでも北米大陸きっての人気樹種でもあり、家具蔵でも多くの方にご愛用頂いている「アメリカンブラックウォールナット」にスポットを当て、様々な角度からご紹介していきましょう。
アメリカンブラックウォールナットとは?こんな木です
いわゆる「クルミ」の木ですが、細かなデータは以下のようになります。
・学名:
Juglans nigra(ユグランス ニグラ)
・木理:
精
・気乾比重:
0.55
・原産地:
アメリカ東部・中部及びカナダのオンタリオ州など
・科目:
クルミ科クルミ属・落葉広葉樹・散孔材~半環孔材
・科目の仲間:
クルミ科には9属約60種、ブラックウォールナット・ペルシャウォールナット・ヒッコリー・オニグルミ・ピーカン・バターナットなどがあり、ヨーロッパ南東部から東南アジア及び日本、南北アメリカにかけて広く分布しています。
その総数約200種類の頂点であり、北半球のあらゆる樹木の中でも不動の存在として君臨しているのが、銘木アメリカンブラックウォールナットです。
・木目、色目について:
アメリカンブラックウォールナット材の木目はまっすぐで美しい木目です。
もともと節目や白太の多い木材の為、材料ごとの色の濃淡の違いが特に目立ちやすい木材です。
辺材と心材の相接する部分は明瞭で、辺材は灰白色、心材は濃い茶色、黒紫色、赤紫色、紫色を帯びた灰色があります。
縞を持つことが多く、紫色を帯びた多彩な色味のグラデーションの模様は豊かな表情で味わいの深さが特徴です。
・良く出る杢目:
1.ピンノット:小枝が生えていた箇所が、幹の成長に飲み込まれた跡。
2.縮み杢:枝振りの良い樹等に良くあらわれる上からの荷重により細胞がさざなみ立って見える杢目。
3.節影:枝が伸びる力が加わって出来る杢。
木目の流れに垂直に入る事も。
アメリカンブラックウォールナットの特徴
家具、建材に使用される「アメリカンブラックウォールナット」といえば、クルミ科の植物で、家具や床材の他、楽器の素材としても使われています。
「アメリカンブラックウォールナット」の特徴は、"耐衝撃性に強い"、"木肌が美しい"、"狂いが少ない"、"加工性や接着性に優れている"点が挙げられます。
その為、高級家具や工芸品に使用される特徴を数多く使用されています。
適度の油分を含んでいるので、ツヤもあり、人が触れて使い込んでいくことで味のある風合いになっていき経年変化を楽しむことができる素材です。
このアメリカンブラックウォールナットいう材料は、例えばオークなどに比べ樹径が小さく、表面に近いところは白い為、濃い茶色の部分が限られている事から高級な家具工芸材として使用されています。
かつては適度な粘りからくる耐久性の高さや、軽めで狂いの少ない硬質感という利点を最大に活かし、飛行機のプロペラ等にも使用されていました。
アメリカンブラックウォールナットよもやま話
大きな枝っぷりで見ているだけで安心感が湧いてくるアメリカンブラックウォールナット。
世界のクルミの木の流れは、中央アジアが原産で世界に渡ったとされていますが、ウォールナットは生粋のアメリカ原産のアメリカ育ち。
改良や挿し木の無い純粋なクルミの木なのです。
そのクルミの実は、太古のネイティヴ・アメリカンの人々やリスなどの小動物にとっても貴重な栄養分であり、動物の生命にまで直結してきた歴史があります。
その恩恵に対する敬意として、アメリカでは古くから、結婚式の際に子孫繁栄の意味を込めてクルミを撒く習慣がある事を見ても、アメリカンブラックウォールナットと人の関わり合いが重要であった事が伺われます。
古代ローマの博物学者プリニウスは、他の木とは一線を画すクルミの木の生え方について研究した人物です。
彼はクルミの木の周囲にあまり大きな木が育たないことに言及し、それは長い間、ウォールナットの神秘性とともに語られたのち、現代科学において「アレロパシー」とよばれるはたらきが化学物質を出して、他の生物に影響を与える作用が関係していることがわかりました。
クルミの果皮にはユグロンという物質があり、その物質が地面に垂れてくると他の植物の生長が抑制される、という現象です。
これはクルミ属共通の物質で、日本でもオニグルミの樹冠下には他の木が生えていない事を見た方も多いのではないでしょうか。
厳しい環境で自生するためには、木も様々な進化や方法を見い出していかないと淘汰される事をアメリカンブラックウォールナットは知っていたのでしょう。
美しいものは妖しい、妖しいものは美しいとよく言ったものですが、その艶やか且つ見事な立ち姿を維持するのにはこのような生命の不思議と秘密があるのです。
家具材などになっても1660年頃~1720年頃のヨーロッパのロココ文化の中心にクルミの家具が一時代を築いてから、アメリカにおいて権力者が挙ってウォールナットを使い続けてきたという事は、やはり彼らもその魔力に取り憑かれたのかも知れません。
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