木の家具を使うことは地球を守ること
2019.3.1
私たち家具蔵は樹齢80年から150年、時としてそれをはるかに超える高樹齢の樹から材料を採り、無垢材家具として生まれ変わらせることを行っています。
だからこそ、時にはこんな質問をいただくことがあります。
「こんな高樹齢の大木を伐ってしまって、地球温暖化の原因になったりしませんか?」
そして、いつもこうお答えしています。
「高樹齢の樹からつくった無垢材家具を愛着を持って長くお使いいただくことも地球温暖化に歯止めをかけることにもつながるのですよ」
もしかしたら「?」が頭に浮かんだ人もいるかもしれません。
そこで、今回は無垢材家具のふるさとでもある「森と環境」について考えてみたいと思います。
森のはたらき
たくさんの樹木からなる森は、人の生活にとって無くてはならない様々な役割を果たしてくれています。
そのなかには、そこから採れる木材が家や家具など様々なものにかたちを変えて役に立っている、ということもありますが、昔から私たちが受けていた森の恵み。
それは空気です。
私たち人間だけでなく、すべての動物は酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出して生きています。
一方で植物は光合成の働きによって二酸化炭素を吸収して酸素を出しています。
さらに空気中の有害物質を含む塵やごみも吸着して徐々に分解してくれるなど、きれいな空気を作り出してくれているのがまさに森であり、樹なのです。
森は私たちを災害から守り、きれいな水をつくるダムでもある
森は巨大なダムのような役割もあります。
森に降り注いだ雨はすぐに川に流れ込むわけではありません。
雨は木の枝や葉、木陰に生きる植物、土の上に積もった落ち葉、様々な経路をたどり土の中へ浸透し、ゆっくりと時間をかけて川に流れ着きます。
この木の保水力と地中に深く張り巡らされた木の根が表面の土や石を抱えこみます。
その恩恵で土砂崩れが起きにくくなったり、雪山の雪崩を抑えてくれたりするのです。
そして森の中を通る水は、落ち葉などによって出来る腐葉土と土中に住む微生物の働きでミネラルを含むきれいで生命の源となる水に生まれ変わります。
森は天然のクーラー
木々は、地中から水を吸い上げ、葉から大気中に蒸散させます。
この時の気化熱によって大気中の熱を奪う働きがあります。
また大きく伸ばした枝葉によって直射日光を遮ってくれるので、私たちに快適な気候を与えてくれるのです。
森は生命の住みか
森には、様々な種類の植物が育ち動物に住む場所と食物を提供してくれます。
木の実や茸など、私たち人間にも多くの恵みを与えてくれています。
ここまで挙げてきたいわゆる「森のはたらき」は代表的なところを抜き出したに過ぎません。
しかし、これだけでも私たちが森から様々な恩恵を受けていることの一端が見えてきます。
地球温暖化問題
地球は過去1400年でもっとも暖かくなっています。
今まさに有史上、誰も経験したことのない気候へと変わりつつあるのです。
気温、海水温の上昇により、世界の平均気温は100年あたりで0.73℃の割合で上昇していて、日本の平均気温は同じく1.19℃の割合で上昇しています。
地球温暖化の影響は、平均気温の上昇だけではありません。
異常高温や干ばつ、大雨、海面の上昇などによる農作物への影響や動植物の生態系の変化、そして私たちの生活にまで影響が現れ、それは今後さらに深刻になる恐れがあります。
この地球温暖化の原因は、産業革命以降、石炭・石油など化石燃料の大量使用や森林の減少などにより温室効果ガスの濃度が急激に増加したからと考えられています。
ここで注目されてきたのが、森林面積の減少です。
世界の森林面積は約40.3億ヘクタールで全陸地面積の約31%を占めているのですが、毎年520万ヘクタール減少し、その面積は今も減り続けています。
特にアフリカ、南アメリカなどの熱帯の森林を中心に減少面積が増加しています。
時折ニュースで流れる自然発火による森林火災。
これも森林減少の原因のひとつですが、自然発火による森林火災が急増している理由は農地や牧草地への転用や薪の過剰採取が原因です。
熱帯地域の国々は増え続ける人口の食糧の確保は、海外からの食糧輸入ないし自国生産に委ねられます。
ですが多くの国は資金的に輸入の継続は難しく、国内での生産量を増やすことになります。
農地転用に際し、多く行われているのが焼畑です。
生態系と共存する伝統的焼き畑を行う部族もある一方で、人口増加によって農村に居場所がなくなってしまった移民などは自然のサイクルや生態系を崩してしまう「非伝統的焼畑」によって農地を得ようとします。
このことが急速に森林消失に繋がっていると考えられています。
森や木の二酸化炭素を酸素に変える力
森はどのくらいの二酸化炭素を吸収して、どれくらい酸素を放出しているのでしょうか。
樹は生長する過程で、大気中の二酸化炭素と地中から吸い上げた水から太陽光(エネルギー)の作用で木質を作る、その結果として酸素を出します。
その量は1トンの木質を作るのに1.6トンの二酸化炭素を取り込むのと同時に1.2トンの酸素を放出しています。
しかし、人の手がまったく入っていない原生林では、樹が枯れると木質は微生物の力によって分解され、酸素を取り込んで再び大気中に二酸化炭素となって戻ってしまいます。
人の手が入っていない天然で成熟した森林(=原生林)では、樹の生長によって吸収する二酸化炭素の量と枯れた樹の分解によって生まれる二酸化炭素の量はほぼ同じになり、大気中の二酸化炭素を酸素に変えるまでの作用は無いと言えるのです。
光合成による二酸化炭素の吸収量と酸素の排出量の差(炭素を木質に固定する量)は樹齢とともに変化するもので、一定の樹齢まで増加した後は、樹の成熟に伴って減少してしまいます。
また、混み合った森林から弱っている樹を抜き伐りすることで、森林の中を明るく保ち成長力の高い若い樹を育てることも大切なことです。
原生林、人の手が入っていないと聞くと一見、聞こえは良いですが実は人の手による調整や適度な伐採がある方がむしろ木と人の共生、という意味では良いことなのです。
森の樹は、木(木材)として、人間が使うことで初めて炭素を固定することが可能になります。
ですから森の中で高樹齢の樹が枯れたり、腐ったりする前に森から運び出して、木材として使うことが大切です。
さらに木材として家具となった後でも、壊されたり捨てられたりして燃やされてしまったら再び大気中に二酸化炭素となって戻ってしまいます。
当然そこには新しいものをつくるために過度な伐採もあるでしょう。
家具もいかに長い間使い続けることが出来るか、ということが非常に重要なのです。
高樹齢の樹を、長期間乾燥したうえで職人の手によって丁寧に作る無垢材家具。
長期間の使用にも耐えることができ、使うほどに愛着が増していくことでより大切にされるものになるものです。
メンテナンスも勿論可能。
そうしてそこにはひとつの物語と歴史が生まれ、一方では自然環境の保護にも一役買っていることになります。
世代を超えて長く使い継がれることで、その間ずっと家具の中に炭素を固定しておくことが出来るのです。
それが
「高樹齢の樹も含めて無垢材家具を愛着を持って長くお使いいただくことが、地球温暖化に歯止めをかけることにもつながるのです」
という答えになるのです。
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