サペリ材を空間に取り入れる
2022.1.17
サペリ材。
耳馴染みが薄いワードかもしれません。
しかし、今建材や家具の世界で赤丸急上昇中の注目の銘木なのです。
今回はその「サペリ」の特徴と、それを使用したコーディネートの例をお話していきましょう。
サペリとは
遠く離れた灼熱の大地、アフリカ大陸。
そこはサバンナに代表される草原地帯だけでなく、数多くの大径木が存在し、多様な生き物が生息する動物界同様に、樹木をはじめとした植物の世界にも多様なものが存在します。
およそ北半球では見ることのできない色合いを持ったものや、とてつもない巨木などある中で、このサペリも樹高40m~60m、直径1~1.5mという巨大さを誇ります。
おもな産地はコートジボアールからカメルーン、さらにザイールを経てウガンダまで西アフリカ全域。
かつてフランスが統治していた国が多くあり、その影響からかヨーロッパでは以前より楽器の部材や装飾品としても高い人気を誇ります。
その理由は大きく分けて2つ。
成長の過程で生まれる、サペリの代表的な木目のひとつである「リボン杢」は順目と逆目が交互に縦模様となって現れる現象ですが、その通直で美しい表情は光に当たることで、まるで陽光が移る水面のように美しくきらめきます。
その装飾性が人々の心をとらえてやみません。
そしてもう1つは世界三大銘木の一つであるマホガニーとよく似た表情を持っていること。
マホガニーはキューバやホンジュラスといった中米の銘木であり、たいへん美しい表情を持ちます。
ですが、これらは世界的に見てもすでに「ゼロ」といっても過言ではないほど枯渇しており、幻の銘木とまで言われるほどです。
このマホガニーとよく似た色合い、同じようなリボン杢も現れること、加えて乾燥後の安定性、魅力的な杢や色調が世界中を魅了してやまない樹としての立場を確立させました。
年月と共に赤褐色の色合いが徐々に濃くなりながら、茶色味を増していき落ち着きを放つ様子は、まるで年齢を重ねて深みを増す人の顔のようでもあります。
遠くアフリカの情景に思いを馳せながら、長く愛することのできる銘木といえます。
サペリを住まいに取り入れる
このサペリ、あまり聞きなれないがゆえに自宅に取り入れるとしてもいまいちピンとこない…。
そんな人もいるかもしれません。
基本的に家具蔵のように無着色でつくる無垢材家具には、色によるコーディネートのルールはありません。
それはあくまで自然の色味であり、自然の色味はいくつもの色素が相まって「そのように見えている」だけであって、実際は「何色」と定義するものが難しいものだからです。
皆さんもよくご存じの「ブラックウォールナット」。
これは黒、とも濃茶、とも言えますよね。
しかしこれは色相学的には「紫」となります。
つまり、確実に「○○は■■色」という定義は無いのです。
増して、無着色の無垢材家具は経年で色合いを変えていきます。
こうなると「これとこれは相性が良い、良くない」というものではなくなりますから、そこにカラーコーディネート的なルールは無いのです。
とはいえ、いくつかのセオリーは存在します。
今回はそのセオリーを活かしながら魅力の銘木サペリの取り入れ方をお話ししましょう。
床材の色は濃い?薄い?
多くの方が家具の素材を決める際に、その見え方を決めるものとして「床の色合い」を基準にします。
たしかに明るい床の色と逆に落ち着いた床の色とでは空間の雰囲気が異なります。
では、サペリは明るい床、落ち着いた色合いの床、どちらに合うでしょうか。
正解は「どちらにも合う」です。
明るい色合いの床にいわゆる「白木」の素材を合わせるのは王道で、それだけでナチュラルでさわやかな空間が完成します。
一方で、落ち着いた色合いの床材には黒や濃茶の家具を合わせることでテイストの統一感と空間全体の大人感を生み出します。
これが定石ですが、発想を逆にすることで生まれるものがあります。
明るい床材にこのサペリを合わせることで自然と空間に「色のメリハリ」が生まれます。
そのことで空間全体に奥行き感が生まれ、実際よりも広く見せてくれる効果があるのです。
反対に落ち着いた色合いの床にこのサペリを合わせた場合、ダイニング部分がやや明るくなることで自慢のテーブルが際立ちます。
食事をするところは明るくしたいな、と考えながらも、でも落ち着いた内装に明るい素材はな…、と考えている方(もちろん、その組み合わせも大いに有りです)にはちょうど良い選択肢になるのではないでしょうか。
チェアは同じ素材の方が良い?
これも私たち家具蔵で一点ものの天板を選んだ方からよく伺う質問です。
これには
「違っていても良い。しかしテーブルとチェアの素材を変えるなら、テーブルの色合いよりも濃い色合いのものを選ぶ方が見栄えしやすい」
とお答えします。
ダイニングテーブルとダイニングチェアを同じ木材で揃えるのは定石といえます。
実際に多くの方がそうされています。
しかし、そこで例えばサペリのテーブルにウォールナットのチェアを合わせたらどうでしょうか。
大きな面積を占めるテーブルよりも濃い色合いのものが周囲を固めることで「差し色」的な存在になり、お互いが引き立つのです。
ちなみにサペリは経年で色がより濃くなっていきますが、ウォールナットは明るく変わっていきます。
そうすると、不思議と最初は違っていた色合いも徐々に馴染んでくるのも面白いところです。
また、より明るめの色合いがある素材、例えばチェリー材のテーブルにサペリのチェアを合わせるのもの同じような効果が期待できます。
この場合、どちらも色合いが濃くなっていきますのでこのコントラストは変わりません。
しかし、このテクニックを行うことで内装や他の家具との親和性も期待でき、そこから空間全体の統一感へと波及させることもできるのです。
あえてテーブルとチェアの素材を変えてみる、これはサペリに限らず使えるテクニックです。
人々を魅了し続ける豊かな煌めきを秘めた木目、どのような空間に配置してもしっくりと調和する、無垢材ならではの美しさ・豊かさを感じさせてくれるサペリ。
その色合いの変化を含め、日々の暮らしの中で飽きることなく一緒に過ごすことのできるテーブル天板やチェアは家具蔵各店で常時ご覧いただけます。
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