椅子と「座る」という動作の関係性
2021.9.11
「立つ」より「座る」ことの方が楽なのは人間の性。
例えば、電車に乗った時に座りたいと思ったことがある方はどれくらいいるでしょう。
おそらく大半の方は座りたいと思っているはずです。
また、お年寄りや妊婦さん、体の不自由な方のための「優先席」は、立っているより座っていた方が楽で、動く電車の中で安全のために設けられています。
つまり、椅子は腰をかけることによって、立っているよりは楽になるという意味合いが強いものと言えるのです。
今回のコラムでは、その「座る」ために必要な「椅子」についてご紹介していきましょう。
3つの姿勢=「立つ姿勢」「座る姿勢」「寝る姿勢」
日常生活の中で、「姿勢」を大きく分けると「立つ姿勢」「座る姿勢」「寝る姿勢」の3つに分けられます。
この3つで一番楽なのはもちろん「寝る姿勢」で、次に「座る姿勢」、一番つらいのが「立つ姿勢」誰もが共感でき、つらい姿勢より楽な姿勢の方が良いというのは当たり前のことです。
そして、現代社会において「座る」といえば大半が椅子であり、学校や仕事場は勿論のこと、家庭でもほとんどが椅子の生活に変わってきています。
昔のように畳の上に座るということもありますが、それは生活の中でみると、ほんの一瞬の時間に過ぎず、現在私たちは人生の3分の1が「椅子の生活」と言われています。
その意味でも椅子は私たちに欠くことの出来ない非常に重要なものであることが分かってきます。
人生の3分の1以上の時間を過ごす椅子は、その座り心地次第で健康にも大きな影響を与えるため、人の体に如何にフィットするかが大きなポイントとなってきます。
椅子とは、腰をかけるため、そして座るための専門の道具です。
椅子とされる不可欠な構造は、座るための「座面」、それを支える「脚」があり、更に多くは「背もたれ」がつき、それらが一体となって構成されているもののことです。
椅子は、まず人の体のお尻と密着し、それから背中、肘から下の腕とも密着していきます。
この密着面積の大きさが体をより楽な気分にさせていくのです。
椅子の持つ「3つの顔」
椅子に座ると「ほっ」とするような、楽になったような感じがします。
それは体を預けられていられる面積が大きいためと思われていますが、実は人間工学的な観点からすれば、とくに上体に関しては、座っているより立っている方が自然なのです。
なぜなら、立っていた方が、人間の体を支える背骨が基本形のS字形になり、内蔵のバランスがとれるからです。
その反面、座ると背骨のS字形が崩れ、無理な姿勢となり腹部が圧迫されてしまいます。
つまり、座って楽になるのは足だけということになります。
しかし、それでも座って楽な気分になるのは、足が体の全体の3分の2~1近くの長さを占め、その負担が大幅に軽減されるからです。
そのため、人間工学的に「理想の椅子」とされるのは、「体への無理をどれだけ0に近づけたのか」ということになります。
例えば、落ち着く椅子の善し悪しの基本は、「腰椎の付近で軽く支えられながら背筋の伸びる感じのもの」とされており、悪い椅子の基本は「猫背になる椅子」ということとされています。
また、椅子には「3つの顔」があると言われており、この顔とは「役割」のこと指します。
美しさや権威などを見せる「形態的役割」と「機能的役割」、そして座ることの「肉体補助の役割」です。
「形態的役割」の端的な例は裁判官の椅子が挙げられ、権威が強く求められるため、快適性はある程度犠牲になり、階級的に区別された椅子になります。
その他にも、ホテルのロビーの椅子や喫茶店、ブティックなど洒落た店舗に置かれている椅子も、デザインや重厚さなどが重視されたものが多いようです。
「機能的役割」というのは、形の美しさもさることながら、機能が求められるもので、その代表的なものがオフィスの椅子などです。
では最後の、「肉体補助の役割」ですが、ここで重要なのは「座りやすさ」です。
高すぎたり、低すぎたり、深すぎたりするのは問題であり、良い椅子というのは、このための「ツボ」があるとされています。
これは必ずしも豪華であるとか、美しいという点ではなく、「ツボ」というのは、前に記したように「腰椎のあたりで軽く支え、背筋が伸びる感じのもの」になります。
椅子を選ぶことの重要性
私たちの体の脊椎は、身体を重力から支える役割を持っています。
人の脊椎骨は、頭蓋骨の後頭骨にある大後頭孔から骨盤までのことを言い、7つの頚椎と、12の胸椎、5つの腰椎、5つの仙椎、そして3から6つの尾椎の約30個の椎骨から形成されています。
骨と骨とは間接で繋がっており、その間にはクッションの役割をする椎間板が存在します。
成長するに従って、脊椎は曲がり始め、S字状のカーブを描くようになり、これが二足歩行に必要なバランスをとるために必要な形となってくるのです。
このような背骨の構成からして、もし、椅子への座り方が悪かったりすると、椎間板が椎体によって圧迫され腰痛になってしまったり、圧迫が続けば椎間板は退化して平らになり、その中にある髄核(椎体と椎体の間でゴムマリのような働きをしている粘着性のある物質)が出てしまい、いわゆる椎間板ヘルニアになってしまいます。
つまり私たちが日常、ほとんど気にせずに行っている「座る」ということ、もっと具体的にいうと「座った姿勢」というのは、非常に気を使わなければならいとても重要なことなのです。
人間は、人それぞれ身長も体型も異なるため、ただ背もたれがS字のカーブを描いていれば良い訳でなく、大事なのは「自分自身の体型に合う椅子」そしてその椅子がどれだけ「体への無理を無くすことができているか」が重要となってきます。
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