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日本人と木の文化について その2

2020.1.11

 

日本の森林は育成林を含め50%以上が針葉樹であり、「日本は針葉樹の文化である」と言われる事が多々あります。

針葉樹とは読んで字の如く葉が針状の形をした木のことで、松や杉、檜など、私たちに馴染み深い木が多くあります。

針葉樹はソフトウッドとも呼ばれ、堅くて重い広葉樹に比べて柔らかく軽いのが特徴です。

確かに日本に見られる建造物には、針葉樹が使われていることが多くありますが、そのような言い切りは果たして正しいのでしょうか。

広葉樹もまた、昔から私たちに身近な存在として使われている事実があります。

 

広葉樹と日本人との関わり


例えば、古事記には今日に有用樹種とされる樹も記載されており、針葉樹も含むものの、そこに記されている用途と実際に縄文時代の遺跡からの出土品の樹種と用途は、ほぼ一致するそうです。

弓はイチイガシ、ヤチダモ、トネリコ、石斧の柄はユズリハ、ヤチダモ、食事用の椀類はトチノキ、ケヤキなど、お椀に限っては現代にも通じる使い方です。

こんな事実を知ると、一言に針葉樹文化ではなく、日本は広葉樹も含めた木の文化だと感じるのです。

木の歴史や木工史にまつわる情報を個人的に整理すると、仏像やお寺など現代に残りやすかった歴史を伝えるものが成長が早く加工しやすい針葉樹であったのに対し、広葉樹は生活の中でその強度を生かし、道具として身近にあった存在だったと言えるでしょう。

そしてはるか昔から、古来の日本人が「適材適所」という言葉通りに木材を使い分ける事が出来た点も驚きです。

古事記のスサノオノミコトの説話では

「杉・楠は船に、檜は宮殿に、槇は棺に使え」

と用途まで教えたとされています。

古墳時代(285~562年)出土の舟はたしかに楠であり、杉の舟の記録も西暦0~100年あたりの垂仁天皇の時代の記録に残っているそうです。

檜は宮殿、と云えば、伊勢神宮(紀元前10年頃?)の例が挙げられます。

また、槇については近畿地方の前方後円墳から出土する木棺は、ほとんどが高野槇で作られているそうです。

高野槇は別段美しい木目があるという訳ではなく、芳香がいいという訳でもありませんが、何よりも水に強く腐りにくいという特質を持っている樹です。

古代には棺材として朝鮮まで輸出されていた事もわかっており、近代ではプラスチックに変わるまで、関西では主に風呂桶として使われていました。

この事は、はるか昔から人々がそれぞれの樹の特性・長所を理解し適材適所に使用していたという事実を現代へ伝えている一つの例です。

 

 

 日本人が慣れ親しんだ木の暮らし


縄文の時代は今から約1万年前の時代ですが、何より凄い事は、その時代からケヤキのお椀があり、今も変わらず使っているという事実です。

それは脈々と日本人の暮らし、強いては樹の使い方、文化の継承へ繋がるものです。

どうすれば日本は元気になるか、というテーマのある記事で日本人は和食を食べるのが長寿の秘訣、和食を食べなくては元気が出ないという事が書いてありました。

その中で、日本人には牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素の働きが足りないから、牛乳を飲むとお腹がごろごろするのだという記載がありました。

ヨーロッパの人は長年牛乳を飲む中で体がその酵素を持つようになったから大丈夫であり、牛乳を飲み始めて日が浅い日本人はまだ身体が牛乳になれていない、日本の食べ物を食べて作られてきた身体なのだから。

という内容でした。

永い時間かけて慣れ親しんだものが環境・暮らしに一番合い、生かす事が出来るという点はまさに木も同じです。

 

広葉樹で作られていた仏像


私はこれまで、仏像と言えば檜、と思っていましたが、そうではない事がわかりました。

中国から仏教が伝来した(輸入された)当初は、中国では百壇などの香木を仏像の材としていました。

そこで日本では、香りたつ樹の楠が代用樹として選ばれたそうです。

その為、聖徳太子の頃の飛鳥時代の仏像は楠が使われています。

しかし時代が下るにつれて表現の幅が拡がってくると共に、加工が安易であるという理由から選ばれた材が檜でした。

刃あたりが柔らかく、細かい表現が出来、豊富な材だった事も理由とされています。

しかし実は、楠の他にも広葉樹の仏像は多々あるそうです。

中国から入ってきたチャンチンという木の代用としてセンダン、ケヤキ、ハリギリが使われ、百壇のような緻密な木肌の代用として桜が使われ、その桜の代用として同じ散孔材のカエデ、その後はクルミやカツラも使われたそうです。

この頃から、現代の家具づくりにも通じる、「木を木で代用する」という認識がある点も興味をそそられます。

今も、サクラの代用としてカバザクラやミズメザクラを使うという事があるように、これも、一つの木の歴史ではないかと感じるのです。

 

このような事実から、私達の祖先が永く付き合ってきた木の歴史の一端を知る事ができます。

針葉樹だけでなく広葉樹もまた、私たちの生活に深く根付き、文化として受け継がれているのです。

私たち家具蔵が作る木の家具もまた、先人たちの教えを受け継ぎ、暮らしの道具に適した強度の高い広葉樹を使用しています。

樹種によって異なる個性豊かな木目や風合い、年月により味わい深く変化する木の家具は、世代を超えて、私たちの暮らしの拠り所となりパートナーとなってくれるでしょう。

 

日本人と木の文化について その1はこちらから

家具蔵の無垢材家具のラインナップはこちらから

 

 

 


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