横浜は「オーダー家具の街」
2020.11.14
春先から続くコロナ禍。
いわゆる「おうち時間」が増える中で、お掃除や片付けをする時間が増えたり、ダイニングを家族で囲む時間が増えたりと、毎日使う家具はせっかくなら気に入ったものを使いたい、と考える方が増えています。
そういった家具の見直しを検討してインターネットで調べてみると、「横浜」というキーワードにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
それもそのはず、実は横浜は洋家具発祥の地でもあるからです。
中でも家具蔵横浜元町店がある「横浜元町商店街」には多いときで70軒を超える家具店があったと言われています。
今回は、家具の街・横浜についてお話したいと思います。
横浜・元町の歴史
1853年にペリーが浦賀に来航してから数年後、1859年の開港と共に横浜には多くの西洋人が上陸しました。
彼らは現在の横浜市山手地区にある居住区に住まうようになります。
今でも多くの洋館が残るこの地域では、住居の形式はもちろん、その暮らしに必要なものも多く持ち込まれました。
その中には生活の道具である家具ももちろん含まれています。
日本の暮らしにはなかったテーブルやチェアといった、いわゆるダイニングセットももちろんその一つです。
そのほかの日用品も多く輸入されるようになると、元町はそうした西洋人向けの商店が軒を連ねるようになっていきます。
そうして、海外からの移住が定着するようになるころ、必要となってきたのが「家具を直す人たち」です。
テーブルやチェアを本国から持ち込んだものの、日々の使用に応えるためにはメンテナンスも必要となってきます。
また、壊れたからと言って新しくしようにも日本には洋家具というものがそもそもありませんでした。
そこで集められたのが、当時は「指物師」と呼ばれた家具職人たち。
商店が立ち並ぶ元町のメインストリートの建物はひとつの建物が細長い造りとなっていて、裏口は1本裏の通りに面しています。
今でもこうしたつくりのまま残っている建物が多いのはこのころからの名残でしょう。
当時はこの裏手側に工房が集まり、西洋家具の修理が行われていました。
そして、修理をしていた職人達は次第に腕をあげ、メンテナンスだけではなく新しい家具を作り出すようになっていきます。
その証拠に1868年に日本初の本格的な西洋式ホテル「築地ホテル館」が建てられた際、そこで使用された洋家具の殆どが横浜製だったという記録が残されているほどです。
このように育った家具職人たちは、やがて東京をはじめ各地に移り、それぞれの地域に洋家具文化を伝えていくこととなります。
オーダー家具が集まる街
オーダー家具と言って多くの方が思い浮かべるのは壁面収納などのいわゆる「収納家具」「箱もの家具」ではないでしょうか。
キッチン収納をはじめ、家具の中でもオーダー製作を請け負っているメーカーの多くは収納家具を取り扱っています。
横浜はそうしたオーダー収納の家具メーカーが多く、しかも集中してショールームを構えていることもあり、色々な家具を実際に見比べて検討するにはとても動きやすいエリアです。
横浜駅周辺はもちろん、元町地区にも地下鉄やバス・あるいは散策しながら徒歩でも移動できる圏内に多くのショールームが集まっています。
そして、家具を見て回る際には、そのために知っておくべき「チェックポイント」を知っておくことも必要です。
作りはどうなのか、素材は何が使われているのか、サイズはどこまで希望が叶うのか。
また、お店のスタッフとの相性も重要です。
ちゃんと希望をヒアリングしてくれるかどうか、同じイメージが共有できるかどうか、そうしたところも気にしながら見てみてください。
場合によっては話がトントン拍子にプランが進むこともあります。
そうした場合に備えて用意しておきたいのが間取り図やお部屋の写真です。
かしこまったモノでなくてよいので、スマホのデータなどに入っているといざというタイミングで必ず役に立ちます。
より身近な存在へ
収納、もしくは収納家具はその空間によって、また使う人や使い方によって、求められる形や仕様が異なります。
テレビボード一つをとってみても、ソファから見る場合とダイニングから見る場合ではその高さが変わってきます。
また、キッチンも使う人の身長によって使いやすいワークトップの高さや吊戸棚の手の届く範囲は変わってきます。
収納家具は、もはやその場所や暮らし方に合わせてオーダーするのが当たり前なのかもしれません。
その方が断然使いやすく、些細なところでストレスを感じない暮らしが叶うからです。
そしてもう一つ大切なのが「その家具を何年使うのか」ということ。
新築やマンション購入などで造り付けの家具を検討する方の場合はもちろんですが、長く使うことを想定するのであれば、それに見合った素材選びをすることも欠かせません。
例えばテレビボードを購入するとして、価格は5万円で5年で壊れてしまうものと、20万円するけれども30年を超えて使えるものを比べたとき、費用的な部分ももちろんですがそれ以上に「毎日の満足感」というものが異なるはずです。
そうしたところも考慮して家具を選んでいただきたいところです。
横浜に洋家具がやって来てから160年以上。
日本人のライフスタイルもそれから大きく変わり、家具も様々な素材・デザインのものが溢れています。
暮らしを見つめなおす時、少し肩の力を抜いて本当に自分の好きなモノと向き合ってみるのも良いかもしれません。
そんな時は、歴史の香りのする横浜を訪れてみてはいかがでしょうか。
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