一枚板の素材に広葉樹が多い理由は?
2021.8.6
無垢材テーブルを購入しようと考えた際に、「一枚板」という言葉の響きはとても魅力的ですよね。
お客様からもせっかく買うなら一枚板が良いとい言葉を耳にすることはとても多いです。
そんな一枚板、もちろん『木』なのですが、その中の多くが広葉樹だという事に皆さんはお気づきでしょうか?
様々な種類の樹木がある中で、その木目や色・形や硬さはそれぞれ個性豊かな表情を魅せてくれますが、多くの場合それは広葉樹から生まれた一枚板なのです。
では一体なぜ広葉樹が多いのでしょうか?
今回はその理由について、掘り下げてみたいと思います。
広葉樹はテーブルに向いている
一枚板テーブルをはじめとする無垢材テーブルは言うまでもなく「木のテーブル」ですが、木には「広葉樹」と「針葉樹」という違いがあります。
「広葉樹」はわかりやすく言うと「平たくて幅の広い葉を持つ木」のことで、街中でよく見ることができるのはケヤキ、ポプラ、サクラ、ブナ、カシなどがそれにあたります。
一方「針葉樹」は「針のように細長い葉を持つ木」で代表的なものはマツやスギなどがすぐに思い当たります。
どちらが家具に適しているかというのは家具の種類によっても変わってきますが、無垢材テーブルに使用するなら広葉樹が断然有能です。
針葉樹の特徴のひとつに「柔らかく軽量」というものがありますが、無垢材テーブルは暮らしに必要な作業を支えるもの。
そこに必要なのは「強度があり傷がつきにくい」ことであり「揺れに強い」ことです。
広葉樹は強度があるので重量のあるものを収める可能性のある収納家具や長期に渡って使用することになり、そのなかで傷などがつく可能性も高い(つまり傷がつきにくいものが良い)ダイニングテーブルにも向いています。
また、中身の組織の密度の濃い広葉樹は揺れにも強いので、同じくテーブルに、そしてソファーや椅子のフレームに最適です。
広葉樹である「ウォールナット」「チーク」「マホガニー」が「世界三大銘木」と呼ばれているのはその美しい色味や木目の表情、加工性や剛性も勿論ですが、そうした理由もあります。
細胞レベルの違い
針葉樹と広葉樹、その違いについて一般的には葉の形で見分けることができます。
葉が細く尖っているのが針葉樹、面の広い葉を持つのが広葉樹、一番わかりやすいのはこの違いです。
またその幹を見てみると、針葉樹は比較的まっすぐ育つものが多いのに対して広葉樹は太く曲がり枝分かれしているものが多いのが特徴的です。
そして、こうした見た目の違いだけではなく、その内部の組織や細胞についてもこの二つは大きく違っています。
針葉樹の内部組織はほとんどの樹種でその90%以上を仮導管が占めています。
仮導管とは水を根から幹を通じて葉へ届ける組織で、規則正しく整列しています。
それと比較すると広葉樹の場合は構造が複雑で細胞の種類が多いだけでなく細胞ごとの機能も水分の通り道は導管が、木を支えるのは主に木部繊維が担うという分業制になっています。
また、英語では針葉樹を「ソフトウッド」、広葉樹を「ハードウッド」というように、その硬さと重量が大きくことなります。
樹木の細胞と細胞の間には空気の層がありますが、針葉樹の場合この空気の部分が多い為軽くなります。
逆に広葉樹はその部分が少ないため細胞組織が詰まっていて硬く重くなるわけです。
そのため、重くて硬い広葉樹の方がしっかりとした組織を持っているので、暮らしの道具である家具に多く用いられてきたのです。
インテリア性
細胞レベルの話から少し視線を引いてみると、その違いは素材の表面にも現れてきます。
針葉樹は細胞が比較的単純な構造をしているため、個体差はあるもののそこまで大きく木目の表情に違いが出ることはありません。
それと比べ広葉樹の方はというと、樹種によってその細胞の成り立ちが変わるだけでなく育ち方も変わってきます。
その証拠に四季があるところに育つ樹木には「年輪」がありますが、赤道直下の熱帯で育つ広葉樹の場合は雨季と乾季の繰り返しとなり、年輪ではなく「成長輪」と呼ばれる木目が現れます。
また、世界3大銘木と呼ばれるチーク・マホガニー・ブラックウォールナットを見てもわかるようにそれぞれ特徴的な色素を持っています。
そして同じ樹種でもそれぞれが少しずつ違う色素を持っていたり、同じ断面でも様々な色素が入り組んでいたりと個性豊かな表情を魅せてくれるもの広葉樹の特徴です。
更には「杢」と呼ばれるもので、通常の木目とは違い樹の育ち方によって現れる表情は、古くから人々を惹きつけてきました。
例えばメープル材に現れる「バーズアイ」と呼ばれる杢はとても珍重され、有名です。
その他にも樹が振動で揺れることで出来るちぢみ杢やアフリカの樹木に表れるリボン杢など、非常にたくさんの美しい表情で観る人を楽しませてくれるのです。
耐水性と耐久性
一枚板のテーブルはその空間の顔として人々を惹きつける魅力があると共に、暮らしの道具でもあります。
また、最近ダイニングは食事をする場所としての役割だけでなく、来客時のおもてなしの場であったりお子様のスタディスペースだったり、またリモートワークを含めて作業をする場合にも使われるスペースです。
そうなると一枚板だからと言って神経質になって使うのはとてもストレスになってしまいます。
細胞の話の部分でも触れたように、針葉樹はまっすぐ長く育ち、長尺の材が取れるため建築の柱や梁といった構造材としては有効に使うことが出来ます。
その一方で、細胞の間に空気の層が多い多孔質な性質を持つためその分水分も吸収しやすく、また傷にも弱いという側面があります。
ハードウッドと呼ばれる広葉樹の場合、その中でも硬さや重さの違いはありますがしっかりと乾燥を経た材は耐久性が高く、日々のハードユースにも応えてくれます。
使えば当然表面に傷はついていきますが、無垢材であれば削り直すことで新品のようにテーブルを蘇らせることができるのもその魅力の一つではないでしょうか。
このように、木にはその場所に応じた適材適所というものがあります。
それは今に限らず、古くから先人たちが試行錯誤をしてきたうえでのものに他なりません。
私たち家具蔵では樹齢100年前後、もしくはそれ以上の樹木を原木仕入れして家具作りを行っています。
一枚板テーブルを使うということは、そうした歴史を暮らしに取り入れるということ。
一枚板のテーブルを使っているという方は、その木について調べてみることでよりダイニングを好きになることでしょう。
またこれから一枚板を探そうと考えている方は、どうか素敵な1枚と出会っていただけたらと願います。
そして、そのお手伝いを私たち家具蔵でできれば、こんな嬉しいことはありません。
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