家具材だけではない「ナラの木」と人の関係は
2021.2.20
ナラという木とは
家具に使用される材質としてよく耳にする「ナラ材」。
ナラ材の木目は、板目で取ると伸びやかで力強く、柾目で取ると優しく「虎斑」という虎の背中の模様のような杢が出ることで知られています。
虎斑は海外では「シルバーグレイン(銀色に輝く杢)」と呼ばれ、とても親しまれています。
ナラ材の原産国は主に、日本、中国、ロシアなどとなっています。
ナラ材とオーク材の違い
お客様の中には、「ナラ材です」とお伝えすると「あぁ、オークね!」という方も多くいます。
一般的にオーク材と表現されるものは「ホワイトオーク」を指すことが多く、ホワイトオーク材は厳密にはナラ材ではありません。
確かにナラ材とホワイトオーク材は同じブナ科の植物で、仲間の木に当たるため見た目もそっくりで見分けがつきにくいのですが、簡単に区別する方法として産地があります。
先述したように、ナラの原産地は日本や中国、ロシアなど。
一方オーク材は主に北米が原産地となっており、ナラよりも重く、木口に見られる放射組織が大きいのが特徴です。
色味がナラ材よりやや白いホワイトオークと、少し赤みがかったレッドオークがあります。
ホワイトオークやナラは、導管を塞ぐチロースという組織が発達しているため、木に液体が入り込みにくく、ウイスキーやワイン樽などに使用されていることでも有名です。
どんぐりの実がなる木「ナラ」
「どんぐりころころ~♪」の歌でも知られる通り、ナラ材は昔からドングリの実がなる木として親しまれています。
縄文時代には栗や胡桃と並んで主食としていました。
ナラのどんぐりには、デンプンなど栄養はたっぷり含まれているのですが、一方でタンニン、サポニンなどによる渋みが強すぎ、人はそのままでは食べられません。
しかし、リス、熊、鹿など野生の哺乳類にとっては冬ごもりに最適な食料となります。
リスや鳥類のカケスはどんぐりを集め、離れた場所で葉っぱの下に隠したり、土の中に貯蔵したりする習性があります。隠されたどんぐりの中には忘れられ掘り起こされないものもあり、それらが発芽することで元の木とは離れた場所で次の世代の木となること(=子孫を残すこと)ができるのです。
ナラは広葉樹の中でも多くの葉を落葉します。
その落ち葉が豊な土壌を作り、豊富な鉄分やミネラルなどの養分が森から川へと流れ、海へと運ばれていきます。この養分をプランクトンが摂取し、これを食べに多くの魚たちが集まります。
いわば「すべて生き物が集まる木」なのです。
大きいものでは30mを超えその威風堂々とした巨大な姿は、森の中でもひときわ目を惹き、まさに「森の王様」にふさわしい雄姿です。
そんな巨木が集まって「中群生」という群生林をつくります。
大きな森を作る程の圧倒的な生命力があり、成長過程で数百種類もの菌根菌との共同作業で土壌改良を行いながらひとつの山を生命の住む森へと変貌させていきます。
つまりナラは生命の創造主と言っても過言ではありません。
その雄姿、そして家具などの材料になった際の素朴といえる表情は見るものを幸せに導いてくれるのです。
家具材としてのナラと人の関係性は
欧米では古くから家具材としてナラ材は重宝されてきました。
マホガニーが登場する1700年頃までヨーロッパでは家具を製作する上での主流材料でした。
特に1500~1600年頃を「オークの時代」と呼び、イギリスではチューダー様式、エリザベス様式、ジャコビアン様式という様々なスタイルの家具が生み出されました。
それでは日本におけるナラの位置付けはどうだったのでしょうか?
実は江戸時代から明治時代にかけてナラは薪や炭の材料として使われていました。
要するにナラの価値に気付いていなかったのです。
また、明治時代に「オーク」=「樫(かし)」と英和辞典を編纂する際に誤訳してしまったことも価値を見出せなかった要因でしょう。
当時から優良材としてヨーロッパやアメリカで人気のあったオーク材は落葉樹ですが、明治の中期にオーク材の引き合いが来た時に落葉する樫は無い(樫は常緑樹)、と日本側は断っていたといいます。
その後、北海道を開拓するにあたり、ナラ材を伐採し、破格の値段でヨーロッパに輸出していたところ、それまでにも定評のあったオーク材の中でも北海道産のナラが最高品質だとヨーロッパの職人の中で認められたことにより、今日の「ジャパニーズオーク」というブランドが世界的に認められるきっかけとなったのです。
加工性が良く、強度があり、安定していて木目が美しいという木材において必要な要素をすべて兼ね備えたナラ。
使い込むほどに味わい深くなっていき、これが何十年と愛用したくなるナラ材の家具の魅力の一つとなっています。
助け合いながら森を作る生命力、環境や生態系を整えていく重要な役割を担う存在など様々な魅力を持つナラ材。
住まいに取り入れて快適に過ごしていくのはいかがでしょうか。
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