なぜ木製キッチンは人気があるのに少ないのか?
2021.12.10
目次
日増しに大きくなるキッチンの存在と素材の多様性
新築やリノベーションで間取りを決める際に、まずはキッチンから決めるという場合も多く、LDKにおけるキッチンの存在感は日増しに大きくなっています。
サイズや機能に加え、最近では「見た目」にもこだわることが当たり前となっています。
キッチンの印象を決めるパーツは大きく分けて作業面となる「ワークトップ」と本体を構成する「面材」です。
ワークトップとはいわゆる天板のことであり、その素材はステンレスをはじめ、人工大理石・クォーツ・セラミック・天然石など多岐にわたります。
また、面材についても化粧板やシート材、ステンレスなど素材自体は以前からバリエーションが豊富でした。
しかし近年のインテリアトレンドを見てみると、以前と比べて「木目」のものが非常に多くなっています。
本物の木を使ったキッチンは少ない
その理由のひとつとして暮らしの中で多くの時間を過ごすLDKにおいて、キッチンも家具の一部として考えられるようになったことがあります。
間続きとなっている空間では、ダイニングテーブルやリビングボードといったLD空間を彩る家具とのコーディネートがあってこそ統一感が出て居心地の良い空間になるという考え方が一般的になってきました。
こうしたスタンスはインテリア雑誌やウェブサイトなどを見ても定着しています。
日常使用する家具に木製のものを使用することは定番中の定番です。
そこにキッチンを加えた統一感を演出するためにはキッチンも木目を活かしたものにするのはある意味当然の流れと言えるでしょう。
ただ、木のキッチンと言っても「木目調」のオレフィンシートやメラミン化粧板のものが大多数で、本物の木を使ったキッチンはあまり見かけません。
それはいったいなぜでしょうか?
「取り扱いの難しさ」と「コスト」が本物の木のキッチンが少ない理由
いわゆる「木目調」のキッチンは数多くあるのに、天然木を使ったキッチンが少ないそもそもの理由。
それは大きく分けて「取り扱いの難しさ」と「コスト」にあります。
「取り扱いの難しさ」といっても、使い手側ではなく作り手側の事情です。
天然木といっても突板・挽板・無垢材など種類がありますが、とりわけ材の厚みをそのまま活かした、いわば木そのものともいえる無垢材は製品となるまでにしっかりと管理する必要があり、また、木の特性を知る熟練の職人の技量が必要な素材です。
乾燥の工程を含めて時間も掛かります。
そのことから一括での大量生産は難しく、例えば人件費の安価な海外での工業化による大量生産=コスト削減を図ることもまた難しくなるのです。
そのことから木製、とりわけ無垢材のキッチンは目にすることが少ないものとなります。
いわゆるシステムキッチンメーカーでは取り扱いはほぼ無く、また面材のグレードとしても高価格帯のカテゴリーに属することになるわけです。
トータルコーディネートを考えると木のキッチン
それでも私ども家具蔵に「木のキッチン」を考える人からの問い合わせが無くならない理由としては、何よりも「インテリア性」と「居心地の良さ」にあるからだと考えます。
オープンキッチンが主流になり住まいづくりにおいて「キッチンとインテリアとの調和」というテーマは空間の統一感、インテリア面からみて大きな課題となっています。
住まいづくりにおいて床や建具などの建築と家具との相性を考えるといったトータルコーディネートを行うことがもはや常識となる中では、さきにお話ししたように床材や建具が木製であることが多いので、家具も木製のものを使用することになります。
それならばキッチンも統一感を出すために木製を選ぶということにも合点がいきます。
木のキッチンには五感で感じることのできる心地よさがある
さらに住まいを「居心地の良い空間にしたい」という思いを持つこともまた皆共通のはず。
在宅時間が増えたこともあり、リビングダイニングで過ごす時間は確実に増えました。
そのなかで自炊をする回数も増え、キッチンにいる時間が長くなったという人も増加しています。
そのような長い時間を少しでも自分の気に入ったものに囲まれて過ごしたいと思うのは、これも当然のことでしょう。
そう考えた時にまず頭に浮かぶのは「どんな素材で」「どんなデザインで」「どんな機能で」という部分です。
木製のもの、それも無着色で仕上げた無垢材のものには自然材としての深みのある色合い、経年変化による味わいの深化、そして手触りや木目など五感に訴える心地よさがあります。
ふとした時に感じる触感・視覚といった部分で感じる心地よさ、そして全体が同じテイストで統一されている心地よさ。
木製の、無垢材のキッチンにはそれがあります。
キッチンは「家具」であり、そこに求められるものとは
キッチンは家具である、という言葉は今や多くの場面で使われています。
家具であるならそこに機能とデザインを求めたいもの。
私ども家具蔵で木のキッチンのお声掛けがあるのは「オーダーメイド」ができるからでもあります。
導入したい機器、パーツを取り入れることができる。
収納したいものをしっかり入れることのできるサイズが叶う。
デッドスペースも余すことなく使用できる。
そうした機能性を、取手や扉等多くの選択肢から選び、自分だけのキッチンを叶えることができるのは大きな魅力です。
キッチンは長期間、また毎日使うものであり、そこに快適さを求めるならば、普遍的な要素とその人(あるいは家族)のためだけという特別性が求められます。
そうした要素を余すことなく、ただの設備ではなく家具のように空間に溶けこむキッチンが多くの支持を集めているのです。
毎日使うキッチンは機能的であるべきなのは当然のこととして、それ以上の満足感が得られるという要素も選ぶ上ではとても大切なポイントだと考えます。
せっかくキッチンを新しくするチャンスが目の前にあるなら、「心の豊かさ」にも目を向けてみるのはいかがでしょうか?
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