ウォールナットとチェリーに見る木材の経年変化の違い
2022.5.7
目次
無垢材家具の魅力のひとつ「経年変化」
木製家具といってもそれぞれですが、いわゆる無垢材、それも無着色で仕上げたものであれば時間と共に色合いや表情が変わることで、私たちの生活に癒しや安らぎを与えてくれます。
他の多くのものと違い、出来上がったばかりの状態が一番良いものということではなく、年月が経った状態の方がより味わいが増したものとなります。
この木の風合いや色合いが使い込むほどに変化することを経年変化と呼び、私ども家具蔵では「経年美化」あるいは「時の色を重ねていく」などと表現しています
無垢材家具の良さである「長く使用しても飽きがこないで使い続けることができる」理由のひとつがこの「経年変化」です。
樹種によって異なる経年変化による色合いの変わり方
その経年変化の速度、あるいはその変化のしかたは木の種類(樹種)によっても異なります。
木材の色の変化と言えば、「次第に濃くなる」というものが大抵です。
ですが、逆に明るい色合いに変わっていくものがあったり、手元に届いてから1年程度で色合いが大きく変わる樹種があったりします。
無垢材家具の色合いが変わるメカニズム
なぜ、無着色の無垢材家具の色合いは、時間とともに変化するのでしょうか。
いくつかの要因がありますが、一番大きく影響しているのは「光」です。
木材は、光の中に含まれる紫外線を吸収しやすい性質を持っています。
この紫外線を吸収する役割を持つのが、木材の中に含まれているリグニンという物質です。
リグニンが紫外線を吸収することで反応が起こり、色合いが変化するという仕組みを持っているのです。
少し話が横道に外れますが、無垢材は目に優しい素材という側面を持っています。
紫外線は波長が短く、目に対して強い刺激を与えます。
家具に光が当たるなかで、紫外線を吸収してくれることは、目に対する刺激を少なく抑えることに繋がります。
家具の色が変化していたことに気付いたら、
「紫外線を吸収して、私たちの目を守ってくれたんだなぁ」
と無垢材の効能をしみじみ感じながら、家具に対しての愛着も深めてもらえれば…。
そんな話も店舗ではしています。
チェリー材とウォールナット材は真逆の変化を起こす
数ある無垢材の中でも人気があり、その経年変化の度合いが真逆であることが非常にユニークさを覚えるのがチェリー材(アメリカンブラックチェリー)とウォールナット材(アメリカンブラックウォールナット)です。
チェリー材はかなりのスピードで色がどんどん濃くなっていき、一方でウォールナット材はチェリーほどではないにしろ、やはり比較的早い時間で漆黒に近いその色合いをまろやかな濃茶色に変化していきます。
チェリー材の経年変化とその印象は
チェリー材は、その滑らかな手触り、心地良い質感が人気の理由ですが、もっと大きな理由はその色合いにあります。
鮮やかな飴色は、高級感と親しみやすさが同居し、空間にやさしさや温もりを与えてくれます。
そして、その飴色が生まれるまでの過程、つまり時間の経過と共に色合いが変わる経年変化の速さと度合いは、他の無垢材のそれと比較しても非常に早く、そして経年変化前と後のギャップも非常に大きなものとなります。
チェリー材の色味は、多少の差異はあれ、当初はほんのりピンクがかっています。
そこから、どんどん変化し、艶と深みのある紅褐色へと移り変わります。
当初の明るく爽快な印象は、気が付けば落ち着いた、そして味わい深い印象へと変化するのです。
その色合いの経年変化は、木目の見え方にも変化を与えます。
明るい色調の頃は、木目が比較的はっきりと表れるので、キリっとした表情として目に映り、全体的に爽快感も感じられる印象です。
経年変化によって色合いが深い飴色に変わった頃には、木目の色とその周囲の色が近付くことで、全体の表情が優しく穏やかな印象となって目に映るようになるのです。
このような変化は、人工的に色を塗って再現する事の出来ない、天然素材の経年変化によってのみ表現されるもの。
10年経ったチェリー材の美しさは、10年間大切に愛着を持って家具を使った人だけが味わうことのできる特典と言っても良いでしょう。
ウォールナット材の経年変化とその印象は
その黒に近い落ち着いた雰囲気と得も言われぬ高級感、それがウォールナット材の特徴です。
同時に、ウォールナット材もはっきりとした経年変化を楽しむことのできる樹種のひとつです。
当初の黒に近い色合い、あるいは非常に濃い茶色の雰囲気から、ともすれば冷たさを感じる青・黒系の色味が時間の経過とともに抜けて、まろやかな色合いへと移り変わります。
落ち着いた雰囲気だけではない、優しさやぬくもりといったものを感じることが出来ます。
それは着色されたものからは感じることが出来ないものであり、その色合いから空間全体が暗くなるかも、と考える人に対しても、決してそんなことは無いと安心させることができる、そんな変化です。
まるで水墨画を想起させるような、複雑且つ流麗な木目を持つものが多いウォールナット材は、色合いだけでなく、その木目も愛でるに値するものを持っています。
当初はその全体の色合いに馴染み、あまり主張しない木目も、少しずつ全体の色合いが変化することで段々と分かりやすくなってきます。
チェリー材が優しい表情に変わっていくのとは対象的に、木目が目立つようになることで柔らかい色合いの中にも徐々に凛々しさが増してくるのです。
元々存在する木目や表情がデザインとまでなるのが無垢材家具の良いところです。
そのような無垢材家具の魅力を存分に味わうことができるのがウォールナット材の特徴でもあります。
経年変化を楽しむのが無着色の無垢材家具を使う醍醐味
チェリー材もウォールナット材もいわゆる自然の産物であり、そういったものは個々に違いを持っています。
画一的にこの木はこの色から始まってこの色に変わる、と言い切ることは出来ません。
しかし、それこそが無垢材家具の魅力とも言えます。
全てが一様では無いこと、それがどんな変化を遂げてくれるのだろうという、無垢材家具を使い育てる楽しみでもあります。
そして、表面の色の変化というものは木材が私たちの生活を支え健康を守ってくれた証でもあると同時に、エイジングであるとも言えます。
エイジング=味わいの深化=時間の経過の証人、とも言い換えることができるものを手元に置いておく。
それこそが無着色の無垢材家具を使う醍醐味ではないでしょうか。
私ども家具蔵の各店舗では、製作間もない家具と長年展示を続けている家具を常に展示しています。
それは、この経年変化の魅力に触れたうえで家具選びを行ってほしいが故です。
チェリー材、ウォールナット材以外でも様々な樹種で経年変化前と後の魅力を味わっていただけますので、是非一度お店舗でその魅力に触れてみてください。
ウォールナット材の無垢材家具を長年使っていただいた実例写真はこちらから
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