無垢材家具の樹種における「価格の違い」はどこから生まれるのか
2022.5.8
目次
無垢材家具は使用する樹種によって価格が異なる
このコラムを読んでいる人の中には、今まさしく家具を検討中、という人も少なからずいることでしょう。
そこで貴方が、とある無垢材家具販売店に立ち寄ったとします。
そこには「ウォールナット」や「チェリー」「メープル」「ケヤキ」のような、木の種類にはさほど詳しくなくても名前くらいは知っているという有名なものや、あまり聞き覚えの無いような珍しいものも置いてあります。
買い物ですから、当然のことながらそれぞれの価格は気になります。
そこで同じようなサイズ、デザインや形状であるのにも関わらず、それぞれの価格が違うことに気が付くかもしれません。
多くの場合、無垢材家具はその製作にあたって使用する樹種により価格が異なるのです。
価格の差は「材の良し悪し」に関係しない
価格はものを購入する際の決め手としてとても大きなものです。
その買い物に対して「価格の高低」は非常に重要と言えます。
欲しいものがあっても価格が高くて思い悩む、という経験は皆さんお持ちでしょう。
無垢材家具であれば、同じ木という素材から作っているのに価格の差があるのは何故だろうか?と考えることもあるかもしれません。
この樹種は価格が安く設定されているから良くないものなのか?
この樹種は高額が付いているのですごく良いものなのだろうか?
そう考える人もいることでしょう。
しかし、この価格の差はそういった「材の良し悪し」は特に関係していません。
どの樹種を選んでも長く使用できるものとなる
どの樹種を選んでも、素材そのものに対する「優劣」は存在しません。
例えば、家具蔵で紹介する基本の8樹種、一枚板天板などの一点物を含めれば30以上の樹種にはその価格による強度や剛性には何ら差は無く、どの樹種を選んでいただいても長い期間しっかりと使用していただけます。
価格がお求めやすくても、仮にそうでないものだとしても、その点は同様です。
つまり、価格の高低は、強度などの優劣には一切関係が無いのです。
しかし、それでも樹種によって価格に差があることは事実です。
それはいったいなぜでしょうか。
無垢材家具の価格差は主に「希少性」「知名度」「加工性」が理由
無垢材家具の価格差は、同じデザインあるいは形状であることを前提として、主に「希少性」「知名度」「加工性」によるものが殆どです。
希少性はその木の現存する数、あるいは流通量。
知名度はその木がどれだけ家具材や建材として知られているか。
加工性は、歩留まりと呼ばれる素材として使用できる部分の多さや、乾燥や製作全般を含めたもの。
これらの要素が相まって価格となって反映されます。
私ども家具蔵においては、現在ホワイトアッシュが一番お求めやすい樹種となっていることが多いのですが、これはホワイトアッシュが比較的まっすぐで、しかも大きく生育することによる歩留まりの良さが関係しています。
一方で価格の順番を付けた際に一番上に来ることが多いケヤキは、高樹齢の大木の少なさと乾燥工程の長さ、その固さに由来する加工の難易度の高さがその理由となります。
高級材の代名詞ウォールナットの場合
「希少性」と「知名度」はある意味でリンクします。
知名度がある、ということはニーズが高い、ということに繋がります。
木材は家具のみに使用されるわけではありません。
建材であったり、楽器材であったり、様々な分野で色々な用途に使用されています。
有名な樹種は人気が高く、多くの引き合いがあり、その分だけ流通しにくくなるものも出てきます。
例えば、北米産のアメリカンブラックウォールナットは、世界三大銘木とも言われ、以前から高級材の代名詞でもあります。
このアメリカンブラックウォールナットは、アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)の計画的な植林と伐採、そして流通の管理がなされています。
そのために一定量は安定的供給があるものの、やはり流通する個体数には限りがあり、高級材としての認識も確立されていることで、特に無垢材一枚板天板などは超が付く高額品も出てきます。
一枚板天板の価格の差は樹齢に基づくサイズにも
価格の設定差は、特に無垢材一枚板天板では特にわかりやすいものとなります。
一枚板天板ではさきに挙げた「希少性」「知名度」もさることながら、そのサイズも価格設定に大きく左右されます。
奥行=木の幹の太さは樹齢を表します。
樹形そのままの形状でテーブルにする一枚板の場合、奥行は操作できるものではなく、自然に委ねることになります。
内部の密度が高く、材とした際の強度に優れる広葉樹は生長も非常にゆっくりで、テーブルに必要な奥行を確保できるような樹径になるには数十年、もしくは100年・200年の期間を要します。
そういった高樹齢のものは世界的にも数が少なく、そのため、幅が長いもの、そして十分な奥行が確保できるものはそれだけ価格設定は上がっていくのです。
その他にも木材の価値を決めるものとして、死節などの欠点の有無、そして装飾性に秀でる「杢」(もく)の有無があります。
ただ、ここで強調したいのは、決して「価格が高いから良いものである」という、一種短絡的な考えには凝り固まらないでほしい、ということです。
自分が「これがいい!」と感じたもの、感じることができるものが、本当の意味での「良いもの」であり価値を持ちます。
自分にとってこれが良い、と感じたらそれは世界で一番のものであり、それは価格の高低に左右されない、本当の価値となります。
一番大事なことは、気に入って長く使うことができるかどうかであり、家族のパートナーになれるかであると私ども家具蔵は考えます。
無垢材一枚板天板探しは、よく「出会い」と言われます。
この出会いそのものや、出会った時のストーリー。
こういったものが豊富なものほど、どんな高額のものにも替えることのできない価値となるのです。
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