「体圧分散」の重要性を知る
2022.7.20
目次
椅子やベッドは直接身体に触れる家具であり、日常の疲れを取り癒してくれるための大切な道具のひとつです。
寝具(ベッド、マットレス)や家具(椅子、ソファ)という、いわゆる「自重を預ける家具」を選ぶ際に耳にする言葉に「体圧分散」というものがあります。
普段あまり触れることのない言葉かもしれませんが、実は椅子や寝具を選ぶうえでは重要なキーワードのひとつなのです。
「体圧」とは自重による圧力
地球には重力があり、人間の体には常に体重・自重という「圧力」がかかっています。
人はこの圧力の負荷を軽減するために座ったり横に寝転んだりするのです。
椅子に座った時、あるいはベッドで横になった時に、これらの身体を支える道具から体の表面に加わる圧力が「体圧」です。
椅子やベッドは身体を支える役割を持つことから「支持具」とも呼ばれます。
人はこの支持具に接する部分のみで自身の身体を支えることになります。
そのため、支持具に触れている面積が小さくなるほど、家具と自身の身体が触れている部分に掛かる体圧は大きくなります。
つまり、身体の一部に負荷が強く掛かる状態であり、床や平たい椅子に座った時に臀部が痛くなり長時間座っていられないという誰にでもあるような経験はこれに起因します。
お尻が痛くなる、疲れるなどで長く座っていられないのは一か所に体重が掛かってしまっているからなのです。
睡眠時に寝返りをうつことも無意識のうちに身体の負荷を軽減するためでもあります。
体圧を「分散する」ことで生まれるメリット
今回のテーマでもある「体圧分散」。
その名のとおり、身体に掛かる圧力(=体圧)を一か所ではなくできるだけ複数の箇所や広い部分に「散らす」ことで、身体の負担を和らげることを言います。
私たち人間の身体には必ず曲線があり、凸凹(でこぼこ)があります。
例えば平らな床に仰向けに寝転んだ場合、身体の中でも出っ張った臀部・後頭部・肩甲骨など床に触れる部分には体圧がかかりやすくなります。
接地面に触れる面積を多くすることは、通常では接地しないような「身体のへこんでいる部分」も支えることができるので、身体全体の負担を減らすことができるのです。
就寝時に使用するマットレスでも、高い弾力性や復元性を持たせることで身体全体が接地面に密着させるものがあります。
これにより、効果的な「体圧分散」が可能となり、痛みや血行不良を防ぎながら安眠へと導いてくれるものとなっています。
「座繰り」は深いほうがより体圧分散性が増す
人の身体に直接触れるような家具を選ぶ際には、体圧分散力がいかに重要かお分かりいただけたのではないでしょうか。
マットレスはクッションの弾力性で、より効果的な耐圧分散を獲得することができます。
では椅子はどうでしょうか。
木製の椅子、例えば無垢材チェアと呼ばれるものなどで板の座面の椅子はよく目にします。
デザインや雰囲気など自然素材の魅力たっぷりで高い支持がありますが、椅子は身体を預けるものであるという前提から考えた際には、やはりお尻を乗せる座面に高い体圧分散性=より広い面を受け止める性能がある方がベターです。
そして、ここにメーカーごとの考えや、座り心地の違いが生まれます。
例えば私ども家具蔵の板座チェアの座面はテーブルを製作できるほどの極厚の板材を圧倒的に「深く」アーチを掛けて削り込んでいます。
それは、臀部から太股にかけて着座時の体圧が分散させることを目的としており、板の座面とは思えないほどの優しい座り心地です。
人間の体型を考えた曲線は美しさを持って「座り心地の究極」を表現しています。
しっかりとお尻全体が包み込まれるような心地良さをぜひ一度お試しください。
その他にも長時間座ることができる椅子=体圧分散性が高い椅子を選ぶにはポイントがあります。
着座時に「足裏が床に着く椅子」を選ぶ
体圧分散性を高めるということは身体が椅子や床、寝床などに「当たる」箇所を増やすことと同義です。
その観点では当然、「足の裏」も床に付いていることで体重を掛ける=体圧分散性が増すことは当然のことと言えます。
両足裏がしっかり床に着けばその分体圧が分散され楽に座ることができます。
足裏が床に着いていない状態での着座は椅子の座面と接する太ももの裏が圧迫されることも引き起こしますので、やはり長時間の着座では疲れやすくなります。
背もたれはあった方が長時間の着座が可能
椅子にはその高さの是非はともかくとして、背もたれが装備されていることが大抵ですが、背もたれを持たない「スツール」も存在します。
急ぎの食事や作業など時間にして「5~10分」といったごくわずかな時間であればスツールでも十分であり、むしろ機能性の面では優位です。
しかし長時間座るとなると、背もたれに背を預けることは身体を支える面が多くなることを意味します。
つまり、体圧が分散され楽に座ることができるようになるのです。
アームチェアは体圧分散性を高める
臀部にかかる負荷は、臀部がより多く座面と接することで解消されます。
意外と見落としがちなのが肩にかかる腕の重さによる負荷です。
腕の重さは体重の約10~15%あると言われています。
数キログラムの負荷が常に両肩にある状態と言え、長時間楽に座るうえではこの負荷はやはりデメリットです。
その解消のためにはアーム、つまり肘掛けが有効です。
アームに肘を置くことで肩に掛かる負荷が軽減され、より楽に座ることができます。
いわゆる「アームチェア」は体圧分散性を高めるうえでは、有効なものとなります。
自然な位置に肘が置けるように設計されたアームチェアがあれば。身体に余計な負荷がかからず長時間座っても疲れずより寛ぐことが叶います。
このように長く座ることのできる椅子を選ぶのであれば、身体と椅子がより多く接している、体圧分散性が高いものを選ぶと良いと言えます。
椅子やベッドは日中の疲れを取る休息用の「道具」でもあります。
身体への負担を軽減し、日々の疲れを癒してくれるものを選びましょう。
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