インテリアコーディネートは和室に有効なヒントがある
2022.9.8
仕様決めとは
住空間を構成する要素としては「床材・壁装材・天井材・照明・窓廻り・家具・小物/アクセサリー(観葉植物等)」があり、間取りが決まったのち、これらの要素を決めていきます。
このステップを「仕様決め」と呼びます。
間取りを検討する際に、例えば床材ならフローリングか大理石か、はたまたタイルか、など大まかな素材は事前に決めますが、最終的に素材や色、サイズを決めていくのがこの「仕様決め」です。
壁装材や天井材と合わせて内装材や建具造作材を部屋ごとに具体的に決定していき、キッチン・トイレ・洗面や浴室などの設備についても順次確定がされていきます。
仕様決めを簡単にする秘訣のひとつは「家具を先に決定すること」
標準仕様からいわゆるオプション、特注など幅広い選択肢から決めていくことは、意外と大変な労力を要します。
「こんなに決めることがあるとは」という苦労話もよく耳にします。
最近では間取りがほぼ決まり、仕様決めを行う前の段階で家具のリサーチをするというケースも多くなっています。
「この家具を置きたいから、フローリングはどの樹種にすると良いか」
というように、逆算で検討する、あるいは決定しておくことはその他多数の要素を決定する「基準」が生まれることを意味し、無数とも思える選択肢を良い意味で狭める=選びやすくする有効な手段ともいえます。
家具を優先で考えるという思考は、お気に入りのものを選んでずっと使い続けたいという要望も叶えるものとなります。
「器」に「人」が合わせるのではなく、その器を使用する「人」優先の考え方でもあり、それは本当の意味で住まいを「住みこなす」こと、暮らしを楽しむ空間づくりを行うことにも直結します。
住まいは住み始めてから「住みこなすこと」で人と一緒に育ちます。
これは家具にも共通して言えることです。
床材選びは和室にヒントをもらう
インテリアを構成する要素のなかで建物に付随し、且つ空間に大きな影響を与えるのは床・壁・天井の内装材です。
さきの「仕様決め」でのこれらが確定してから建具・造作材の決定という流れが一般的です。
この中でまず、多くの人が頭を悩ませるのが床材選びでしょう。
住まいにおいても占める面積は大きいので、全体の視覚的なイメージへの影響はもとより、予算にも大きく影響します。
家具選びの検討段階でもこの「床材選び」の相談を受けることが多く、家具と一緒に考えることもとても多くなっている印象です。
ほぼイメージができている場合は別にして、まったく見当がつかないという場合は実際に住まいの中にそれがあるかどうかは別として「和室」から紐解いていくと良いでしょう。
和室に入るとホッとして心身ともに安らぎを感じます。
これは床の畳や壁などの基調色がベージュ系の色でまとまっているからでもあり、このベージュ系こそがストレス解消と精神的な落ち着きの根拠となっているのです。
どうしても床材を決めかねている場合はその要素を取り入れた色味から考えたものにすると、うまくいくかもしれません。
例えば広葉樹材でフローリングを製作するならナラ、タモ、メープル等はおすすめです。
木材は色味だけではなく木目もストレス解消に効果があります。
木目の模様や木肌の色の濃淡などには「1/fゆらぎ」とよばれる動きのパターンがあります。
これが人の目に心地良い刺激を与え、気分をリラックスさせてくれるのです。
明るめの樹種をフローリングで選択することで空間全体の広さも感じられますので、迷った場合は参考にして下さい。
また、和室にはヒノキの柱や杉の天井材等が用いられていることも多くみられます。
こうした樹種は経年と共にやや灰色がかった色合いに変化します。
最近の戸建住宅やマンションの床材・建具でも採用されることが多いグレイッシュオークやアッシュも和室の針葉樹の経年美(質感)を現代風にアレンジしたものと考えると、安らぐ要素も含まれていて人気があるのも納得です。
和室にはアースカラーとアクセントカラーの関係性のヒントもある
長い時間を過ごす空間に求められるのは「心地よさ」「落ち着き」「寛ぎ」でしょう。
和室が落ち着く理由には自然素材で構成されているということがあります。
そして和室は構造材、内装や建具だけでなく座卓や飾り棚といった家具・造作の類も木で作られていて、その色調は例えば漆で仕上げたやや濃いめの色合いの家具が置かれていることが多々あります。
ベージュの基調色におけるアクセントカラーとの役割を果たすわけです。
ベージュはいわゆるアースカラーのひとつです。
アースカラーとはご存知のように地球の大地や植物、海、空等の自然物をイメージした色です。
最近は洋服にもアースカラーが多く、身につける衣類にも自然の温もりを感じる色味、そして自然な質感が求められているということでしょう。
アースカラーはブラウン、ベージュ、カーキ、グリーンなど安らぎや落ち着きを感じさせます。
そのことから年齢を問わず誰からも好かれ、且つバランスがとりやすいのも普遍的な人気の理由の一つです。
そのようなアースカラーは、それより色の基調の濃いものを指しこむことでアースカラー自体も際立つようになり、全体の雰囲気を引き締めたものとなります。
これはインテリアコーディネートにおいても同じことが言えます。
全体が明るめ=ベージュ基調などの空間に色が濃いめの家具をレイアウトすることでメリハリが生まれ空間の印象がぐっと洗練されます。
例えば、床材も他の造作や建具も同じ素材・色合いとしてダイニングセットだけ、あるいはテーブルも同じ素材感のもので揃えたうえで椅子だけを色調の濃いものとすることは非常に効果的です。
和室とは私たち日本人が古くから歴史を重ねながら作り上げてきたスタイルで、その様式美はある意味では数百年前に完成されています。
しかし、そこには現代のインテリアコーディネートに通ずる、もしくはそのまま取り入れることができる考え方やヒントがあります。
「温故知新」とは昔の事をたずね求めて、そこから新しい知識・見解を導くこと。
私ども家具蔵も伝統の木工技術を現代に生かし、昇華させています。
その点には共通点があるように思えてなりません。
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