環孔材・散孔材の違いとは
2023.1.14
目次
木材は樹種によってそれぞれに特徴が異なる
無垢材家具を検討し始めると必ずといって良いほど「○○材」というように、どの樹種から生まれた材料で製作されたかを見ることができます。
世の中にはじつに多くの樹種があり、そして家具製作にも様々な樹種が使われていることに気付くでしょう。
木材というものは樹種によってそれぞれに特徴が異なります。
色合い・手触り・木目などの表情。
私ども家具蔵のような無着色仕上げの家具の場合、その樹種が持つ自然の色合いがいわゆる「家具の色」としてコーディネートを考える要素となります。
無垢材家具の表面を触れてみると、樹種ごとにスベスベとなめらかな触り心地のものやザラザラと細かい凹凸を感じるものなどの違いに気が付くでしょう。
木目や、ときには「杢(もく)」と称される装飾的な意味合いを持つようなものも含めたその木がそれぞれ持つ独特の表情はその材料の価値さえ変えるような違いを持っています。
広葉樹材と針葉樹材の違い
木製家具には大きく分けて「無垢材家具」と「木質系加工材料(を用いた)家具」の2種類に分かれます。
私ども家具蔵は前者「無垢材家具」を専門にオーダー製作を行う家具メーカーであり工場直営の家具販売店ですので、無垢材家具を中心にお話を進めていきましょう。
無垢材家具に用いられる樹種は、例外こそありますが基本的に「広葉樹」と呼ばれるものです。
広葉樹とはわかりやすく言うと「平たくて幅の広い葉を持つ木」のことであり、ケヤキやポプラ、サクラなどは街中でも頻繁に目にすることでしょう。
家具蔵でも家具製作には全て広葉樹材を使用しています。
スギやマツのような「針葉樹」ではなく、広葉樹が使われる理由はその素材としての特徴にあります。
広葉樹材は平たく言えば「強度があり傷がつきにくく」「揺れに強い」特徴を持っています。
逆に針葉樹材は「柔らかく軽量」という素材としての特徴があり、「ソフトウッド」などとも呼ばれていて(広葉樹材は“ハードウッド”)柱などの建材に用いられることが多い素材です。
構造の違いが用途の違いを生む
この特徴の違いは広葉樹・針葉樹それぞれにおける構造の違いにあります。
一般的な針葉樹の組織はある意味では単純な構造であり、9割以上が「仮道菅」で構成されています。
仮道菅とは「地中から根が吸収した水を葉まで運ぶための通り道になっている組織」であり、この仮道菅はその木そのものを支える役割も担っています。
その支えともなる部分の構造がシンプルなだけに、軽くて柔らかくなるのです。
一方の広葉樹は、針葉樹と比較した際により組織構造が入り組んでおり、それと同時に体内の細胞の種類も多くなります。
その細胞は、例えば「水を運ぶための組織は道菅」「木自身を支える役目は木部組織」など、細胞自体が個々の役目を持つようになり、専門化が進むことで広葉樹自体が複雑な構造になることに影響しました。
その複雑な組織構造によって、木自体の硬度が増し、つまり材料となっても強度が高く、丈夫なうえに修繕性も良いので古くから家具材として使われるようになったのです。
複雑に進化した組織構造のなかでも水を運ぶための「道菅」は広葉樹の大切な組織です。
樹幹の断面から見た際にこの道管が断面上にどのように分布しているかの特徴によって、おもに「環孔材」「散孔材」「放射孔材」の3つに分類されます。
この3つのうち、一般的には環孔材と散孔材が家具製作に使用されており、また、それぞれに特徴があります。
環孔材の特徴と代表的な樹種
ケヤキ
環孔材の道菅と散孔材のそれを比較した際に、環孔材のほうがより道菅が太く、年輪に沿ってリング(環)状に配列しているのが分かります。
この配列が、年輪やそれから派生する木目が明瞭に現れることに関係してきます。
環孔材の代表的な樹種は、ケヤキ・ナラ・タモ・ホワイトアッシュなどがありますが、そのいずれも鮮やかで明瞭な木目を持っていたり、くっきりと主張する木目が特徴的です。
また、道菅が太いことは素材自体の凹凸感が強く発生することにつながります。
太い道菅がこの凹凸感を作り上げ、実際に手に触れると「木で作られたものを使っているな」と実感させてくれるはずです。
散孔材の特徴と代表的な樹種
アメリカンブラックチェリー
散孔材は環孔材と比べた際には道菅は細く、年輪とは関係なく内部の各所に数多く点在しているのが特徴です。
散孔材の代表的な樹種はアメリカンブラックチェリーやハードメープル、バーチやビーチなどですが、このどれもが滑らかな手触り感を持つものであり、この感触は散孔材であるためです。
また、環孔材のものと比べて木目がやや穏やかな印象に見えることも多く、一概には言えませんが環孔材よりも散孔材のものの方がやさしく穏やかな表情に感じることでしょう。
両方の特徴をもつウォールナット
樹木の進化の過程では、きっちりと散孔材と環孔材に区別しにくい例も出てきます。
例えばウォールナットなどは、散孔材として分類はされていますが、環孔材的な特徴も持ち合わせているため、両方の趣きを感じることができます。
家具選びを行う際には(ややマニアックですが)環孔材と散孔材を意識してコーディネートすることもテクニックのひとつです。
フローリングの素材が散孔材のメープルであり家具は濃いめの色合いでメリハリをつけたいと考えた場合に、同じ散孔材のチェリーの家具をレイアウトするなども良いでしょう。
逆に散孔材と環孔材をあえて組み合わせることも手法のひとつであり、もし詳しい内容を聞いてみたいということであれば木に精通しているスタッフが常駐している家具蔵各店にぜひお問い合わせください。
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