なぜ木材は色が変わるのか?
2023.6.16
経年による色合いの変化は無垢材の大きな魅力
私ども家具蔵のスタッフがお客様と商品のお話をする際に必ず伝える内容のひとつに「経年による色の変化」があります。
なかには最初と数年後でまるで異なる色合いに変化する樹種もあり、その違いに驚かれることもしばしばです。
基本的に着色を施さない木材はすべてのものが時間の経過によって色の変化を生じます。
急速に大きく色を変えるもの、時間を掛けて少しずつ変わっていき、その変化の度合いも小さいものなど様々ですが、色合いが変わらない、ということはありません。
一言で無垢材家具と言っても「着色を行って仕上げるもの」「着色をしない(無着色)で仕上げるもの」とに分かれます。
私ども家具蔵の無垢材家具づくりは後者であり、それはその変化こそが無垢材家具の大きな魅力であるというポリシーに基づくものです。
色合いが変化することは、長い期間を使用することで古さを感じるのではなくむしろ味わいの深化を引き出します。
使用中についてしまった傷なども目立つことなく馴染んでいくなどの実用的なメリットも兼ね備え、長期的な視野にたった家具への愛着に繋がる、という考えです。
ではなぜ無垢材等の木材は色合いを変化させていくのでしょうか。
木材の色合いが変化する理由は
木材の色合いが変化する理由はいくつかの要素に由来します。
まずは「光の影響」です。
いわゆる日焼けとはまた違った観点といって良いのですが、木材は光にさらされると、木の表面に化学反応が起こります。
照明などの光でもそれは起こりますが、「紫外線」が色合いの変化には強く影響します。
木の成分である「リグニン」という抽出成分が紫外線などの光を吸収し分解することで変化が生じるのです。
ついで「酸化反応」があります。
木材に含まれる有機化合物のひとつであるタンニンは酸化反応によって色を変えることがあります。
タンニンは木材内部に存在し、時間とともに酸素と反応して酸化します。
この酸化によって木の色が変わることがあるのです。
白木材で起こる色合いの変化とそれがもたらすもの
この経年変化による色合いの変化は、樹種、つまり木の種類によっても異なります。
それがそれぞれの樹種の「個性」でもあり、もっといえば大まかな傾向は似通っていても個々がそれぞれ元々持っている色合い、例えば濃い・明るいといったような違いなどで多少の違いはありえます。
それは木材が持つ自然の特徴であり、それぞれの木材が独自の美しさを持つ一因です。
殆どの樹種は当初の色合いから徐々に色合いを濃くしていく傾向があり、ナラやハードメープル、タモ、ホワイトアッシュなどの「白木」といわれる明るい色合いの樹種のほとんどはそれにあたります。
数年、あるいは十年程経過したものを並べた際にはほんのり飴色になっていたりするのでその違いもわかりやすいのですが、家具は基本的に毎日目にして使用するものです。
日々見ていることでその違いは意外とはっきりとは感じにくいかもしれません。
しかし、当初の色合いから徐々に濃くなっていく色合いが精悍さと風合いを増していく助けとなり、使い込んだ白木材の家具は爽やかさや清潔感だけではない「深み」を増して暮らしを彩ってくれるはずです。
ウォールナットとチェリーの経年変化が分かりやすい
次にあげる2つの樹種はその色合いの変化の速度や数年後の違いにおいて顕著でもあり、無着色仕上げの無垢材の魅力を存分に味わうことのできる樹種です。
まず、世界3大銘木のひとつであるアメリカンブラックウォールナットはその名の通り「黒」と表現しても差し支えない色合いを持つものの多いですが、徐々に色合いを明るくしていくことに特徴があります。
光と酸素にさらされることによって起きる化学反応がそうさせるわけですが、この変化はウォールナットのもつ独特の木目を際立たせる効果も併せ持ちます。
また、落ち着いたトーンの空間に合わせたものでも暗くなりすぎずに程よいアクセントを生むことにもなるのです。
もうひとつ、こちらも人気樹種のアメリカンブラックチェリーは、その色合いの変化において、もっとも劇的且つそのスピードも速く、そこに特徴の一つがあります。
無着色仕上げの無垢材家具の醍醐味に色合いの変化を挙げるならば、チェリー材は欠かせません。
個体によっても異なりますが、「薄桃色」ともいえるような明るい色合いは使用しはじめて比較的早い段階、ともすれば一年程度で急激に赤褐色に変化していきます。
その様はまさに劇的。
まるで違う素材を使用しているかのような違いを味わうことができるのがチェリー材であり、数年が経過して色合いの変化も落ち着いたチェリー材は空間に滋味をもたらし、高いコーディネート性を誇ります。
無着色仕上げの無垢材家具が持つ経年による色合いの変化。
無垢材・木材は言うまでもなく自然素材であり、この「何も手を加えない(正確には仕上げ塗装などは行いますが)」ことで楽しむことができる美しさ、これはまさしく「自然美」といえます。
その美を求めるためには厳選した素材を使用することが重要であり、そのために私ども家具蔵では各地に赴いて実際の原木を確認しながらの仕入れを行っています。
そして、この色合いの変化はまさしく時間の経過によって生まれたものであり、「時間の色」ともいえるその姿は、自分自身や家族が過ごした時間をそのまま体現しているものです。
それはそのまま愛着に繋がり、それが使い捨てにはならないエコロジックな暮らしに繋がっていきます。
そもそも家具は頻繁に買い替えるものではなく、一定の長い期間を使用するものです。
使い続けることが価値を生むようなものを使用することは賢い買い物であるともいえるでしょう。
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