「桐材」とはどのような素材なのか
2023.7.12
「桐(キリ)」材はここ日本では箪笥などに昔から使われており、「桐箪笥(きりだんす)」は皆さんも目にしたり、その単語を耳にしたことがあるはずです。
他にも下駄や和楽器など様々な用途で使用され、古くから日本文化と密接に関係しているものでもあります。
あるいは贈答用の高級フルーツを包む箱の材料などで目にすることもあるでしょう。
私ども家具蔵の無垢材家具においても「モデルノ」「ダン」シリーズの引き出しの内材として使用されてもいます。
意外と普段の暮らしに密接に関係している桐について深堀りしていきます。
桐の歴史は古い
桐のルーツは中国から元株が回ってきたのではないかと考えられており、日本ではなんと弥生時代から使われてきたと言われています。
桐は日本の気候に適応しやすく、家具の歴史においては江戸時代後期から箪笥などの収納家具で用いられ、その他にも、寺院や神社、宮殿の儀式で使用されている箏や琴としても重宝されてきました。
桐は神聖な木とされており、日本では格式高い家紋として存在しています。
現代でも日本政府の紋章にも採用されるほど、日本を代表する木と言えます。
桐は世界で2番目に軽い材
世界には数十万もの種類の樹木があり、そこから木材となっていきます。
つまり木材も同じだけの種類があるわけですが、その中で桐材はなんと世界で「2番目」に軽い材として知られています。
ちなみに1番は「バルサ材」というものですが、家具に適している木材という意味では桐が世界一です。
バルサは比較的脆く、つまり耐久性に難があり、家具のような強度が求められる用途には適しません。
一方、桐は軽くても強度に優れ、湿気に強く腐りにくい性質を持っています。
家具材としての条件をしっかり満たしているのです。
桐の産地は寒冷地に多い
日本における桐材の主産地は岩手県の「南部桐」、福島県の「会津桐」、新潟県の「津南桐」、秋田県の「秋田桐」などが有名です。
いずれも寒冷地という土地柄、木の成長のスピードは遅く、その分目が詰まった美しい木目を持つものとなります。
世界に目を向けるとルーツである中国の他にも、アメリカや台湾、ブラジル、オーストラリア、フランスなど世界各国で植栽されています。
北米産の桐材は色・艶などの見た目・硬度・軽さにおいて高い評価を受けています。
桐と日本人の習慣の美しい関係性
かつて日本では、女子が生まれたら庭に桐を植え、その子が成長して他家に嫁ぐ際にその桐を使った箪笥を持たせる習慣がありました。
桐材自体が後で触れるように箪笥として使用するのに非常に都合の良いものであることもしかりですが、桐は植栽後10年も経てば樹高が10mほどにもなるとても成長が早い木です。
先人は人間の成長サイクルと桐の成長サイクルが見事に適合することを知っていて、それを大切に育てて使うといった美しい習慣がかつてあったことを示しています。
桐の性質が衣類を守る
桐材が箪笥に良く使われる理由はその強度に限りません。
多様な特性から衣類を守る箪笥として適している素材なのです。
一般的な木材は弱酸性ですが、桐材は弱アルカリ性です。
この性質が衣類を守ると言われています。
例えば、絹は動物性たんぱく質となるため、人と同じ弱酸性を有しています。
弱アルカリ性質の桐箪笥の中に弱酸性のものを入れることで、酸化を遅らせ、劣化の進行を抑えることができるのです。
あるいは防虫効果についても有効な材です。
桐にはタンニンが含まれており、このタンニンが防腐に重要な役割を担います。
カビなどが繁殖しにくくなる環境を作り、同時にパウロニンやグリメノール、セサミンという成分が菌の繁殖を抑制し、害虫を防いでくれるのです。
また、その性質から火災の際に表面こそ燃えますが、内部までの熱浸透が遅いため、中身が燃焼しにくい特徴も持っています。
決して「燃えない」というわけではありませんが、火災にも強いということも言えるでしょう。
箪笥に桐が使われているのは、きちんとした科学的根拠もあるのです。
日本で古来より親しまれている、国を代表する木である桐。
そこから採られる桐材は、衣類箪笥として有用なだけでなく、乾燥後の動きが少ないことなどの特徴から様々な用途で使用されています。
しかし、いくら優れた材料だとしても、最終的な加工に問題があってはその価値も半減します。
その素材の素晴らしさを最大限に活かすのも熟練した職人の技術があってこそ、です。
大事な洋服、あるいは大切なものを収納する家具はそれが収納できれば良いだけでなく、しっかりと中に入るものを守ってくれるものであってほしいものです。
桐材はその用途において完璧にニーズを満たし、また、熟練の職人技を楽しむことのできる優秀な木材と言えるでしょう。
桐を内部材に使用した家具蔵の無垢材チェストのご紹介はこちらから
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