「木の香り」の正体、フィトンチッドとは?
2023.8.14
目次
子供のころに遊んだ裏山。
キャンプやトレッキングで行った森林。
あるいは私ども家具蔵のような無垢材をふんだんに使用した家具販売店。
これらの場所に行くといわゆる「良い香り」「何か落ち着く香り」に包まれることに気づきます。
それはつまるところ木が生み出している「木の香り」です。
木から感じる香りといえば「檜風呂」がすぐに思い付きます。
好き嫌いこそありますが、多くの人がその香りで癒されるはずです。
この木の香り、住まいにおいては「木材の香り」ですが、これには「フィトンチッド」が含まれています。
フィトンチッドの発見と本来の働き
フィトンチッドは私たち人間にとっては非常に有益な成分です。
樹木にとっては外敵となる動物や細菌類などに対しては武器として働く成分ですが、幸いにも人間にとっては無害な天然物質であり、抗菌や消臭、リラックス効果といった様々なプラス効果をもたらす成分です。
この「フィトンチッド」は、植物が自らの身を刺激や外敵から守るために生み出す防御成分の総称であり、フィトン=「植物」とチッド=「撃退能力」を意味する2つのロシア語の言葉から構成された造語です。
元々、1930年ごろにロシアの学者が、植物を傷つけるとその周囲に存在する細菌が死滅する現象を発見したことに端を発します。
この学者はこの現象は植物が周囲に何らかの目に見えない物質(それは揮発性物質でないかとまで推測しました)を放出したために起きたのではないかと仮説を経て、やがてこの物質をフィトンチッドと命名しました。
そもそも木は他の生き物と違い、外敵(害虫や微生物など)に襲われてしまった場合も、その場から逃げることはできません。
そこで外敵を寄せ付けないように予防するため、また傷が付いてしまったときは病原菌が身体に回らないようにその感染を防ぐため、「フィトンチッド」という揮発性の物質を自ら放出することで、自身の身を守っているのです。
フィトンチッドの成分はすべて同じではない
フィトンチッドの成分はすべて同じではありません。
植物ごとに生み出す成分も異なります。
例えば香りが特徴的な樹種を見てもヒノキは「α-カジノール」、クスノキは「カンファー」ヒバは「ヒノキチオール」、
ハッカは「メントール」です。
また、柑橘類の果皮には「リモネン」が含まれます。
メントールやリモネンなどは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
私たち人間は、目に見えないこの物質を「香り」として感じており、これらのフィトンチッドには抗菌・防虫効果も併せ持ちます。
そして、このフィトンチッドの成分の差が、スギやヒノキといった樹種ごとの香りの特性ともなっているのです。
また、森林浴で感じるリラックス感も、マツやヒノキなどの針葉樹から発散されるフィトンチッドの影響であることが研究の結果から分かっています。
フィトンチッドの防虫や除菌・抗菌にも有効
フィトンチッド成分には、香り以外にも害虫であるダニやシロアリを防ぐ効果があります。
ダニは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などを含むアレルギー性疾患の原因にもなります。
ダニに木材の香り成分が与える影響を調べた実験では、ヒノキやヒバなどの木材チップの香りがある環境では、ダニの活動が減少し、約72時間後になると動いているダニがほとんど見られないことが確認されており、高い防虫効果があることがわかります。
また、「ヒノキチオール」には、カビのほか、病原菌を抑える力もあります。
院内感染の原因菌とされるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、食中毒の原因となる大腸菌O157等への抗菌作用があることが知られています。
フィトンチッドには消臭効果もある
フィトンチッドは、悪臭を放つ成分に付着し分解・無害化する効果があります。
森に行くと「空気がおいしく」感じるのはフィトンチッドの消臭効果もあるのです。
防腐効果も発揮するフィトンチッド
魚介類や肉類など生ものの食品はそのまま放置しておくと「酸化」により腐敗が進行します。
フィトンチッドには腐敗を遅らせる働き=抗酸化作用があるため、食品の鮮度が保たれる効果があります。
例えば、寿司店のショーケースの中には針葉樹であるヒノキ・サワラの葉と一緒に魚の切り身が保存されているシーンを見かけます。
この様に抗菌効果のある葉を置くことで、鮮度保持と見た目の美しさを両立しているのです。
また林業・製材業の副産物であるオガ屑は、畜産業の畜舎の敷料=(家畜の寝床として敷き詰めるもの)として糞尿の消臭に利用されています。
また、レッドシダー製のハンガーやブロックがよく売られているのは、靴箱やタンス、クローゼット内に木の持つ消臭効果が期待できるためです。
リラックス効果が期待できるフィトンチッド
さまざまな実験と研究により、フィトンチッドが医学的にも心身に深いリラクゼーション効果を与えることが明らかになっています。
住まいの中に存在する様々な香りを評価したテストの結果では、木材や畳などの生物材料の香りは「自然で心地よいもの」と評価されています。
また、農林水産省が行った実験では体内にフィトンチッドを取り入れることで、「血圧・心拍数の低下」・「免疫力の上昇」「ストレスホルモンの減少」・「抗がんタンパク質の増加」が認められました。
フィトンチッドはわたしたち人間の副交感神経を刺激して優位にさせることで解放感・ストレス解消・疲労回復・精神安定感をもたらしてくれるのです。
私たちが普段何気なく触れている「木の香り」にはこのような秘密があり、その自然の力に驚きを感じずにはいられません。
そして、無垢材家具からも同じような効果を得ることができます。
普段の暮らしの中で自然の恩恵をふんだんに感じることのできる無垢材家具、まずは各店舗で体感してみてください。
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