「重たく見えない」壁面収納はどのようなものか
2023.10.16
家族が増えた時、引っ越しなどで収納スペースが減ってしまった時。
そのような場合にできるだけ所有物がたくさん収納できるうえに見た目にもすっきりとする壁面収納は、常に人気の高い収納家具のひとつです。
なんといっても圧倒的な収納力がその最大の魅力と言えるでしょう。
本来デッドスペースとなる壁面が収納スペースとして使用できることで納まりきらないものが一気に片付きます。
特に家族が集まる場所ということで、様々なものが多数混在するリビングダイニングには大容量の壁面収納があると安心です。
一方で壁面収納を採用するといわゆる「重たく見えてしまう」のでは?という危惧もあります。
収納家具というものは当然のことながら「ものを収納する」のが目的であり、ある程度の奥行を要します。
壁一面の収納家具はその分だけ壁全体がせり出してくることと同じであり、それが圧迫感に繋がるためです。
腰高などの高さを持たない収納家具と比較して、高さのある収納家具はそれだけで圧迫感をつくる要素があります。
しかし、工夫次第ではその圧迫感を軽減することは可能でそれは壁面収納でも同様です。
壁を「見せる」ことで圧迫感の軽減につながる
壁面収納というものには様々な仕様・形状が想定できます。
できるだけ収納量を多くと考える場合、壁から壁まで、そして天井や梁下まで隙間の無い収納とすることで最大限の収納効率を獲得できると考えるのは自然なことです。
しかし、これが「圧迫感」を生む最大の要因となります。
その圧迫感を軽減するにはコの字型やロの字型、あるいは吊戸棚を採用し、後方にある壁を見せることがポイントになります。
壁面収納は少なからず奥行きがあるもので、後方の壁が見える仕様としたところで家具設置後の実際の空間の広さは変わりません。
ですが、後方の壁が視認できることは「壁面収納の奥にさらに空間が広がっている」という錯覚を与えてくれます。
例えばリビングの壁面収納でよくあるテレビボード一体型のものであれば、テレビの後方の背板を排除し、後方の壁が見えるようにする。
その際にはテレビの設置スペースをテレビのサイズギリギリにしてしまうよりも上下左右20~30cmほどの余白を持たせることで見た目にも余裕ができ、スッキリとした印象になります。
あるいは、あえて天井ギリギリまでの高さにせず収納家具の上部と余白を作る(ことで少し距離をとると後方の壁が見える)。
左右をあえて10~15cmずつ、あるいは左右どちらかを空けておくのも良いですし、書棚などの場合は思い切って背板全てを排除するのも良いでしょう。
上下左右、あるいは収納内部でその後方にある壁を見せることは空間の奥行き感を損なうことなく、圧迫感の軽減に大きく寄与します。
仕様やデザインでスッキリ見せる
デザインや仕様の選択でも圧迫感を軽減させることができます。
まずは、上下の奥行の違いで立体感を出すことです。
人は平面的なものが迫ってくると圧迫感を感じやすくなるといいます。
壁面収納に関して言えば、上から下まで同じ奥行きのものよりも上台・下台に分けて下台の奥行を深く確保させることで立体感の演出=圧迫感の軽減につながるというわけです。
例えばテレビボード一体型の壁面収納をリビングに設置する場合、テレビ台となる下段の収納部の奥行を深く、それ以上の上部の収納の奥行を浅く設計します。
食器棚などでも同様のことは言えるでしょう。
あるいは仕様に工夫を凝らすことも一手です。
例えば収納扉にはガラスを使用することで見た目の軽さと「抜け感」を出すことができ、全体にスッキリと見せることができるようになります。
ガラスの持つ反射性・透過性が空間内外の光を取り込むことで明るく開放的な印象を与えることもできます。
ここではガラスを採用する際には黒などの透過性の少ないものでなく、透明性の高いものを採用する方が「軽さを演出する」という手段においては有効です。
逆に透明性が高いということが内部のものが全て見えるので整理された収納が求められます。
それが難しい場合は曇り仕様のフィルムを貼ったものや黒をはじめとした透過性の低いものを選ぶことで問題を解決できます。
透明性は無くなりますが本体の素材感とガラスのそれのギャップが良いメリハリを演出し、やはり立体感の創出に一役買ってくれるはずです。
視線によく入る位置にガラスを採用しておくことで印象を大きく変えることができるでしょう。
色合いで圧迫感を抑える
壁面収納は壁一面に設置するため、選ぶ材質や色合いによって空間の印象に大きな影響を与えます。
重く見せないためのポイントは部屋の壁や床、扉と近い色を選ぶことが一番の近道です。
よく「ドアの色選びに迷ったら壁と同じ色合いのものを選ぶと良い」と言われますが、その理由は壁面とドアが一体化して見え、空間を広く見せる効果があることにあり、それと同じ効果を期待してのものです。
壁や床、扉に近い色を選ぶことでその場に一体感が生まれ、圧迫感が軽減されます。
また、暗い色は遠く、明るい色は近く感じるといった視覚効果を取り入れる方法も良いでしょう。
さらに、シート材やメラミン材は平面的に見えることが多く、いわゆる「のっぺりして」見えてしまうことからチープ感や圧迫感を感じやすくなります。
無垢材などの木目や凹凸を見た目と触感で感じることができれば、そこに奥行感・立体感も生まれるのでお勧めの素材と言えます。
このように、収納性は格段に向上しながらも空間を重く、狭く見せてしまいそうな壁面収納も様々な工夫でその圧迫感を軽減させることができ、そのメリットのみを享受できるようになります。
私ども家具蔵では一人ひとりの事情に寄り添った対話から家具を受注製作していますが、今回のテーマである壁面収納も大得意としています。
本物の木で、熟練の職人が一台ずつ手仕事でつくる世界に一台の壁面収納、もし興味があればお気軽にお問い合わせください。
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