チェリー材の色合いが変わる理由と魅力とは
2023.11.26
チェリー材の経年による色の変化
無垢材の魅力は多々あります。
(「無着色仕上げである」という条件付きですが)そのなかのひとつに「色合いの変化」があります。
無着色仕上げの無垢材は、時間の経過とともに表面の色合いが変化していきます。
使用しているうちに色が変化していくのは、いわゆる単純な色褪せ、退色、色抜けという「劣化」が想像されます。
しかし、無垢材の経年変化はむしろ「美化」という表現が正しいものです。
その色の変化は樹種によっても異なり、同じ樹種でも個体差があるなど一様ではありません。
世界中に様々な樹種が存在するなか、安定性や耐久性、加工性など様々な要素を鑑みて家具作りに適した樹種は限られてきます。
そのようななかで家具材として優秀、且つ経年による色合いの変化が劇的で美しい樹種のひとつがアメリカンブラックチェリー、通称「チェリー材」です。
まるで「家具を育てている」かのような楽しみがあると言われます。
チェリー材家具の色合いはほのかに桜色づいた淡いものから始まります。
その後、徐々に赤みのある色合いが増してきて、飴色と表現するにふさわしい深みのある紅褐色までダイナミックに変わっていきます。
その変化のスピードも劇的です。
ハードメープル材などが10年前後と長い時間をかけてゆっくりと(しかもほのかな)飴色に変わっていくのに対して、チェリー材は最初の一年でその色合いの変化を実感できるほどです。
短期間に劇的な経年変化で私たちを楽しませてくれる稀有な存在がチェリー材なのです。
木材の色が変わるメカニズム
一般的に木材は太陽光に接した時点で色の変化をスタートさせます。
また、木材の色の変化は、太陽光に接し始めた頃ほど大きく、時間の経過とともに変化の量は小さくなる傾向があります。
太陽光は、大まかに紫外線・可視光線・赤外線に分けられ、特に紫外線の影響は顕著です。
多くの樹種が主に紫外線の影響を大きく受け、色が濃くなる傾向があります。
木材を構成する「木材成分」のなかでも、リグニンとポリフェノール類を持つ抽出成分が紫外線をよく吸収する性質を持っています。
これらが分解し、変性していく過程で木材の色も変わっていくのです。
「黄変」とも呼ばれていて、リグニンの光酸化反応によって木材の表面の明るさが減少するとともに、赤みと黄色みが増加する現象です。
リグニンだけでなく抽出成分の光酸化による影響も増えるため、色の変化は樹種によって様々なパターンがあります。
表面仕上げ塗装の違いによる色の変化
木材そのものの経年変化に加えて、表面の仕上げ塗装によっても、その色合いは多少異なった変化を見せてくれます。
無垢材家具の表面仕上げ塗装で代表的なものが「オイル塗装」と「ウレタン塗装」です。
表面に植物性の油分を浸透させ保湿効果を持たせるのがオイル塗装。
同じく表面に塗膜を施し、家具を傷みから保護するのがウレタン塗装です。
オイル塗装の場合、オイル自体が空気や光に触れて酸化することで木肌の色合いをより濃く見せます。
この影響で木材の色の変化と相まってより深みのある色合いになりやすくなります。
オイル仕上げのアンティーク家具で、濃く深い色合いのものが多いのは、この作用によるものと考えられます。
また、ウレタン塗装を施した家具は光の中に含まれる紫外線に反応することで、黄みがかった色をまとい美しく変化していきます。
キャラクターマークの見えかたに色の変化は影響するか
色とは物体に当たって吸収されずに反射した光線を人間の目が受けて、その波長の違いなどの情報によって脳が識別しているものです。
目に入ってくる光の情報が変化することで同じものを見ていても色合いが変化しているように見えることがある、ということです。
木が伐採される前の立ち木の状態の時に風雨などの気候、あるいは動物などから受ける影響によって現れる材表面の紋様を「キャラクターマーク」と呼びます。
チェリー材は特にこのキャラクターマークが多く、しかも特徴的です。
樹液の溜まり痕であるガムポケット、ピンノットという葉節の痕跡の他に「さざ波紋」とも呼ばれるリップルマーク(などが有名です。
これらのキャラクターマークの近くでは、木の組織や繊維が変形したり入り組んだりしていることで光の反射も複雑になり、大きな色の濃淡があるように見えます。
しかしその色の濃淡の見え方には自然光や照明光でも違いがあり、また、見る人の姿勢や家具との距離によっても変わるのです。
チェリー材に限らずキャラクターマークはその木が生きて来た環境によっての個性であり、長い年月を生きて来た証です。
その個性を他の樹種よりも顕著に味わうことができるのもチェリー材の魅力のひとつといえます。
チェリー材はいつ頃が見頃か?
チェリー材はうっすらとした桜色から深みのある紅褐色に変化していきます。
いわゆる「見頃」はあるのでしょうか。
その答えは「最初からずっと」です。
製作されたばかりのチェリー材家具は全体的に明るい色調なので、木目もハッキリと認識できます。
明るい色合いが可愛さや爽やかさを醸し出す一方で力強さも感じさせてくれます。
時間が経過して、赤褐色になった頃のチェリー材では木目は周囲の色に溶け込んでいてあまり目立たなくなってきます。当初よりもより優しいイメージです。
また、完全な赤褐色になるまでの色合いも暖かみがあって素敵です。
チェリー材の魅力は最初期からずっと長く続くのです。
家具蔵各店では新しく製作されたチェリー材の家具と長い期間展示されているもの、それぞれを展示してチェリー材の経年変化、そして無着色仕上げの無垢材家具の良さを実感していただけるようにしています。
ぜひお立ち寄りいただき、その目で確かめてみてください。
家具蔵のチェリー材を使用した無垢材家具のある暮らしの事例はこちらから
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