椅子は軽いものであるほうが良いのか?
2023.12.12
椅子は毎日使うものであるがゆえに、何を基準に選ぶのかという点は非常に重要です。
座り心地や見た目の美しさはもちろん、強度や耐久性、価格など比較検討する点は多々あります。
今挙げたこれらの要素はどれも大切なものであることに間違いはありません。
もうひとつ、日々使用するものとして軽視できないものが「重量」、つまり重いか軽いか、という点です。
特にダイニングチェアは出し引きの動作も多いのであまりに重いものだとやはり使いづらく感じます。
椅子はインテリアであると同時に毎日使用する暮らしの道具です。
その良し悪しを語るには重量も加味した「使い易さ」も重要なポイントです。
軽い椅子と重い椅子
イタリア語で「超軽量」という意味を持つある有名なデザイナーズチェアは、子供が軽々と椅子を持ち上げる広告写真が印象的です。
「指一本でも持ち上げられる椅子」とも呼ばれ、いわゆる「軽量の椅子」の代名詞になっていました。
素材や技術の進歩が進むなか張り地がメッシュでつくられているものや、フレームがカーボンやマグネシウムなどの新素材を用いた軽量椅子が続々出現しています。
これらの椅子が実際に「軽い」と感じるのか「重い」と感じるのかは、使うシチュエーションや使う人の体格によっても異なるでしょう。
同じ椅子を持ち上げてみても、人によっては軽いと言う人もいれば、重いと言う人もいます。
また、公表値が同じ重さの椅子があったとしても、デザインの違いによって、重く感じたり、軽く感じたりすることもあります。
実際の重量感、自身が感じる重さ(軽さ)はレビューなどの情報のみでなく、可能な限り実物に触れて体感してみることをお勧めします。
それも、いつもの暮らしの様子を想定しながらです。
着座をするために、椅子を引く動作。
着座してから、テーブルに体と椅子を寄せる動作。
片手にモップを持ちながら、掃除をしようと椅子を移動させる動作。
これらの動作を、普段の自宅での動きを思い出して、体験してみてください。
そこで、重いと感じるか、軽いと感じるかが大事なポイントとなるのです。
軽い椅子と重い椅子、それぞれの特徴は
重量の軽い椅子を使用することは、毎日の生活において椅子に座る際に引き出したり、座ってからテーブルに寄せたりする動作が楽になる点で非常に有益と言えます。
食卓の下は、食べこぼしなどもあって掃除がしやすくなくてはいけませんが掃除機やモップを片手に、椅子を出し入れできると掃除も容易です。
また、軽量の椅子は出し入れの際に音鳴りも少なく床は傷つきにくくなります。
しかし、軽くすることに特化してバランスや強度を損なわれている場合もあり、その点は注意が必要です。
立ち上がる際に足が座面にぶつかり、椅子が後ろに倒れたり、着座姿勢のバランスが崩れた際に転倒したりする恐れもあり、単純に「軽ければ良い」というわけではありません。
一方で重量がある椅子はその分強度に優れていることも多く、また、カウンターチェアなど重心の高い椅子は不安定になりがちなので適度に重量があるほうが安定して座ることができます。
その他にも複数で座るソファ(長椅子)やベンチシートなども、ある程度の重さがあった方が設置場所からズレにくくなるので重いことがメリットになります。
椅子には、用途によって適度な重量も必要なのです。
無垢材の椅子を「軽く丈夫」につくるということ
新素材を用いて椅子を限りなく軽量にする、ということは技術の進歩や発展という意味で素晴らしいことです。
一方で木材のように古くから使われている普遍的な素材が廃れることもありません。
特に住宅のような、その場に癒しややすらぎが求められるものにとっては木材のような自然素材は欠かせないものといって良いでしょう。
木材の中でも無垢材はいわば木そのものともいえるものであり、その非常に耐久性や堅牢性は高いレベルにあります。
一方で中身がしっかり詰まっているという状態であるため、それなりに重量は出ます。
しかし、無垢材、それも広葉樹を使用した家具には様々な利点があり、日々使用する道具でもある椅子に使用しないのは勿体ない話です。
広葉樹は「平たくて幅の広い葉を持つ木」のことであり、そこから採れる広葉樹材は「強度があり傷がつきにくく、揺れに強い」という特徴を持ちます。
これは人の身体を支え、暮らしに必要な作業を支える椅子に重要な要素を完璧に満たすものです。
世界中の名作椅子の素材も広葉樹であることがほとんどです。
広葉樹である「ウォールナット」「チーク」「マホガニー」が「世界三大銘木」と呼ばれているのはその美しい色味や木目の表情、加工性や剛性も勿論ですが、そうした理由もあるのです。
そのような背景もある中で無垢材家具を扱う私ども家具蔵でも、伝統建築技法を応用した木組みで椅子を製作しています。
楕円ほぞや割り楔(くさび)、二枚ホゾ、持ち出し、留め加工など、様々な木工技法を駆使することで、「貫(ぬき)」や「トンボ」といった余分な補強材を省くことに成功し、それはつまり軽量化に繋がっています。
また、材のどの部分をどこに使用するかというパーツ割りを「木取り」と呼びますが、適材適所の木取りを行うことで木目もデザインとして活かし、強く美しい椅子が完成するのです。
家具蔵の無垢材チェアを実際に見てみるといわゆる「木の椅子」とは思えない軽さに驚くはずです。
デザイン性も兼ね備えた優美な曲線がありながら、長く使用することのできる耐久性と、ずっと愛用したいと思わせる使い心地を持った無垢材チェア、家具蔵各店でお試しになってみてはいかがでしょうか。
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