ケヤキはなぜ古くから日本で親しまれているのか
2024.1.14
目次
昔から日本の暮らしや文化の傍にあったケヤキ
日本を代表する銘木のひとつとして必ず名前が出てくるものに「ケヤキ(欅)」があります。
日本のいたるところにケヤキ並木があり、どのような木かはよく知らなくてもその名前はよく耳にしているのではないでしょうか。
箒を逆さまにした様な枝ぶりが特徴のケヤキはこのように街路樹としても、また、寺社仏閣や地域のシンボルとしても古くから現代に至るまで日本で親しまれてきました。
超が付くほどの高樹齢の木を国が特別天然記念物として保護することがあり、トチやクス、あるいは縄文杉などと並んでケヤキもそのようなものがあります。
山形県の東根小学校の校庭にある「東根の大ケヤキ」は推定樹齢が1500年以上とも言われ、国の特別天然記念物にも選ばれている有名なケヤキです。
今から1500年以上昔と言えば、日本はまだ古墳時代の頃です。
気が遠くなるような時間ですが、逆に言えばそれだけ昔から日本の暮らしや文化の傍にあった木といえます。
ケヤキが日本で愛される理由
なぜケヤキがはるか昔から日本の人々の心を捉え、そして暮らしの傍にあった木なのか。
それは「姿かたちの美しさ」と「木材とした際の優秀性」、そして「ケヤキそのものの特性がそうさせた」ことにあります。
立ち姿の美しさと力強さを感じさせるケヤキ
ケヤキが日本人の心象風景に強く残り、長い間親しまれてきた理由に「その立ち姿の美しさ」が挙げられます。
大きく成長したケヤキは枝葉を大きく広げるような樹冠となり、その姿形は勇壮な美しさを見せてくれます。
ケヤキという呼び方は平安時代以降になってかららしく、語源としては「けやけきき」と言われています。
「美しい・珍しい・一際優れている・目立つ・類稀な」という意味の「けやけし」という形容詞の活用であり、立ち木として天に向かって堂々とそびえ立つ姿は非常に美しいものとして認知されていたことがわかります。
それまでケヤキは「槻(つき)」と呼ばれていました。
理由には諸説ありますが、最も一般的な考え方では「強い」「強き」が由来となっているという説があります。
中大兄皇子と中臣鎌子がケヤキの木の下で盟約を誓って大化の改新を成就させたこと、その際に言霊と一緒に出た唾がケヤキに憑依したことが、大化の改新の成功を導いたとして敬意を払い、ケヤキをつばのき、唾木(つき)と呼ぶようになったともいわれています。
実に歴史ロマンを感じさせる話ですが、当て字であっても槻の方が美しく響くので、槻が一般的になったのでしょう。
ケヤキは木材としての高い優秀性を誇る
一方、ケヤキは木材としても非常に優秀でありケヤキが日本の暮らしや文化に大きく貢献している例は枚挙に暇がありません。
そもそもケヤキは広葉樹材であり、その特徴は「硬く、揺れに強いこと」です。
それと相まってその美しい木目は装飾性も高く、様々な用途で使われてきました。
圧縮強度が高いことから住まいの大黒柱に使用されているのはよく知られています。
その構造材としての優秀性は寺社仏閣や城郭などで用いられ、そして今も現存しているものも多いことから伺えます。
有名な所では清水寺を支えているのはケヤキでつくられた18本の柱です。
本堂の南側に設けられた清水寺の舞台は高さ13mの崖にせり出すように建てられていますが、この舞台を支えるための強固な材として樹齢400年のケヤキが選ばれています。
あるいはその際立って鮮やかで明瞭な木目を活かして床材に使用されることもあり、また、大太鼓などの楽器材としても長く使用されてきました。
余談ですが、大太鼓に使用できるようなケヤキが年々減少しており、アフリカ産の「ブビンガ」がそれによく似たものとして使用されていることも多くなっています、
ダイナミックで力強い木目はまさにその名の由来どおりのもので、それに「牡丹杢」「縮み杢」「珠杢」と呼ばれる装飾性の高い模様を持つものはさらに高い価値と人気を誇ります。
家具材としても一枚板テーブルなどで高い支持を得ているケヤキですが。その材質は非常に重厚で強度があり、耐久性と耐水性にも優れている反面、乾燥がとても難しいものとなります。
分厚い板材の状態で長い時間をかけてゆっくりと水分を抜く必要があるのです。
また、その木目や独特の「木の動き」を読み切ることができる熟練の職人による技術があってはじめて長く使用できる美しい家具となりえます。
ケヤキが寺社仏閣に多くある理由は?
ケヤキが日本の暮らしの中で長く愛されてきた理由は、その性質にあるとも言って良いでしょう。
ケヤキは元々高樹齢となる木ですが、寺社仏閣で「ご神木」と言われるようなものであることも多く、それはケヤキが水源近くに生える木であるという性質も関係しています。
水源の近くに生えるということはその場所で井戸を掘ることができるということであり、それはその集落のライフラインとなります。
また、そのような場所は地域の中心となりますが、現代よりも仏教や神道が大きな影響を持っていた古代から中世に地域のランドマーク的な存在となるのはお寺や神社であり、井戸の近くにそれらが建てられることも多かったのです。
そのことが、寺社仏閣に歴史の長いケヤキが多い理由であり、また、日本人の心を魅了することにも繋がっています。
ケヤキは、立ち木の状態でも、また木材としても私たちの身近な存在として、癒しや心地よさを与えてくれます。
それは、日本人が持つ感性がケヤキの魅力と共鳴し、その良さを引き出しつつも影響されているからなのでしょう。
家具蔵の各店舗にも熟練の職人によって魅力を引き出された、ケヤキ材の家具や天板を展示しています。
ぜひ、たくましく美しいケヤキ材の家具に触れてみてはいかがでしょうか。
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