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人間工学とは? -その誕生について-

2017.7.19

「人間工学」という言葉、誰しもが一度は聞いたことがあると思います。

その起源を辿ると、その発祥にはとても切実な理由があったことはあまり知られていない事実。

今回はその始まりについてお話ししたいと思います。

人間工学の始まり

その語源はギリシャ語で、ergon(仕事や労働)とnomos(自然の法則)に由来していてその二つを合わせてergonomics(エルゴノミクス)となっています。

「労働」と「健康」の関係性、つまり「働く」ことによってどのような「健康障害」が引き起こされるかということについては、古代エジプト、ギリシャ・ローマ時代においても多くの記載があるそうです。

いわゆる労働衛生的視点から労働条件と病態との関係性を初めて体系化したのが、イタリア人医師のベルナルディーノ・ラマツィーニによる古典「働く人の病」です。

この著書の中では例えとして金属鉱山労働者の病気として、粉塵による喘息・結核などの疾患だけでなく、不自然な作業体勢が身体に及ぼす影響についても言及しています。

18世紀から始まる産業革命による工業化に伴い、労働と健康の関係性の解明はその時代の必然であったと思われます。

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また、別の流れとしてアメリカでは産業革命以来、機械の進歩は目覚ましく進み、それに伴って生活はどんどん豊かになり、ずっとその進歩は向上していくものだと思われていました。

しかし機械の高速化・高機能化が進むにつれてそれを扱う人間の方が進化に追いついていけないという問題が生じ始めたのです(なにか現代にも通じる話ですね)。

第二次世界大戦の頃、米海軍は戦争が長引くにつれて戦死や戦傷によるパイロット不足に頭を痛めていました。

そこには技術の向上により飛行機はどんどん高速化する一方で、未熟練なパイロットによる事故が目立って増加しているという事情があったのです。

その原因を調べるため、人間の視覚・聴覚などの知覚や、それに基づいた人間の判断や動作の解析を専門とする実験心理学者に分析を依頼したところ、それまで全く気づかなかった原因が浮かび上がってきました。

その一つが操縦席に使われている高度計でした。

それまで使われていたものは「三針式」というもので、高度を読み取るためには三本の針の位置を一度に読み取らなければなりませんでした。

現代のような「単針式」に改めたところ、このメーターの読み違いによる事故はほとんど見られなくなったと言います。

もちろん「慣れ」の部分での差、パイロットと大学生での差はありますが、両方を見比べるとそれ以上にメーターの方式による差が明確だと読み取ることができます。

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ユニバーサルデザインも人間工学

今でこそユニバーサルデザインという考え方は広く浸透してきましたが、それはそのものを使うのが困難な人、不慣れな人でも分かりやすくすることで、それ以外の人にも使い易いものになるということが証明されている例だと思います。

ましてやこの場合は人の命に関わる重要な場面に使われる物です。必然が生んだ進歩、と言えるでしょう。

この戦中の出来事は

「機械は機械として、操縦する人間は人間として、別々で考えられてきたが機械はそれを操縦する人間に大きな影響を与え、また人間は機械の働きを大きく左右するという相互関係を考えていく必要がある」

という教訓を与えてくれています。

言い換えれば

「人間の肉体的な条件をよく知ってそれに合うようにモノを設計しないと、全体が一つの繋がりとして能率よく活動しない」

ということを示しています。

 

このように「道具を使い易く作ろう」という考え方自体は、すでに原始時代からありました。

その結果、文明が進歩していったのですが、それを科学的に捉えて体系づけ、今の人間工学の基が作られたのは、第二次世界大戦以降の話なのです。

 

ここから人間工学は軍事関係に限らず自動車産業、工作機械、産業機械、また交通安全や作業安全などその適応範囲を広げ普及してきました。

更に最近では身近な暮らしの中にまでこれを応用するようになってきています。

人間とモノとの相互関係というところを応用して、空間や暮らしとの関係に置き換えても、同じように生活環境をより快適に能率的にしようとその分野は広がりを見せています。

その中心となるのは「人」であり、人を中心として人間をとらえるのであれば、人間工学は

「人間の作業能力とその限界を知って、仕事を人間の解剖的・生理的・心理的な特性に適合させていく科学」

「心理学や生理学の立場から求められた人間の作業能力やその限界、また人間の持っている色々な性質や特性を知ってそれに合うように機械や作業を設計していく科学」

と理解することもできます。

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家具づくりと人間工学

翻って現代。

モノが溢れる世相で、本当に自分に合うものを探すのは難しい時代になってきています。

家具についても同様で、ネットで簡易的に買えるもの、安価で大量につくられるものから手仕事でつくられる家具や受注生産の家具まで、素材やテイスト、作りに関しても実に様々なものがあります。

我々家具蔵の数あるポリシーのひとつとして「暮らしに寄り添い、細かい部分まで使いやすさを追求したものをご提供する」というものがあります。

家具蔵の家具づくりに触れた方、ご興味を持たれた方には、一人一人のお客様に合った御提案が出来るようにと、スタッフは常に色々な角度から家具や人と向き合っています。

全ては「快適で豊かな暮らしをお届けする」ために。

 

今回は「人間工学の起源」についてのご案内でした。

またいずれかの機会にもっと掘り下げたお話をお届けしたいと思いますのでお楽しみに。

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