デンマークから学ぶ「家具で感じる幸福感」
2018.1.31
我々家具蔵はいうまでもなく家具を販売する集団であり、その家具を使う方ひとりとりがそれを使うことによって「幸せ」になることを何よりも大事に考えています。
そんななかで、お客様自身にその家具が住まいに入った生活を想像してもらうことはとても重要です。
一人でも多くのお客様に
『早くこの家具を使った生活をしてみたい』
『この家具をずっと使っていたい』
と思ってもらえることが我々の幸せでもあります。
幸せな国・デンマーク
家具の中でも「椅子」は少し特別な意味を持つ家具といえます。
地位を表す場合にもその象徴として椅子は用いられ、『玉座』という表現もあるくらいです。
そしてこの椅子に対する考え方は、日本と欧米では大きく異なり、また、ヨーロッパでもその地域によってその意味合いが異なります。
日本人(とその他地域の現代人)は椅子=生活の道具の一つと考えている人が多いですが、特にデンマークでは
「椅子=時間とお金をかけるべき“大切な場所”」
と考えられています。
それは、「自分の過ごす空間の質が人生の質を決める」という価値観が根付いているからです。
例えば、部屋が散らかっている場合には気分も態度も散漫になり集中力を欠いてしまうように、その空間がどのような状態かは暮らしのクオリティや効率性に直結します。
デンマークの人々は様々なところで「世界一幸せな国」と言われるほど、国民が自分の国を愛し、心豊かに幸せに暮らしていると言われます。
その理由として、社会制度がとても平等につくられていて、税金こそ高くてもその分教育費・医療費がかからない、など社会福祉制度が充実している部分も挙げられますが、それと併せて、『Hygge(ヒュッゲ)』=「居心地の良い時間」に価値観を感じるというデンマークならではの考え方が、生活だけではなく、様々な場面において根付いているとうことが大きく関わっているのです。
さらに、日本でも最近取りざたされることが多いワーク・ライフバランスと言う考え方。
そこにもデンマークならではの気質が表れています。
先ほどの「ヒュッゲ」の概念に通ずるものがありますが、生きることのモチベーションがお金や出世ではなく、「家族と過ごす時間」や「新しい学び」に基づいており、そのために自主性を持って仕事をする為、仕事に支配されると言う感覚ではないのです。
自らやることを決め、実践しその成果を実感することに意義を感じる。
これが、仕事や暮らしのモチベーションにつながっています。
この自分で決めて行動し満足を得ると言うプロセスがデンマークの人々の椅子選びにも反映されています。
家族と良い時間を過ごす為には、質の高い空間が重要で、そのためには、単なる価格の高いものであれば良いということではなく、「価格以上の価値があると感じるもの」を、時間をかけても納得して選ぶというこだわりにはたいへん共感するところです。
誰の幸せの為か
デンマークの人がインテリアにこだわる理由には、「居場所を快適にする」という思考が根底にありますが、それは寒いから家で過ごす時間が長いからというだけではなく、親しい人を自宅に招く習慣があることが大きく関わっています。
そうなると長く一緒にいる家族と同様、ゲストにも居心地の良い空間だと感じてもらえるように、家具やインテリアには時間と費用をかける価値があると考えるようになります。
逆に、洋服などは時間とお金をかけて手にしても、そこで得られる満足感というのは個人的なものでしかなく、それならば一緒に過ごす家族や友人が快適に過ごせることに満足感を求める。
言い換えれば、自分ひとりで感じられる幸福感よりも、周囲と共有できることで生まれる満足感でなければ価値が無いと考えていると言うこともできます。
そういった、「周りの人に気を使う」という部分は、日本人も元来持っている価値観だと思いますが、現代のコミュニケーションの在り方の変化を見ると少しずつ失いかけている感覚なのかもしれません。
モノを大切にすること
デンマークの家では、家族の人数以上に多くの椅子を所有し、実際に使っている家庭が多くあります。
その中には時間をかけて自分で選んだもの、親世代から受け継いでいるものも多くあります。
そこには、両親も同じように椅子選びに時間をかけて選んだものだからこそ、長く使い続けたいと言う両親への子供の想いや、その椅子を作った職人に対する想いが介在します。
デンマークの職人たちは手作業で作る椅子には「長く続くそのつくりを変えたくない」という意識や「見えない部分だからこそこだわる」という考え方を持っていることが多くあります。
そういった作り手の想いが、使う人にも伝わっているからこそ、古い建物や家具を大切にし、そこに刻まれている傷も全てを直してしまうのではなく味と捉え、「どう残していくか」という発想が生まれます。
家具を単なる「道具」ではなく「資産」として捉えるからこそ、長く使っていけるものを選ぶという価値観が、彼の地にはあります。
椅子をひとつ選ぶことに時間をかける。
それはすべて『相手を想う気持ち』から成り立っているとも言えるでしょう。
その椅子に集まる人に幸せを与え、それによってその椅子を選んだ人自身も、更なる幸せを感じることができる。
その気持ちは我々家具蔵も同じであり、だからこそ、しっかりと椅子を選んでもらいたいという気持ちと、その椅子をそういう想いを込めて職人がひとつひとつ作り出しているということをお話しています。
家具がつくる『幸福感』を1人でも多くの人に感じていただけるように。
参考文献
『なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?』 著者:小澤良介氏 出版社:きずな出版
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