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革のなめしについて

2020.1.7

 

私たちが普段目にする革製品というものは、すでに裁断され、縫製された商品がほとんどです。

しかし革製品も元々の「皮」が「革」として使用できるようになるまでに、多くの工程を経て初めて日常使いができるようになります。

その工程とは、随分昔から人が革を活用するようになって以来、改良が重ねられ今に至ります。

今回はその工程の中でも「なめし」の工程についてお話していきましょう。

 

「なめし」の歴史


皮革はおよそ50万年も前に防寒や保護のために利用していることがわかっており、たいへん長い歴史があります。

しかし、古代の人々が革を使用する上ででくわした大きな問題がありました。

それは皮が短時間で硬くなり、腐食してしまうという事です。

そこで様々な試行錯誤が繰り返され、皮を徐々に革として使える様にする

方法と工程が考え出され「なめし」と呼ばれるようになりました。

「なめす」とは、皮のタンパク質を化学的に固定・安定化させ、腐敗しにくくさせ、その結果 、柔軟性、通気性、耐水性、耐熱性などにおいて、優れた性質を革に与える製革工程の一つといえます。

最初は乾かすだけでしたが、柔らかくするために、もむ、叩くといった作業を行うようになり

さらに柔らかく仕上げるために開発されたのが魚や動物の油脂を塗る「油なめし」が生まれました。

これは最古のなめし技術と考えられています。

また、囲炉裏の近くにかけておくと腐敗しないことから始まった「くん煙なめし」。

染色のために草木の汁に漬けた皮が腐らないことから発見された「植物タンニンなめし」など、様々ななめし技術が開発されてきました。

 

 

「なめし」の種類


なめす為のなめし剤には革の用途に合わせて様々な種類が使われています。

代表的なものに植物タンニンなめし革、クロムなめし革、油なめしなどがありますが、それぞれの特徴をみていきましょう。

●植物タンニンなめし

切り口(コバ)が茶褐色、型崩れしにくく丈夫で染色がしやすく、吸湿性に富み使い込むほど艶や馴染みがでてきます。

反面、タンニンでなめす場合タンニンを革の中心部分に浸透させるためにタンニン濃度を徐々に上げる必要があります。

工程数が多くなり30以上の工程を踏まえる必要があり高コストになります。

よく皮革製品で「飴色になる」と表現されるが、それはこのタンニンなめしによるものです。

手縫いを用いるような鞄等にはタンニンなめしの材料が用いられる。

●クロムなめし

切り口が青白色、伸縮性が良く柔軟でソフト感があります。

吸水性が低く水をはじきやすく耐久力があり比較的熱に強いのが特徴です。

衣料用にはクロムなめしが用いられる事がほとんどです。

タンニンなめしに比べて工程の省力化からコストを抑えられます。

反面、なめし工程上で使うクロムが焼却により化学反応(酸化)を起こし人体に有害な6価クロムに変化するので処分の際は注意が必要です。

●油なめし

油鞣し革の特徴は、非常に柔軟で、吸水性が良く、適度の親油性を持つため洗濯が可能です。

アルデヒドとの複合したものでなめしが行われることが多く、代表的なものにセーム革(※)があります。

また全く異なる古典的な油なめし法として、植物油(主に菜種油)を用いる姫路白なめしなどもあります。

※=セーム革・・・カモシカの羽毛を油でなめしたもの。シカ、ヤギ、ヒツジなどの羽毛を植物性油でスエード状になめした革も含まれます。

これらの方法の中でも手間がかかるのは植物タンニンなめしです。

クロムなめしは植物タンニンなめしに比べると手間がかからないのですが前述した様に廃棄の際に有害物質が出るために最近は植物タンニンなめしの良さが改めて見直されています。

これらのなめし作業はきつい臭いの中で体力を使う作業です。

皮革製品というと単純になめした後の革の裁断・縫製の過程は想像がつきます。

しかしなめし作業の方が最も大変な作業であり、それが生き物を材料へと生まれ変わらせる過程であります。

このなめす技術を持つ職人のことを「タンナー」と呼び、このタンナーは日本にも数多く存在します。

日本のタンナーが作る皮革製品は、なめしに使用される水の質が海外のものとは異なることや

日本のタンナー独自のなめし剤の調合が独特な風合いを出すことなどを理由に注目を集めています。

また、タンナーの手でなめした革にはさまざまな加工・色付けを施すことができます。

 

今回はなめしについてお伝えしてきました。

革製品を普段みられるものはなめされた後のものです。

なめしの工程を知ることによって革製品の見方が変わると共に、手元で日々使用している革製品への愛着がましてくるようになるかもしれません。

モノに対して愛情を持って使用していくことは、同じ自然素材の木のモノと通じるところはあるかもしれません。

皆さんも身の回りのモノの育った環境や製作された工程に想いを馳せてみるのもいいかもしれません。

 

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